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Photo by
kichinosuke1972
幸せなおじぞう(第1話)
むかしあるところに、幸福なお地蔵さんがいました。
金や宝石の飾りはついていませんでしたが
村人たちによく洗ってもらっていたのでいつもきれいでした。
お地蔵さんのそばにはお菓子や果物やお酒などが
いつもお供えされていました。
ある晩、遠い東の果てのほうから、
みすぼらしい身なりをした、鋭い目つきの旅人が村にやってきました。
男はお地蔵さんのお供え物に目をつけると、
くんくん匂いをかいで、がつがつ食べてしまいました。
桃の種をぺっぺと吐いて、お酒をごくごく飲み干して
空になった瓶をぽーんと草むらに投げ捨てました。
そして男はうらめしそうに
山のふもとの家の明かりをじっとにらんでおりました。
お地蔵さんは男の心の中をのぞいて思いました。
「かわいそうに。この男はこの世でもたいそう苦しみ、
あの世でもたいそうたいそう苦しむことだよ。」
男がうつらうつらしはじめると、
お地蔵さんは男の夢の中に入っていきました。
(幸福なお地蔵 第一話 おわり)
次回予告
男がびっくりして眺める前で、お地蔵さんは大きく大きく大きくなって…