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ヴィム・ヴェンダース監督『パリ、テキサス』至高のロード・ムービー


<作品情報>

ビム・ベンダース監督が、テキサスの荒野を放浪する男の妻子との再会と別れを、ライ・クーダーの哀愁漂う音楽に乗せて描き、1984年・第37回カンヌ国際映画祭でパルムドールに輝いた傑作ロードムービー。荒野をひとりさまよっていた男が、ガソリンスタンドで気絶した。記憶を失っている男の持ち物を手がかりに連絡を受けたウォルトは、男が4年前に失踪した兄トラヴィスだと確認する。トラヴィスはテキサス州の町パリに所有する土地を目指していた。徐々に記憶を取り戻したトラヴィスは、4年ぶりに再会した幼い息子とともに、妻を探す旅に出る。主人公トラヴィスをハリー・ディーン・スタントン、妻をナスターシャ・キンスキーがそれぞれ好演。俳優サム・シェパードと「ブレスレス」のL・M・キット・カーソンが脚本を手がけた。

1984年製作/146分/G/西ドイツ・フランス合作
原題:Paris, Texas
配給:東北新社
劇場公開日:1985年9月7日(日本初公開)

https://eiga.com/movie/24897/

<作品評価>

80点(100点満点)
オススメ度 ★★★★☆

<短評>

上村
非常に不思議な作品でした。ストーリーラインだけ聞くとシンプルすぎるロードムービーなのですが、微妙に張り詰めた空気感や美しい撮影で見事に描いています。
人を愛するとはどういうことか考えさせられます。一見ハッピーエンドとは程遠いように見えますが、男の顔は不思議と晴れやかなように見えました。
自分本位で愛し愛されるだけでは結婚生活は上手くいかなくて、不条理でも相手に自分を差し出し、自分を殺さなければ上手くいかないものなのかもしれない。
トラヴィスはジェーンと決して直接顔を合わせません。そうしてはいけない、自分の中の何かが壊れるのを恐れているようです。
でも妻や子供を愛している。その不合理さを描いた傑作と言えるでしょう。
余談ではありますが、冒頭に出てくる意地悪な医師はアカデミー外国語映画賞にもノミネートされたドイツ映画『橋』の監督ということです。ヴィム・ヴェンダースのアイデンティティへのこだわりがそういう点でも感じられる一作です。

吉原
ヴィム・ヴェンダース監督作品の中でも特に有名な作品の一つ。4年間会っていなかった父と子が妻を探すため旅に出る(実際、旅に出るのは結構後半)ロードムービー。
ロードムービーではあるが、意外とそう感じなかった。前半は少し退屈に感じたが、息子との関係性が回復したあたりからはすごく面白かった。
おそらく、観た者全ての印象に残るであろうマジックミラー越しの妻との会話がとにかく素晴らしかった。回想映像を流すのではなく、妻との思い出、夫としての未熟さを言葉で伝える。これ以上にないというほど美しいシーンだった。
正直テキサスの壮大な自然よりもマジックミラーの部屋の方が印象に残る映画だった。

<おわりに>

 最近日本で撮った『PERFECT DAYS』も話題になったヴィム・ヴェンダース監督作品です。ロード・ムービーの傑作とされるのも納得の美しく哀しい作品でした。

<私たちについて>

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https://note.com/zenbu_miru/n/nbe93af467f71


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