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【第37回東京国際映画祭】アディルハン・イェルジャノフ監督『士官候補生』厳格な士官学校に隠された闇



<作品情報>

『イエローキャット』(20)などで知られる、カザフスタンの俊英監督アディルハン・イェルジャノフの最新作。シングルマザーのアリーナは息子のセリックをエリート士官学校に入学させようとするが、女の子のような風貌のセリックは生徒たちにいじめを受け、校長からも学校に不適格と判断される。アリーナはセリックの父親が軍隊の高官であるというコネを使ってセリックを復学させることに成功するが、自分の子どもがこの学校で自殺したという女性から、セリックは自分の子どもと同じ道をたどるだろう、と警告を受ける…。軍隊組織に内在する暴力や腐敗をホラー映画的な要素を加えて描いた作品。明るさをおさえた撮影と不穏な音響が絶妙な効果を上げている。

https://2024.tiff-jp.net/ja/lineup/film/37002CMP04

<作品評価>

80点(100点満点)
オススメ度 ★★★☆☆

<短評>

おいしい水
コンペの中で一番好きです。中盤は少しダレた印象があり、この内容にしては長いと感じました。しかし作家性が希薄な今年のコンペの中では異彩を放つ作品と言えますし、ホラーとしてよく出来ています。
アディルハン監督作品は一本も観ていないのですが、レビューなどを読む感じホラーの作り手という訳ではなさそうです。しかし独自のホラー表現を習得していてとてもいいですし、おそらく日本のホラーからも取り込んでいるだろうと思います。
士官学校の閉鎖的で「有害な男らしさ」を助長するような校風がまず不快でいいですね。背景にはソ連の影響があり、妄信的に賛美する校長をはじめ教官たちが不快で気持ち悪い。
「スケキヨ…」と思ってしまいましたが、独特の映像表現で士官学校に潜む何かを描出しており好感が持てました。
何より主演の女優さんが『ヘレディタリー』トニ・コレット並に熱演していてよかったです。女優賞とってほしい。
コンペっぽくない作品ではありますが、アディルハン流ホラーを最後の最後に観られてよかったです。個人的にはかなり好きな部類の作品でした。

<私たちについて>

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