マヤグチマガジン

NOと言えない典型的な日本人。同僚から、ほとんど興味のないジャンルの小説20冊を、無理やり押し付けられた経験を持つ。キッパリと断ったはずなのに、何故?

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NOと言えない典型的な日本人。同僚から、ほとんど興味のないジャンルの小説20冊を、無理やり押し付けられた経験を持つ。キッパリと断ったはずなのに、何故?

最近の記事

【映画所感】 侍タイムスリッパー ※ネタバレ注意

“タイムトラベルもの”にハズレなし誰もが認める傑作『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985)や『ターミネーター』(1985)のみならず、広義の意味での“タイムパラドックス”を巧みに扱った『オーロラの彼方へ』(2000)や『バタフライ・エフェクト』(2005)、『LOOPER/ルーパー』(2013)など、良作・秀作を挙げだしたらきりがない。 個人的には1981年の作品『ある日どこかで』を強烈に推したい。 70年の時を越えて恋愛を成就させる、劇作家の青年と新進気鋭の女優。

    • 【映画所感】 エイリアン:ロムルス ※ネタバレ注意

      『ドント・ブリーズ』というよりは、『13日の金曜日』 お話自体は、SFホラーというジャンルにおいての最重要作品『エイリアン』(1979)と、ジェームズ・キャメロンの大出世作『エイリアン2』(1986)のあいだの出来事らしい。 長年「エイリアン・シリーズ」をウォッチしつづけてきた身からすれば、これ以上ない時代設定で、宇宙船内のモニターや操作パネルのスイッチ類など、なんともレトロチックな佇まいに気もそぞろ。 「これ、これ、これなんだよ、エイリアンは!」とひとり劇場で合点し、

      • 【映画所感】 愛に乱暴 ※ネタバレ注意

        平穏な暮らしを維持しようとする主婦が、徐々に壊れていくさま 名バイプレイヤーとして、確固たる地位を築いている江口のりこ。 今作は彼女を主演に迎えて、吉田修一の同名小説のドロドロとした世界観を丹念に映像化している。 登場人物は、おもに初瀬家の3人。桃子(江口のりこ)と真守(小泉孝太郎)夫妻に、真守の実母の照子(風吹ジュン)。 彼らを取り巻く環境に不穏な空気が入り込むことで、バランスは微妙に崩れ、桃子への負荷はどんどん増していく。 言うなれば、2ちゃんねる(現、5ちゃん

        • 【映画所感】 ルックバック ※ネタバレ注意

          上映時間58分、特別興行/料金一律 1700円1時間に満たない映画なのに、割引サービス一切なし。 根っからの貧乏性に加えて、映画なら3時間でも4時間でも耐えられるように調教されてしまった身なので、費用対効果に見合った作品なのかと鑑賞直前まで悶々。 そんな心配は、半券と引き換えにもらった入場者特典で、雲散霧消する。 「原作ネームの漫画がいただけるなんて、聞いてないよ。それならそうと早く言ってよ」 パラパラとめくるだけでも、1700円以上の価値を見出す。 本題を映画に戻

          【映画所感】 あんのこと ※ネタバレ注意

          12でウリを覚え、16でシャブを喰らう俄には信じ難いような“修羅の世界”を生き抜いてきた、香川杏(河合優実)21歳。 薬物i依存の更生プログラムに、ヨガ教室をプラスしたような活動を定期的に行っている刑事、多々羅保(佐藤二朗)。 多々羅の放つ異質なパワーが充満する取調室の中、二人は出会う。 初対面なのに、ぐいぐいと距離を詰めてくる多々羅。抗えない空気感を伴いながら、救いの手は突然、杏の目の前に差し出されたかのように映る。 型破りな刑事がインストラクターも兼任する、風変わ

