サミュエル・マオス監督『レバノン』イスラエルの戦争ドラマ
<作品情報>
<作品評価>
70点(100点満点)
オススメ度 ★★★☆☆
<短評>
おいしい水
イスラエルの戦争映画です。今はきな臭い現状が続いているが、本作は反戦映画であるので観るべきかもしれません。
終始戦車の中だけで展開される一種の密室劇でもあります。アップを多用した緊迫感のある表現がとられています。
冒頭と結末がある場所で交差します。これだけの内容を凝縮し、短い尺で描ききったサミュエル・マオズの力量は相当なものだと思います。優れた脚本と演出の賜物です。
ただ、最後まで誰一人としてまともに戦わないので段々イライラしてくるのも事実です。指揮官は頼りないし部下は従わないですし。それがリアルだと言われればそうなのですが。もう少し戦争映画としての起伏をつけてほしかったですね。
どちらかというとベルリン映画祭っぽい映画です。ただ芸術性、作家性も感じられる作品ではあるので、そういう意味ではヴェネツィア映画祭らしいのかもしれません。
ジャケ写からはドンパチやる戦争映画のような印象を受けますが真逆です。密室で起こる心理劇的な要素が強い一作です。うなだれたひまわりが強い印象をつけます。そんなに好きな作品ではないが上手いとは思います。
吉原
デビッド・エアーの「フューリー」のように、戦場における戦車の車内を題材にしたドラマです。戦車外の景色は車内のスコープから見えるもののみで、ほとんどの場面が車内で展開されます。
評価はあまり高くないようですが、決して悪い作品ではありません。確実に日本版のジャケットのダサさが評価に影響していると思います。映画自体はB級ではなく、ヴェネチアで賞を獲るのも納得できる出来栄えです。
戦場でのドラマである一方、むしろ戦場体験映画に近いのかもしれません。閉鎖された空間で、素早い選択を余儀なくされる兵士たちの精神が参っていく様子が嫌というほど描かれています。
身を守る手段は防弾チョッキだけですが、開放的な外での戦闘とは異なる恐怖が存在します。本作はその部分を非常に上手く描写していました。
「フューリー」の内容をはっきり覚えているわけではありませんが、本作のラストのような展開が途中にあったような気がします。
<おわりに>
地味な存在感ではありますが優れた戦争ドラマです。ジャケットに騙されず鑑賞してみるといいでしょう。
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