#4.気になるあの子
なんでもない秋の日、風呂場の隅に丸っこい影を見つけた。4本の脚を大きく広げ、黒い目を忙しなく動かしながら壁のタイルにぺたりと張り付いている黄緑色。
「え、カエルじゃん」
私が近づくと、素早くタイルを3歩ほど登って足を止め、短く瞬きをした。逃げ回ると思ったのに、案外落ち着いている。
目立つ色の身体は乾いた土で汚れていた。風呂場の窓も扉も締めていたはずなのに、君は一体どこから来たの。独りで紛れ込んでしまって、帰る算段はあるのだろうかと暫く見守っていたが、カエルはちっとも動かない