          【映画所感】 あんのこと ※ネタバレ注意

          【映画所感】 マッドマックス:フュリオサ ※ネタバレ注意

          チャプター1だけで、もうお腹いっぱい5章仕立てからなる本作『マッドマックス:フュリオサ』。 前作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のストーリーが、ほぼ数日間の逃避行を描いたものだったのに対して、20年の長きにわたる復讐譚を丹念に紡ぐ。 意外や意外、フュリオサの少女時代にかなりの時間が割かれる。邪悪なバイカーたちに捕まり、連れ去られたフュリオサを、必死に追う母親。 砂漠をバイクで疾走するチェイスシーンからのアジト潜入、そして救出シークエンス。冒頭から畳み掛けるスピード

          【映画所感】 マッドマックス:フュリオサ ※ネタバレ注意

          【映画所感】 あまろっく ※ネタバレなし

          ベタすぎるがゆえの滂沱笑福亭鶴瓶を中心にストーリーが進み、関西出身の役者やタレント、松竹芸人らが多数出演している。 想像以上にこってこての人情喜劇は、一周まわって感動の展開へと昇華される。 ほんの10年ほど前までは、毎週のように仕事で通っていた、阪神尼崎駅界隈。 この関西屈指のディープな街が舞台ということで、懐かしさ半分、なんの気なしに劇場に赴いたのだが、結果、うれしい誤算でおつりがくる。 中盤からは、こころの拠り所であったかすがいを失い、物理的にも距離を縮めざるを得

          【映画所感】 あまろっく ※ネタバレなし

          【映画所感】 インフィニティ・プール ※ネタバレ注意

          カルト女優、ミア・ゴスの魅力全開スタジオA24が制作、タイ・ウェストが監督したホラー映画『X エックス』(2022)と、その前日譚を描いた『Pearl パール』(2023)。 ホラー・ガチ勢の溜飲を下げたこの2作品において、圧倒的な存在感を放っていた、怪優ミア・ゴス。 ラスボス感ありありのフルネームからして、その後の役者人生では、つねに勝者の側にいるにちがいないと、勝手に妄想してしまう。 1978年に日本サンライズが手掛けたTVアニメ『無敵鋼人ダイターン3』の主人公“破

          【映画所感】 インフィニティ・プール ※ネタバレ注意

          【映画所感】 ゴジラ×コング 新たなる帝国 ※ネタバレ注意

          笑っちゃうほどのご都合主義「いい意味で」とは、あえて付け加えない。 2014年のハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』からつづく、モンスターヴァースシリーズは、もう完全に東宝の日本版とは一線を画すものになった。 ファミリー向けの娯楽作品と、完全なるシリアス路線。 とくに本作は、1960年代から70年代にかけて粗製濫造された、所謂子ども向けの“プロレス・ゴジラ”を、そのまま踏襲しているかのよう。 前作『ゴジラvs.コング』のクライマックスは、2対1の変則マッチ(ゴジラ

          【映画所感】 ゴジラ×コング 新たなる帝国 ※ネタバレ注意

          【映画所感】 デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章 ※ネタバレなし

          “あのちゃんの衝撃”再び現在のフォーマットとは少し違って、朝の大喜利番組としてのテイストが色濃かった頃の『ラヴィット!』(TBS)。 2021年10月13日の放送は、同局のバラエティ『水曜日のダウンタウン』のドッキリ企画との連動だった。 アクの強い芸人たちが遠隔で繰り出すトンデモ大喜利回答を、リアルタイムで連発するために、生放送の現場に送り込まれた刺客が、あのちゃんだった。 結果、独特の気だるい雰囲気を全面に押し出した喋り方で、“不思議ちゃん”の形容そのままのあのちゃん

          【映画所感】 デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章 ※ネタバレなし

          【映画所感】 “極私的2023年鑑賞映画TOP10”

          もうすぐ2月も終わり。花粉が本格的に跋扈する季節になってからの、昨年振り返り企画。 自分の“先送り体質”が心底嫌になります。 どうしようもなく自堕落な人間が、好き勝手に映画を語っておりますが、それでも興味がおありの方は、どうぞ自己責任でお付き合いください。 2023年1月1日〜12月31日までを区切りとして、「誰が言うとんねん!」なお叱りをいただくであろうことは重々承知の上、早速ランキングしてまいります。 では、惜しくも10位に入らなかった次点の作品から。 【次点】

