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【映画所感】 ルックバック ※ネタバレ注意

上映時間58分、特別興行/料金一律 1700円

1時間に満たない映画なのに、割引サービス一切なし。

根っからの貧乏性に加えて、映画なら3時間でも4時間でも耐えられるように調教されてしまった身なので、費用対効果に見合った作品なのかと鑑賞直前まで悶々。

そんな心配は、半券と引き換えにもらった入場者特典で、雲散霧消する。

「原作ネームの漫画がいただけるなんて、聞いてないよ。それならそうと早く言ってよ」

パラパラとめくるだけでも、1700円以上の価値を見出す。

本題を映画に戻すと、アニメーションの可能性、表現をまたまた更新。

「どうなってるんだ、日本のアニメ業界!」

今春公開の『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章』、昨年の『THE FIRST SLUMDUNK』や『BLUE GIANT』など、近年、衝撃作が津波のように押し寄せている。

本編の内容はというと、漫画家・藤本タツキの創作に対する姿勢と、誰しもが大なり小なり経験してきたであろう“青春あるある”がこれでもかと盛り込まれたもの。

さらには、2019年に起こった「京都アニメーション放火殺人事件」への追悼の意味を込めた、藤本タツキ自身のけじめ。

狂人の身勝手な思い込みにより、志半ばにして殺められた天才クリエイターたち。事件へのやるかたない想いが、主人公・藤野の視点を通して、穏やかに提示される。

『アマデウス』(1985)や『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)、『バタフライ・エフェクト』(2005)など、偉大な過去作からの影響は、数多の考察レビューコンテンツが挙がっているのでそちらにお任せするとして、上映中ずっと心の片隅で「この話、どっかで聞いたことあるような…」と考えていた。

今、売れに売れている日本のロックバンド「Mrs.GREEN APPLE」

バンドのメインコンポーザーでありフロントマンの大森元貴と、ギタリストの若井滉斗の中学時代の逸話が言い得て妙。

ミセス好きガチ勢から聞きかじったところ、曲作りに明け暮れ引きこもり気味だった大森を、朝迎えに行き一緒に登校していたのが若井だったとのこと。

才能に溢れたふたりの出会いとその後の絆という点において、本作の藤野と京本にその関係性を勝手に重ねてしまっていた。

挫折や後悔が入り込む余地のない純無垢粋な推進力は、青春エピソードとして反証できない美しさなのだ。

58分で駆け抜ける青春、タイパと体感を考慮すると費用対効果は絶大だった。

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