「全部みる」シリーズ

「全部みる」シリーズ

マガジン

  • アカデミー作品賞全部みる

    アメリカ、映画の祭典アカデミー賞で作品賞を受賞した作品を全部みていくという企画です

  • 金獅子賞全部みる

    ヴェネツィア国際映画祭の最高賞・金獅子賞の論評です。

  • パルム・ドール全部みる

    カンヌ国際映画祭の最高賞パルム・ドールの受賞作品の論評です。

  • キネ旬外国ベストワン全部みる

    キネマ旬報外国映画ベストワンを受賞した作品を全部みるという企画です

  • キネ旬日本ベストワン全部みる

    キネマ旬報日本映画ベストワンを受賞した作品を全部みるという企画です

最近の記事

  • 固定された記事

「全部みる」シリーズのすべて~または私達は如何にして映画の光を信じて作品を観ようと思ったか~

はじめに 私たちがこの企画を始めたのは「何かを達成したい」という気持ちからであります。 例えば、金熊賞の作品を全部観た人はどれくらいいるでしょうか。 それを達成できれば私たちはもう一段上へと登っていけると思うのであります。 ここでは映画祭や映画賞で受賞した作品を全制覇することを目的とし、評価とレビュー、対談を交えて一記事とします。 この企画が何かの役に立てば幸いです。 メンバー 〇おいしい水 1996年生まれ。北海道出身の現役大学院生。 ピアノ弾き語りシンガーソン

    • ロブ・マーシャル監督『シカゴ』絢爛豪華なミュージカル

      <作品情報> <作品評価> 80点(100点満点) オススメ度 ★★★★☆ <短評> おいしい水 かなりしっかり作り込まれています。ミュージカルと現実はそれぞれ違う次元にあるというトリッキーな構成が面白いですね。 辛い現実から目を背けるように頭の中の妄想としてミュージカル部分があるという点で『ダンサー・イン・ザ・ダーク』にかなり似ています。最後が違うのですが、『シカゴ』も本当に現実なのか妄想なのかはっきりしないという怖さがあります。 やはりなんといってもレネー・ゼル

      • リドリー・スコット監督『グラディエーター』アツい男たちの闘い

        <作品情報> <作品評価> 75点(100点満点) オススメ度 ★★★★☆ <短評> おいしい水 古き良き時代の歴史大作といった感じです。ホアキン演じるコモドゥスは『クオ・ヴァディス』の暴君ネロと同じく愛を得られない人物として哀しい人物設定がされているのがよかったですね。 また冒頭の戦闘シーンも素晴らしいですし、衣装やセットの美術も大金をかけただけあり言わずもがなすごいです。 しかし人物描写が浅く、特に主人公のマキシマスが一番よく分からないのは致命的だと感じました。

        • クリント・イーストウッド監督『ミリオンダラー・ベイビー』精一杯生きた生の証

          <作品情報> <作品評価> 85点(100点満点) オススメ度 ★★★★☆ <短評> おいしい水 ボロボロ泣きました。人間の尊厳をめぐるとても端正なヒューマンドラマです。 ヒラリー・スワンクが2度目の主演女優賞とった作品でもありますがそれも納得の熱演!いや、もう名演って言ってもいいでしょう。というのも力が入った演技ではなくごくフラットに演じているのに情感たっぷりにみえるんですよね。最近仕事に恵まれてないようにみえますが(『ザ・ハント』で久々にみた)、やっぱりヒラリー

        • 固定された記事

        「全部みる」シリーズのすべて~または私達は如何にして映画の光を信じて作品を観ようと思ったか~

        マガジン

        • アカデミー作品賞全部みる
          12本
        • 金獅子賞全部みる
          33本
        • パルム・ドール全部みる
          34本
        • キネ旬外国ベストワン全部みる
          8本
        • キネ旬日本ベストワン全部みる
          7本
        • 金熊賞全部みる
          21本

        記事

          【世界三大映画祭】2024年グランプリ総括

          『ANORA アノーラ』 - カンヌ国際映画祭 パルム・ドール【作品評価】 90点(100点満点) オススメ度 ★★★★★ 【総評】 本作には、期待を超えてくる面白さがありました。 ショット・脚本・演技すべてを取っても、非常にハイレベルな作品だと感じます。 その中でも特筆すべきは脚本の巧さだと思います。 とにかく勢いが尋常じゃない。 随所に仕込まれるギャグ要素には終始捧腹絶倒でした。 とりわけ中盤はもはやシチュエーションコメディですね。 英語映画でここまで笑かされる作品