          【映画所感】 “極私的2023年鑑賞映画TOP10”

          【映画所感】 哀れなるものたち ※ネタバレ注意

          成人向け“アルジャーノンに花束を”ものすごく乱暴な例えなのは百も承知。 しかし、成長しきった器の中で、純粋無垢な脳みそがいちから育っていく有り様は、オールタイムベストなSF小説と共通項が多いように感じた。 R−18ということから推察される通り、単に日々の生活と鍛錬、学習によって運動機能と知性が爆発的に発達していくだけではない。 成長に伴い芽生える、自身の“性”への関心と欲求に抗う術を持ち合わせない女性の、奔放な冒険譚にストーリーの中心が置かれる。 天才解剖医・ゴッドウ

          【映画所感】 哀れなるものたち ※ネタバレ注意

          【映画所感】 笑いのカイブツ ※ネタバレ注意

          お笑いに取り憑かれたカイブツ=ツチヤタカユキの狂気に満ちた半生 NHKで2006年から2016年にかけて放送されていた視聴者投稿型の大喜利番組『着信御礼!ケータイ大喜利』にて、最高位“レジェンド”の称号を手に入れたツチヤタカユキ。 「1日に1000個のボケを考える」を自らに課し、バイトそっちのけ、寝る間も惜しんで、高校時代からネタを絞り出すこと6年。見事、目標を達成してみせる。 その過酷な生活は、常人には到底理解し得ないもの。 今どき、純朴な高校球児でも敬遠するような

          【映画所感】 笑いのカイブツ ※ネタバレ注意

          【映画所感】 サンクスギビング ※ネタバレ注意

          アメリカの感謝祭=サンクスギビング(11月の第4木曜日)に起こった悲劇。翌年、さらなる惨劇となってよみがえる 惨劇の引き金となった、郊外の大型商業施設での暴動事件。 脳みそ筋肉なバカップル高校生。 ブラックフライデーの大売り出しを血眼の形相で待ちわびる、欲望むき出しの消費者たちを煽りに煽る。 結果、全員が消費者から暴徒へと豹変。すべてが取り返しのつかないことに。 冒頭のこの阿鼻叫喚を見られただけで、十分幸せな気分に浸れる。 スクリーンで繰り広げられるトラジェディは

          【映画所感】 サンクスギビング ※ネタバレ注意

          【映画所感】 市子 ※ネタバレなし

          毎年この時期になると、今年観た映画を反芻し、自分なりのトップ10なんかをつらつらと考えたり、偉そうに意見を求めたりしている。 そこへ来て、この『市子』。 “青天の霹靂”とは、まさにこのこと。晴れわたった空で突然光ったカミナリに、脳天を貫かれる。 木っ端微塵に砕け散った気持ちを、地面にうずくまりながら、せわしなく両手でかき集めている自分。 その様子をぼぉ〜っと俯瞰している自分。 観終わった直後の状態を言語化しろと問われれば、このように答えるしかない。 要するに、心こ

          【映画所感】 市子 ※ネタバレなし

          【映画所感】 首 ※ネタバレ注意

          1980年に突如としてはじまった漫才ブーム。 もちろん、それまでにも寄席番組やお笑い番組は放送されていたし、漫才や落語をテレビで観る機会も多々あった。とくにここ関西では。 マイク一本だけで、思いの外視聴率が稼げることに気づいたテレビ局制作サイドが、『花王 名人劇場』(関西テレビ)や『THE MANZAI』(フジテレビ)を通じて夜のゴールデンタイムに、しかも全国ネットで漫才の放送を開始する。 もちろん、揃いの背広で、ふたりの掛け合いを中心とした、既存の演芸スタイルではなく

          【映画所感】 首 ※ネタバレ注意