将棋aiのインタビューが気になったのでのせてみた。

――開発する上で使用されているパソコンにはどんなこだわりがありますか?

将棋AIの開発にはパソコンのスペックが非常に大事になってきます。強い将棋AI同士が繰り返し戦ったデータをたくさん集めなければならず、そうなると性能の良いCPUを使った方がより早く対局データが集まります。

そこで、インテルCore™ i9の7960Xという、16コア32スレッドのCPUを購入したのですが、それでも足りないということで2~3年前に発売された(※2)AMDのRyzen™ Threadripper™ 3990Xという、64コア128スレッドの普通の人は必要ないだろうというモンスターCPUを買いました(笑)。

※2 2020年2月8日発売

――開発には膨大なデータを処理する能力が必要なのですね。

計算力が速ければ速いほど質がよく、なおかつ量もこなせるとあって、新しい商品がリリースされるとすぐに詳細なスペックをチェックするようにしています。

――杉村さんが開発された将棋AI「水匠」は2020年2月、世界コンピュータ将棋オンライン大会で優勝するなど、近年、一般的にも将棋AIへの関心が高まっていると言えます。

「水匠」だけでなく、ソースコードを公開しているオープンソースのAIの中にも強くて技術力の高いものはいっぱいありますので、他のAIの存在は常に勉強になります。

――将棋AIの分野には、基本的にそれぞれライバルでありながらも、どこか同じ仲間という一体感のようなものを感じます。

それは間違いなくありますね! もちろん競争という面もありますが、その成果を公開することによって、戦いを重ねるたびに全体的に強くなっていくのは良い循環なのかなと思います。

――「水匠」を使うために推奨するPC環境があれば教えて下さい。
「水匠」はどのようなスペックであっても楽しめます。ちなみにスマホでも動きます。「水匠」の強さはCPUの性能に依拠していますが、一般的なノートパソコンだと1秒あたり400万~500万手を読んで分析しますが、この8月に発売されたばかりのRyzen™ Threadripper™Pro 5000WXシリーズ最上位CPUだと、おそらく1秒間に8000万から9000万手を読めると思います。
――もはや素人には想像のつかない数字です(笑)。
人間に例えると、これからプロになろうとしている人と、名人くらいの差と言えばいいでしょうか。当然より強い方が良い指し手を教えてくれる、ということになります。
――「水匠」のようなCPUを使うソフトと、ディープラーニング系のGPUを使用するソフトを併用することのメリットについて教えて下さい。
まず、ディープラーニングとは、人間の脳を模したニューラルネットワークを使用した学習方法ですが、この場合、難しい計算を速く行うCPUより、単純な計算をたくさん出来るGPUの方が速度が出るんです。
水匠のような将棋AIとディープラーニング系の将棋AIとの違いは「大局観(※3)」と「読むスピード」に現れます。GPUは一目で見ただけで有利不利が瞬時に分かる「大局観」の精度は高いのですが、その代わり手を読むスピードが遅く、CPUの100分の1程度になります。それでも十分強いのですが。
※3 囲碁や将棋、チェスなどのボードゲームで、全体的な状況や優劣の判断を行う事
つまり勝負の序盤、まだどんな戦いになるのかいくら読んでも答えが分からない場合は、大局観をつかむことが得意なディープラーニング系の将棋AIが能力を発揮します。それに対して「水匠」は終盤、つまり答えが分かるような局面で強い。将棋は終盤になればなるほど勝敗がはっきり見えてきますが、そういう時は手を読むスピードが速いCPUが力を発揮する、ということになります。

将棋AI開発者とプロ棋士が協力する未来を目指したい


  • ――人vs人の戦いだと、しばしば奇手や奇策のようなものが飛び出して不利な局面をガラッと変えたりすることがありますが、将棋AIにそういった機能はあるのでしょうか。

    1. AIはひたすら正確に、相手が間違えないことを前提に手を読むので、一発逆転を狙うような意外な手はなかなか生み出せない、というのが正直なところです。通常、将棋AIが自己対局をした20億から30億の局面を学習していますが、対AIに関しては裏や穴を突くために学習するデータが足りないんですね。なので、そういった「逆転力」に関してはまだまだ課題と言えるかもしれないです。

    2. ――では、これから先の未来、将棋とAIの関係について、杉村さんのお考えを聞かせて下さい。

    3. 実際に毎年のように大会が開催されていることからも、AI対AIという局面はこれからも続いていくと思います。それに加えて、人間がAIを使ってどうやって学習すれば良いのか、という研究分野は個人的にも興味があります。

    4. あとは、人間の指し手をAIがどれだけ再現することが出来るのか、というのも最近一部のコンピュータ将棋開発者の間でブームになっています。名だたる歴史上の棋士たちの棋譜をAIが学習することによって、歴代の棋士たちを現代によみがえらせることが出来るかもしれません。

    5. ――ご自身の目標はいかがでしょう。

    6. すでにチェスの世界ではかなり進んでいるようですが、理想としてはF1レースにおけるドライバーとエンジニアのような関係というか。将棋AI開発者とプロ棋士がチームを組むような形で協力して対局に臨み、なおかつビジネスとしても成立することが理想です。


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