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幸せなおじぞう(第1話)

むかしあるところに、幸福なお地蔵さんがいました。 金や宝石の飾りはついていませんでしたが 村人たちによく洗ってもらっていたのでいつもきれいでした。 お地蔵さんのそばにはお菓子や果物やお酒などが いつもお供えされていました。 ある晩、遠い東の果てのほうから、 みすぼらしい身なりをした、鋭い目つきの旅人が村にやってきました。 男はお地蔵さんのお供え物に目をつけると、 くんくん匂いをかいで、がつがつ食べてしまいました。 桃の種をぺっぺと吐いて、お酒をごくごく飲み干

    • 幸せなおじぞう(最終話)

      お地蔵さんは私の夢の中に現れて言いました。 「あなたのお父さんの重荷は消えました。 地蔵としての私の勤めも終わりです。 そういえば、長い間忘れていたのですが、 かつて私は遠い北の国の王子でした。 これから、友だちのツバメが待っているところに帰ります。 ツバメ。かわいいですよね。 あなたにもツバメはやってくるでしょう。 もし、寒空にツバメを見かけたら どうか優しく見守ってあげてくださいね。」 目が覚めたあとも誰かがそばにいるような気がして 私はしばらくあた

      • 幸せなおじぞう(第6話)

        結局、お地蔵さんが見つかったのは、父が亡くなった後でした。 父と一緒に桃の畑を眺めた丘の上に、父の墓を作るためにひと掘りしたら あっさり出てきたんです。亡くなった父によく似た顔をしていました。 私を救い出す前の晩、父はいわれのない憤りと妬みから 私の生家を焼くつもりだったのだそうです。 この世界で父はそれを免れましたが もう一つの世界では、父は自分の犯した罪のために 尽きることのない業火で今も焼かれているのだそうです。 どうか自分を許してほしい。父はそう言い残

        • 幸せなおじぞう(第5話)

          父はお地蔵さんを探してあちこち掘りました。 しかし1年たっても2年たってお地蔵さんは出てきません。 その代わり、堀った後から桃の木が生えてきて いつのまにかたくさんの実をつけるようになりました。 掘れども掘れどもお地蔵さんは見つからず、 桃の畑のほうはどんどんと広がっていきました。 あたり一帯が津波のように流されていましたから 父一人でやっていたのではなかなかはかどりません。 そこで父は近くの農家を回り、借金を肩代わりするからといって 協力を呼びかけました。

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        幸せなおじぞう(第1話)

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        • 幸せなおじぞう
          7本

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          幸せなおじぞう(第4話)

          「私の生みの親は、まだ私が物心つかないうち、崖崩れで亡くなりました。 今の育ての父は、そんな身寄りのない私を引き取って育ててくれました。 父は村の人たちと一緒に村の荒れ地を広く耕しで村を豊かにして、 村長として敬われていたんじゃないかと思います。 ええ、確かに(父は)ちょっと変わったところがあったかもしれません。 お地蔵さんの話とか。 自分の頭の中にお地蔵さんが入ってきたっていう、あの話です。 お地蔵さんが走馬灯を見せてくれて、 その中に自分の過去と未来が映っ

          幸せなおじぞう(第4話)

          幸せなおじぞう(第3話)

          男が呆然としていると、どこからか小さな泣き声が聞こえてきました。 かすかに聞こえる音を頼りに、がれきを掘り起こしてゆくと、 小さなひとりの赤ちゃんが泣いていました。 赤ちゃんは倒れかけたたんすの隙間に怪我一つなく生きていました。 男がそうっと赤ちゃんを抱き上げ、安全そうな場所へもどってくると、 どうっという音をたてて崖が崩れ、家はすっかり埋まってしまいました。 やがて集まってきた村人たちと一緒に、 男は土を掘り、がれきを除いていったのですが 赤ちゃんのほかに助

          幸せなおじぞう(第3話)

          幸せなおじぞう(第2話)

          男が夢の中でごみだめのような部屋の壁を蹴飛ばしていると お地蔵さんがすうっと目の前に現れました。 男がびっくりして眺める前で お地蔵さんは大きく大きく大きくなって 男を腕の中に抱き上げました。 男は逃げ出そうとしましたが、赤ん坊のように手も足も出ません。 「こんなところにいたら、危ないところに落ちてしまう。 もっと安全なところに連れて行ってあげましょう。」 お地蔵さんはいくつかの部屋を通り抜け、 男をふかふかのお布団のうえにそっと置きました。 どどどという

          幸せなおじぞう(第2話)

          うさドンのかぎ(第1話)

          「わたし、こころのかぎをなくしちゃったみたいなの」 「じゃあ、ぼくが見つけてきてあげるよ」 くまドンは、うさドンのかぎを探しに出かけていきました。 森にしかドンがいたので聞いてみました。 「うさドンのかぎを知りませんか?」 しかドンはつのをふりふり言いました。 「しらないね」 はらっぱにかわうそドンがいたので聞いてみました。 かわうそドンはしっぽをふりふり言いました。 「しらないな」 滝にうおドンがいたのできいてみました。 うおドンはヒレをふりふり言いま

          うさドンのかぎ(第1話)

          ぼくのはぐるま

          時計を分解して、はぐるまを取り出す。 はぐるまを、ざるに入れて洗う。 鍋に入れて、5分ほど煮る。 箸で取り出して、机の上に並べ、しばらくじっと見つめる。 するとはぐるまは、歌うようにしゃべりはじめる。 くるくるくるくるくるくるく くるくるくるくるくるくるく ずっとまわっっておりました。 くるくるくるくるくるくるく くるくるくるくるくるくるく ぼくのじいさん、教会の時計 朝がくるたび鐘ならす ボンボンボンボンボンボンぼ ボンボンボンボンボンボンぼ は

          ぼくのはぐるま