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ルキノ・ヴィスコンテイ監督『ベニスに死す』美少年に惹かれる老人の苦悩
<作品情報>
巨匠ルキノ・ビスコンティの「山猫」と並ぶ代表作で、ノーベル賞作家トーマス・マンの同名小説を原作に、作曲家グスタフの美少年への心酔と老いの苦しみを描いた。「地獄に堕ちた勇者ども」に続いて撮られた、ドイツ3部作の2作目にあたる。療養のためベネチアにやってきたドイツの老作曲家アシェンバッハは、ホテルで少年タジオを見かける。一目で少年の美しさの虜になり、彼の姿を見つけるだけで喜びを感じ始める。全編に流れるのは、アッシェンバッハのモデルになったマーラーの「交響曲第3、5番」。2011年には製作40周年を記念し、ニュープリント版でリバイバル上映された。
1971年製作/131分/G/イタリア・フランス合作
原題または英題:Morte a Venezia
配給:クレストインターナショナル
劇場公開日:2011年10月1日
その他の公開日:1971年10月2日(日本初公開)
<作品評価>
85点(100点満点)
オススメ度 ★★★★☆
<短評>
おいしい水
全部理解できたかというとそうではないですが、結局冒頭のいちご売りのシーン、「夏は暑いから生果物はすぐ腐る」というのが一つのテーマだろうと思います。
なぜか不機嫌な主人公、そこにビョルン演じる美少年タッジオが現われます。直接話すこともなく見るだけです。しかし向こうからも誘惑するような視線が投げかけられるのです。
一つはおそらく、感覚より理性派の作曲家である主人公が、少年と出会ったことにより知的制御が効かなくなってしまうという皮肉な話だと思いました。
そしてもう一つは失ったものへの悔恨でしょうね。芸術的才能の枯渇、娘の喪失、そして若さの喪失がトリプルで彼にのしかかったのです。
最後世にも哀れな姿で亡くなる作曲家、必死に抗おうともがいた末の死。儚く哀れです。
全編セリフはほとんどなく、カメラ位置や視線で伝えていく表現が見事です。美術や衣装は流石ヴィスコンティです。マーラーを使った音楽によりますます高貴さと憐憫が誘われます。
観る前はもっと同性愛的な描写があって流麗な感じの映画かと思っていたのですが、それもありますが全てに死の匂いがする不気味な作品でした。ヴィスコンティの美学が遺憾なく反映された傑作です。
吉原
教授のタジオに対しての思いは「恋」とは異なるもので、「興味」や「憧れ」はたまたもっと崇高なものを感じるようなものに近いと思いました。そこに現れた美少年はまるで天使。言葉で表すことは難しいが惹かれてしまう美しさ。タジオにはそんな魅力があったのでしょう。
理解は難しいがなかなか興味深い映画でした。
<おわりに>
ヴィスコンティの代表作として有名な作品、美少年を演じたビョルン・アンドレセンは『ミッドサマー』にも登場し話題になりました。
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