ねこひげの鬱抜け方法
1. はじめに
ねこひげは「元」メンヘラである。詳細は省くが、一時期激しく精神を病んでいた。もちろん精神科に定期的に通院をし、数回の入院も経験した。しかし現在は精神科医のお墨付きを貰い、薬も飲んでいなければ精神科通院すら卒業できたのである。「寛解した」と言っていい。
そんな立場で今現在精神を病んで苦しんでる人たちを見ていて、色々と思うところがあったので筆をとった。何かしら参考になるのであれば幸いである。なお第4章は「休むとは」がテーマであるが、タイトルに「ここだけでも読んで」とある通り、この章が一番言いたいことなので、この第4章だけ読んで他の章は読まなくても構わない気もする。
※タイトルにもある通り、このnoteに書いてあることは「ねこひげの」場合の鬱抜け方法である。早い話が素人のただの体験談&そこから得た個人的教訓だ。ねこひげは精神医学やカウンセリング等の専門家ではない。故に、万人に適用できる保証も、これを実践して鬱抜けできる保証も、一切無いということを理解した上で読み進めて欲しい。
2. 通院の必要性
いまさら挙げる必要も無いかもしれないが、当たり前のことこそ大事である。精神科通院は必須である。
2.1. 処方された薬を処方通りに飲む
「もう飲まなくても良いだろう」という自己判断は、向精神薬においては一番危険である。それをやったが最後即再発する。「なんか今日調子悪いと思ったら、昨夜薬を飲み忘れていた」というのもあるあるだろう。ねこひげは何度かやらかした。
2.2. 服薬している薬に違和感があったり副作用らしき症状が出たりしたら、主治医に相談する
結局患者は素人である。メンヘラはお薬好きが多いから勘違いしがちだが、なんだかんだで医師の方がプロである。素直に従っとくのが吉。本気で治したいと思うなら、「この薬試してみたいんですけど」「ザル処方でなんでも出してくれるこのクリニックに行こう」なんてことは辞めた方がいい。逆に、そういう信頼出来る主治医を探すのが第一の関門になりがちな上、数回通わないと分からないことも多いのが、精神科医療のクソなところだとも思う。ねこひげは途中引越しを複数回挟んだこともあり、合計10人の精神科医にかかった。さすがに多すぎる。今数えてビックリした。中には信じられないヤブ医者もいたし、信頼出来る医者もいた。
2.3. 各種制度の利用
傷病手当、自立支援医療、障害者手帳、障害者年金、生活保護…状況によりけりだが、使えるものはなんでも使うべきと思う。お金が無いと選択肢が無くなり、さらに病むループに陥る。
3. 合わない環境から逃げる
外部からのストレッサーはできる限り取り除きたい。家族、友人恋人、学校、職場…etc。いずれも大事である。病まずに続けられるのなら続けるに越したことはない。しかし自分を壊してまで続ける必要はどこにもない。また、病んでる原因にこれらが当てはまらないとしても、既に病んでるところにさらにストレッサーが加わるのは好ましいことでは無い。家族から離れるなら一人暮らし、友人恋人から離れるなら連絡を控える/縁を切る、学校から離れるなら休学/中退、職場から離れるなら休職/辞職などなど。
ねこひげは大学で病んだので、休学/中退について少し掘り下げることにする。
3.1. 休学
大学などがストレッサーだと、すぐに「学校辞める!退学する!」と言い始める人が多いが、まず取るべきは休学である。抑うつ状態の時は極端な選択は控えるべきとはよく言われるが、この場合において「極端な選択」とは退学のことである。これがよく言われる理由は、一般的には「抑うつ状態では合理的な思考ができないから」と言われる。ここでは退学ではなく休学にするメリットを挙げながら、この「合理的な思考」について少し掘り下げてみることにする。
3.1.1. 復学の可能性を残せる
「辞めたい」と思ってる時点で「復学する可能性なんてない」と思いがちであるが、それが既に0/100思考である。休学にすることで、「退学する」「復学する」両方の可能性を残せる。わざわざ背水の陣で臨む必然性はどこにもないのだから、選択肢は多く持っておいた方が良い。
3.1.2. 学生の権利が使える
学生証が手元にあると強い。鉄道などの学割、映画館や美術館博物館などの学生料金などなど。病んでる真っ只中の時はメリットが感じにくいかもしれないが、少し回復してきた頃に大きな威力を発揮する。また、学生証は身分証明にもなる。
3.1.3. 大学で入った学生賠償保険が使える
