「自分の頭で考える」とはどういうことか、自分の頭で考えてみた
先日、「思考の整理学」を読み直しました。
特に印象的だったのは冒頭に出てくる有名なフレーズ「グライダー人間」と「飛行機人間」です。
グライダーとは、航空機ですが、自分のエンジンの動力で滑空するのではなく、上昇気流を使って飛びます。飛行機は自分でエンジンを持って、その力で遠くまで飛んでいくため、
グライダー人間 = 人の助けをかりながら生きていく人
飛行機人間 = 自らの力で生きていく人
という意味で外山先生は使っておられたのだと思います。飛行機人間になるのはやはり自らの頭で考えるということが重要なのですが、今回の記事では「自らの頭で考える」ということについて考えていきたいと思います。
私は、前提として、現在の資本主義社会において、お金を稼ぐことや、企業で働いて成果を上げるためには、「自らの頭で考える力」はそこまで必要ないのではないか、と考えています。
例えば上司の言っていることに盲目的に従って必死に働くことでも一定の成果を上げることはできます。なまじ自分の頭で考えようとして、「なんでですか」なんて上司にいちいち聞いていると、行動が遅くなる、上司から好かれない、などのデメリットもあります。
ひょっとすると、ちょっと自分の頭で考える力がある人は、いろいろなことに疑問を持って、行動が遅くなったり、上司にたてついたりして、例えば会社員としては、あまり良い結果をうまないかもしれません。
ですので、本当に自分の頭で考える力を伸ばすべきなのか、ということを考えるのに、以下の2点についてきちんと検討する必要があります。
① なぜ「自らの頭で考えること」が重要なのか
② 「自らの頭で考える」こととはどのようなことなのか
① なぜ「自らの頭で考えること」が重要なのか
自らの頭で考えることが重要な理由は、「答えのない問に答えることができる」ということだと思います。世の中は答えのない問いに溢れています。多くの人は、キャリア、お金、恋愛、家庭、健康・・様々な問題や悩みを抱えており、常に「どうすれば良いのだろう」と悩んでいます。
例えば、妻に不満を抱えているある夫がいたとします。その人は、自分が望む行動をとってくれないので、妻にいつもイライラしています。なかなか妻が変わってくれないので、嫌気が差して離婚をしようかとも考えていますが、自分も変わらないといけない部分もあると思いながら、子供もいるし、離婚はしないほうがいいか、と思いながら10年ほど経っています。
こうした悩み・問題は、答えがありません。いくらいろいろな人のアドバイスを聞いたとしても、結局自分の問題なので、自分でなんとか解を見つけるしかありません。
他にも、キャリアの問題や、仕事上の問題など、現代の人々は様々な問題を抱えていますが、何かしら常に答えを出さなければなりません。
そうした時に、結局「自分で考え、判断する」ということが常に求められるのです。
② 「自らの頭で考える」こととはどのようなことなのか
ただ、「自らの頭で考える」というのがあまりにも広いので、なかなかまだ考えづらいです。
自らの頭で考えるとはどのようなことなのでしょうか。もともと引用した、「グライダー人間」と「飛行機人間」の意味合いに戻ると、つまり、「飛行機人間」 = 「自律自走」ということなのだと思います。
自律自走とはシンプルにいうと「自分のことは、自分でやる」ということです。
そうすると、以下の2点があるということがわかります。
I:自分のやることを自分で決める
II:やるべきことを独力で実行する
会社員の場合、Iを自分で決められない場合もあるので、やれと言われたことを必死にやる、ということでもある程度成果は出てしまうのです。
ですが、これからの時代は、キャリアの不確実性も高いです。事業環境変化も非常に大きくなっていきます。そういった中で、自分の向かうべき方向性を自分で決められないというのは非常に大きなリスクになってきます。
ですので、人からの指示がある環境下にいる人でも、必ず「自分でやるべきことは何か」と考える癖をつけることが非常に重要です。
また、自分のやるべきことを自分で実行できる、ということに対しても、人の助けを借りることもできる、という反論もあるかもしれませんが、あくまで人の助けを借りるとしても、必ず自分がやるべきことはあるはずです。IIの中には、自分がやるべきことと、人に頼るところを切り分けて、切り分けた部分をお願いする、という自分のやるべきものに落とし込み実行することも含まれます。
I:自分のやることを自分で決める
自分のやることを自分で決めるということには2つのアプローチがあります。
・完全に自分でやることを決める
・やるべきことを自ら意義づける、目的を明確にする
経営者であったり、個人事業主などではない場合は、おそらく基本的には自分でやることを全て自分で決めるというのは難しいと思います。
ですので、多くの人は、自分が日々やることは「自分でやると決めたこと」と「(他者からの依頼や何かしらの要求で)やらないといけないこと」の2種類があると思います。
どちらも、「なぜやっているのか」を明確に意義づけすることで初めて他人事ではなく自分ごととして捉え、自らの頭で考え処理するようになります。
ですので総括すると、「なぜやっているのか、自分で意義や目的を説明できるもの」をやる、ということが重要です。
II:やるべきことを独力で実行する
やるべきことを独力で実行するとは、自分がやっていることをきちんと説明できることだと考えています。
イチローは「自分がヒットを打つ理由が説明できる」と言いましたが、イチローこそ完全な自律自走人材だと思います。
つまり、偶然にも頼らず、外的な要因にも頼らず、常に成果を出すメカニズムを理解し、自分が何をやっているかクリアに意識して、実行できている状態こそ、目指すべき状態です。
総括:
とらえどころのない、「自らの頭で考える」ということを考えてきました。総括すると、以下の2点にまとめられるのではないでしょうか。
A:目的の明確化
→ 常に自分ごととして捉え、自分が取り組んでいることに対して「なぜやっているのか」という意義や目的を説明できる
B:メカニズムの理解による独力での実行
→ 常に目的達成・成果創出のためのメカニズムを理解し、自分が取り組んでいることを具体的に説明し、独力で実行できる
巷に「論理的思考」や「思考フレームワーク」などの本が多く並んでいますが、真に「自らの頭で考えること」を体得し、自分の人生に効果的に活かすには、上記2点を意識すると良いかもしれません。