          【世界三大映画祭】2024年グランプリ総括

          【最速レビュー】ショーン・ベイカー監督『ANORA アノーラ』現実離れした恋の逃避行の果て

          <作品情報> <作品評価> 90点(100点満点) オススメ度 ★★★★★ <短評> クマガイ 釜山国際映画祭にて鑑賞。 『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』で知られるショーン・ベイカー監督の最新作です。 本作には、期待を超えてくる面白さがありました。 完全に私事ですが、自分は英語が苦手でリーディングもヒアリングスキルは人並み以下だと思います。 そんな私が本作を英語字幕で見て面白味を感じたのは、素直に凄いことだと思いました。 ショット・脚本・演技すべてを取って

          【最速レビュー】ショーン・ベイカー監督『ANORA アノーラ』現実離れした恋の逃避行の果て

          【第37回東京国際映画祭】コンペティション部門総括&受賞予想

          コンペティション部門総括『アディオス・アミーゴ』50点 ★★☆☆☆ 【総評】 万人受け必至の西部劇。 荒唐無稽さこそが西部劇の真骨頂だと思いますし、この映画はきちんとその文脈の中にあったと感じます。 音楽で盛り上げ、一枚絵で決める。 これがちゃんと出来ているよく出来たエンタメ作品だと思いました。 『敵』90点 ★★★★☆ 【総評】 吉田大八×筒井康隆だとこうなるか!という新しい発見がありました。小ぶりな舞台設定ながら予測のつかない展開力で魅せるあたりは流石吉田大八です

          【第37回東京国際映画祭】コンペティション部門総括&受賞予想

          【第37回東京国際映画祭】大九明子監督『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』一風変わったピュアでリアルなラブストーリー

          <作品情報> <作品評価> 90点(100点満点) オススメ度 ★★★★★ <短評> クマガイ 今年一番の傑作かもしれない。 ジャルジャル福徳の同名小説を、東京国際映画祭で2冠を果たした大九明子監督がメガホンを取っての実写映画化作品です。 正直なところ、私はラブコメはあんまり好きではないです。 結局このメイン2人がくっついたり別れたりするんだろうな…という物語の帰着がなんとなく想像できてしまうからです。 ただ、この映画は「結果」ではなく「過程」を楽しむことの重要性を

          【第37回東京国際映画祭】大九明子監督『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』一風変わったピュアでリアルなラブストーリー

          【第37回東京国際映画祭】アディルハン・イェルジャノフ監督『士官候補生』厳格な士官学校に隠された闇

          <作品情報> <作品評価> 80点(100点満点) オススメ度 ★★★☆☆ <短評> おいしい水 コンペの中で一番好きです。中盤は少しダレた印象があり、この内容にしては長いと感じました。しかし作家性が希薄な今年のコンペの中では異彩を放つ作品と言えますし、ホラーとしてよく出来ています。 アディルハン監督作品は一本も観ていないのですが、レビューなどを読む感じホラーの作り手という訳ではなさそうです。しかし独自のホラー表現を習得していてとてもいいですし、おそらく日本のホラー

          【第37回東京国際映画祭】アディルハン・イェルジャノフ監督『士官候補生』厳格な士官学校に隠された闇

          【第37回東京国際映画祭】ティエリー・ド・ペレッティ監督『彼のイメージ』追憶のコルシカ島

          <作品評価> <作品評価> 55点(100点満点) オススメ度 ★★☆☆☆ <短評> クマガイ 主人公のカメラを通して、彼氏とその仲間たち、そしてイタリア・コルシカ島の劇的な変化、メディアの在り方などを描いた意欲作でした。 この映画の特筆すべき点は、とにかくロケーションですね。 とにかく綺麗。コルシカ島の美しい自然風景を秀麗に描いています。 最後までこの映画、主人公のアントニアが辿った軌跡のすべてを見ると、彼女の死は本当に事故死だったのか?と考えさせれる、考察の余地

          【第37回東京国際映画祭】ティエリー・ド・ペレッティ監督『彼のイメージ』追憶のコルシカ島

          【第37回東京国際映画祭】セルジオ・グラシアーノ監督『英国人の手紙』継承されていくアイデンティティ

          <作品情報> <作品評価> 90点(100点満点) オススメ度 ★★★★★ <短評> クマガイ 今回の東京国際映画祭屈指の力作です。 父親がアフリカのアンゴラに遺した手紙を探し、その受け手のルーツを探すという物語。 アンゴラの政治情勢、そして広大なナミブ砂漠を背景に、関係者たちの"適応"の様子が描かれていきます。 この映画の真のテーマは"継承"です。 結論から言ってしまうと、手紙の内容は心底どうでもいいのです。 アンゴラに残った者、そして立ち去った者。 そして"祖