3.1.2. 学生の権利 に近いかもしれないが、あえて別項目にした。大抵の人は入学時に加入していると思う。保険金が下りる条件をよく読むと、「精神疾患が理由のものには使えない」旨のことが書いてありがちだが、ねこひげの場合、なんだかんだで入院費だとか自傷行為の縫合費だとか、いくらか請求して一部は下りてた記憶がうっすらとあるので、加入しているのなら問い合わせる価値はあると思われる。
3.1.4. 履歴書が空白にならない
3.2. 中退 において後述するが、次の進路が決まってから退学にして、それまでは休学ということにしておけば、履歴書上はずっと学生のままでいられる。結局中退理由など突っ込まれることになるし、仮に中退せず復学して卒業したとしても、留年は確実なので、ストレート進級でないことが突っ込まれるしで、いずれにせよ理由をきちんと説明する必要はある。しかし、空白期間があるよりはマシだと思う。
3.1.5. 「ニートじゃない」という自意識
下らないかもしれないが、なんだかんだで1番大事な気がする。いずれはそういうプライドも捨て去らないと抑うつからの完全回復には至らないかもしれない。しかし抑うつ真っ只中においては、「休学しただけでまだ学生」「大学に所属している=社会的な立場がある」というプライドは、ねこひげの場合は少なからず心の支えになっていたのは事実である。
3.2. 中退
休学して心を休めて、抑うつ状態からも回復して、それでも大学にはもう通えないと思うなら、そこで初めて中退という選択肢が出てくる。ここで重要だと個人的に思うのは、次の進路を確定させてから退学の手続きをとることである。すなわち、別の大学や専門学校に通うなら受験して合格してから、就職するなら面接を受けて内定をとってからなど。理由は、先に述べた 3.1.4. 履歴書が空白にならない を達成するためである。
ねこひげの場合は、今の専門学校は去年2022年の10月に受験して11月に合格が決まったので、合格発表を確認した数日後には大学の事務に退学届を提出していた。その際に、退学は2023年3月末日とすることで、4月からの専門学校入学までシームレスに繋げることが出来た。
しかしそうは言っても、そこまで上手く繋がらないパターンも多いと思われる。大学が私立だから休学中も学費が取られるとか、休学年数/在学年数が上限に達してしまい退学せざるを得ないとか、事情は様々だろう。各自の経済事情や、大学と相談するなどして、最善策を取って欲しいと切に願う。この点に関して言えば、ねこひげは運が良かった自覚がある。前の大学は国立だったから休学にお金はかからなかった上、次の進路の確定もスムーズに行った方だろう。
また、同じ大学内で学部学科を移籍する、取得済の単位を流用できる別大学に編入するなど、ここでは述べていない選択肢は他にもまだある。特に取得済の単位が流用できるなら、後々かなり楽になるはずだから、調べて、また学校の事務に相談するなどして、できる限り多くの情報を持っておくことを強くオススメしたい。
ねこひげの場合、同じ大学内に新たな希望進路に合致する学部がなかった代わりに、別の2つの大学にその学部があること、その上取得単位も教養科目などある程度流用できることまでは調べた。しかし、編入試験があまりに難しすぎたことと、改めて再度センター試験…じゃなかった、大学入学共通テストから一般入試を受ける気力は無かったことから、それら2大学は諦め、ほぼ同じことがより短期間で学べる(代わりに取得できる資格は大学よりランクが低い)今の専門学校にしたという経緯がある。また、大学に行ったら卒業まであとさらに4年間かかるが、専門学校なら2年で卒業できるので、「タイパが良い」というのも大きかった。
4. ここだけでも読んで:「休む」とは
精神疾患にかかったらよく言われる「休め」という言葉。これに対して当時のねこひげを含む当事者はこう返す。「休むって、どうやって?」と。当時はわかっていなかったが、今となって振り返ってみて、ようやっと「そういうことだったのか」「あの行動も自分を休ませていた内に入るのか」と納得出来たので、ここで共有したい。というか、改めて書くが、この投稿で一番言いたいのはこの章なので、ここだけ読んで貰えたら他の章はスルーしてもらっても構わない。
4.1. まず身体
重度の抑うつ状態では、睡眠が取れない、食事が取れない、風呂も入れない状態になる。そこまで行ったら入院も考えるべきだが、そこまで重度でなくても、ベッドから動けなかったりする。外に出る気力などもちろんない。そんな時はとりあえず物理的に横になっていればいいと思う。というかやろうと思っても何も出来ないから、そのままで良い。「起き上がって何か活動しなければ」という強迫観念のような思い込みは、それ自体が抑うつの症状であるし、「何か活動すべきなのに何も出来ない自分」という思考はさらに抑うつを悪化させるだけであるから、「今は横になるのが仕事」と言い聞かせるくらいで調度良い。
そのような状態であっても、何かしら栄養になりそうなものは摂取したい。ねこひげは摂食障害ではなかったが、単なる抑うつで拒食レベルに食べられなくなった時期があった。液体の経腸栄養剤で凌いでいた時もあったし、食事を泣きながらミキサーにかけてセルフ流動食にしたこともある。食べられないのにミキサーかける気力はあるんかい。初めて入院した時、最初の頃出されていた食事も流動食だった。一般食に戻すのに1ヶ月かかった。なおどうでもいいが、ねこひげはエ⚫シ⚫アよりメ⚫バラ⚫ス派である。ほんとにどうでもいいな。
4.2. 心を休める
一番大事なことがここである。心を休めるとはどういうことか、ねこひげなりの持論を書いていく。ベッドにひたすら横になって、時に入院も挟みつつ、そういった期間を過ごしていると、もう動ける、身の回りの事もある程度はできる、なんなら勉強や仕事などの本業もできそうな気がする、というかさすがに長く休みすぎて焦りがあるから早く社会復帰したい、社会に居場所が欲しい、という時期が来る。この時期に復学/復職して失敗している人が多いように見受けられる。復学/復職はせずとも、元気になってきたし暇だし、といった理由でバイトを始める人もいる。そんな人たちがたいてい数ヵ月後に体調を崩し、再入院などに至っているパターンが多い。復学に失敗したどこぞのバカ猫もこのパターンだったらしい。一通りのセオリーは達成済である。なぜそうなるのかといえば、端的にまだ寛解していないからである。
パッと見元気に見える。本人も元気だと思っている。しかし「病み上がり」状態なのである。例えるなら、充電切れを起こしてシャットダウンしてしまったスマホを充電器に刺して少ししたら、とりあえずは起動できた状態と言うべきか。すなわちまだ心の充電が満タンになっていないのである。そこに復学/復職/バイトなどの負荷をかけたら、すぐ再度充電切れを起こしてしまう。「休む」というのは、心の充電を満タンにすることである。本業に復帰したりバイトを始めたりといった負荷をかけていいのは、充電が満タンに近くなってから、すなわちまだ全然先の話である。
ではどうしたら心の充電ができるのか。それは各自で違うだろう。例えばねこひげの場合は、ひたすら一人旅をしていた。鉄ヲタ/おでかけヲタクのねこひげらしい充電方法である。しかしいきなり宿泊を伴うおでかけは、逆に負荷になってしまうかもしれないので、最初はごく近場を日帰り程度のおでかけにした。日帰り小旅行に成功したら、次は少し距離を伸ばしてみる、その次は1泊程度してみる、といったように、小さな成功体験を積み重ねていきながら、ひたすら趣味だけに徹していた。要するにひたすらおでかけばかりしていたので、パッと見はうつ病患者に見えないくらいアクティブに動いていたわけである。自分の好きなことだけして、心の充電を徐々に増やしていく。
この段階において、2.3. 各種制度の利用 や 3.1.2. 学生の権利が使える が生きてくる。特に障害者手帳による一部交通費半額とJRの学割はかなり大きかった。また、「遊ぶ元気があるなら働け」「障害年金/生活保護で遊びやがって」論も、上記の理論により一蹴可能である。心の充電が満タン近くになってから、時短などで少しづつ負荷を増やして最終的に社会に還元していけば良かろう。
またこの段階において、もう1つやるべき大切なことがある。それは、復帰したあとを見据えて、心をすぐに充電できる手軽な方法を見つけておく、ということだ。復帰したら、基本は平日週5日はフルタイムで負荷をかけることになる。手軽な充電方法が何もなかったら、平日に減った分の充電を週末だけでリフレッシュしないといけない。ねこひげの場合で言えば、おでかけなんて週末くらいしかできないだろう。というか専門学校が忙しすぎて、週末どころか夏季休暇もほとんどおでかけできなかった。だから、平日の本業をやっている間にも、手軽に充電できる方法を予め見つけておく必要がある。ちょっとした休憩時間や、帰宅した後寝る前までの時間などにできる、簡単なものがいい。具体例を挙げるなら、