          【第37回東京国際映画祭】セルジオ・グラシアーノ監督『英国人の手紙』継承されていくアイデンティティ

          【第37回東京国際映画祭】マルコ・デュトラ監督『死体を埋めろ』鬼気迫るスプラッター複合神話

          <作品情報> <作品評価> 85点(100点満点) オススメ度 ★★★★☆ <短評> クマガイ ひとえに鬼気迫る怪作ですね。 鑑賞後の感慨は『バクラウ 地図から消された村』と近いものを覚えています。 私が思うに、この作品はマルコ・ドゥトラ監督による創作神話、その体系なんじゃないかと感じています。 『黙示録に基づく7つの寓話』がテーマとのことですが、気付けばクトゥルフ神話が引用されているなど、その解釈はキリスト文脈(=新約聖書)の域を超越したものとなっています。 おそ

          【第37回東京国際映画祭】マルコ・デュトラ監督『死体を埋めろ』鬼気迫るスプラッター複合神話

          【最速レビュー】マティ・ディオップ監督『ダホメ』美術品が喋りだす異色のドキュメンタリー

          <作品情報> <作品評価> 80点(100点満点) オススメ度 ★★★★☆ <短評> クマガイ ドキュメンタリーとして良く出来た作品です。 かつてフランスに侵略され、そして略奪されたダホメ王国の美術品の返還。 それに伴い、揺れ動く国民のアイデンティティを変化を、美術品の視点から描いた一風変わったドキュメンタリー映画です。 見終わったあと、真っ先に思った感想としては「ダホメ」って本当は一体なんだったんだろうという疑問ですね。 ダホメ王国の美術品は全てが異形というか獣

          【最速レビュー】マティ・ディオップ監督『ダホメ』美術品が喋りだす異色のドキュメンタリー

          【第37回東京国際映画祭】片山慎三監督『雨の中の慾情』度肝抜かれるエロティック活劇

          <作品情報> <作品評価> 75点(100点満点) オススメ度 ★★★☆☆ <短評> おいしい水 よくこんなの映像化したなと感心する意欲作です。片山慎三らしいエグい描写が満載です。鈴木清順的なエロティックでカオスな世界観がいいですね。 一方で、二重構造が中盤明かされるのですが、そこにイマイチ切実さが感じられなかったです。虚構で遊んでいるように思え、上滑りしている感は否めません。 成田凌をはじめ演者は好演していますが、それにしてはキレイすぎるような。もっと汚れた役者さ

          【第37回東京国際映画祭】片山慎三監督『雨の中の慾情』度肝抜かれるエロティック活劇

          【第37回東京国際映画祭】ホアン・シー監督『娘の娘』新たな生命の誕生に葛藤する母親の苦悩

          <作品情報> <作品評価> 50点(100点満点) オススメ度 ★★☆☆☆ <短評> クマガイ 「娘の娘」ってそういう意味か…。 ホウ・シャオシェンがプロデューサーで入ってましたが、完全に台湾映画の文脈ですね。 一見すると無意味に見えるショットが後々味に繋がっていることに気付き、映画としての深みを感じさせられました。 「母」として。そして「もう一度母になること」への葛藤。 娘・エマとの対峙。そして「生むかどうか」の決断に揺られる主演のシルヴィア・チャンの演技には、観

          【第37回東京国際映画祭】ホアン・シー監督『娘の娘』新たな生命の誕生に葛藤する母親の苦悩

          【最速レビュー】ペドロ・アルモドバル監督『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』安楽死をめぐる人生対話

          <作品情報> <作品評価> 70点(100点満点) オススメ度 ★★★☆☆ <短評> おいしい水 非常によかったです。アルモドバルはどうもしっくりこない作家なのですが、これまでで一番よかったかもしれません。個人的にはアルモドバルのベストです。 初の英語映画ということで期待半分不安半分でしたが、自分が日本人ということもありそこは違和感なく受け入れられました。 ティルダ・スウィントンとジュリアン・ムーアの演技が実に見事です。どちらも演技巧者ということは周知の事実ですが、

          【最速レビュー】ペドロ・アルモドバル監督『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』安楽死をめぐる人生対話