美味しいものを食べる/作る
友人と話す
散歩
日記
読書
ぬいぐるみ
物作り
YouTube/アマプラ/ネトフリ等
SNS
酒
タバコ(メンヘラに喫煙者が多い理由の一つはこれだと思う)
その他
などが考えられる。一方で、過度にのめり込みすぎたら「〇〇依存症」になってしまいかねないものも多い。それでは逆効果であるから、
自分に合った気分転換法であること
手軽にできること
過度にのめり込みすぎずに気分転換できるバランスのとり方
複数の方法を見つけて使い分けられるようになるのが理想
この4点に気をつける必要がある。しかし、自分に合った方法を見つけ出すのも、気分転換としてバランスをとるのもそれなりにエネルギーがいるにもかかわらず、それを複数個見つけろなんて、特に心の充電が少ない段階には無理難題も甚だしいので、心の充電に余裕が出てきたと思ってから少しずつ模索する程度で良い。ここでまた完璧主義を発動して心に負担をかけるのは本末転倒である。また、この心の充電残量がいくらであるかを意識するのは社会復帰後も必須スキルであるから、この段階の頃から、心の充電残量がいくら残っているか気にかけてみるのをオススメしたい。
5. 自傷行為について
自傷行為を打ち明けた際、「将来後悔するから止めろ」と言われたことの無いリストカッターはいないはずだ。ねこひげは跡が残ってしまったので、不都合を感じる場面が時折存在する。しかしそれは回復した今だから言えることであって、当時はそんなこと眼中にも無かった。いや、「将来後悔する」「やってはいけないこと」なんてことは頭では分かりきっていた。しかしやらざるを得なかったのである。それ程までに精神疾患は人を蝕むものであるということであり、いわば「精神疾患によって自傷させられている」状態と言える。よってねこひげはODを含む各種自傷行為そのものに関しては、現在も肯定的な立場である。要するに「無理に辞める必要は無い」と思っている。というか、「辞めよう」「辞めなければ」と思っていると、むしろ悪化しがちな印象を受ける。
しかし放っておくとエスカレートしてしまうのは否定出来ず、最終的に行き着く先は自死であるのも事実であるから、どんどんエスカレートしているのであれば、何かしらの介入は必要になる。すなわち、休む、環境を変える、ストレッサーを取り除く、薬を増量する、入院する、などである。逆に言えば、心が無理をしていないか、現在の環境や治療方針が自分に合っているかなどのバロメーターと認識するのが自傷行為との良い向き合い方な気がする。だから自傷行為を打ち明けられる援助者の存在は大切であり、主治医もその1人になるべきなのであるが、そこまで信頼出来る優秀な精神科医が少なすぎるのが嘆かわしい。
6. 終わりに
抑うつ状態の人に向けて書いた文章が7,500字超え?しかも文体固いし、読ませる気ある?やっぱこの猫はバカ猫だ。
オチもついたところで。
メンヘラ全員にこの記事内容が適用できるとは端から思っていない。理想論じみた部分も多数ある上、「結婚して専業主ふになる」のように言及していない(できない)選択肢も多数ある。また、念頭に置いているのは「うつ病」であり、それ以外の精神疾患(あるいは生き辛さ)の場合には適用できない部分も多いかもしれない。冒頭にも書いたが、ここに書いたのはねこひげの体験談とそこから得た個人的教訓である。だから、ほんの一部分だけでも誰かの参考になる部分があればそれで充分である。いや、ねこひげの中で、うつ病〜大学中退は大事件であったから、これはただ過去の自分を振り返りたかった&寛解した現時点での個人的記録というだけの自己満記事であり、誰かの参考になんてならなくても構わないのかもしれない。
しかし、ねこひげがこの期に及んで今更ながらに突然noteを始めた理由は、この記事が書きたかったからである。もっと言うなら、寛解してからTwitterにメンヘラなTLが流れてくるたび、4.2. 心を休める の内容をずっと考えてモヤモヤしていたからである。そのモヤモヤをひとまず書き終えて形にできたので、note開設の初期目標を達成したことになる。
と書くと、「もうnoteは更新しないのか」と言われそうだが、まだまだ書きたい記事はたくさんあるので、これで終わりにはしないつもりであるから、今後もぜひご贔屓に。
全メンヘラが少しでも楽になれることを願って。
以上
ねこのひげ