テオ・アンゲロプロス監督『旅芸人の記録』ギリシャの歴史を振り返る叙事詩
<作品情報>
<作品評価>
80点(100点満点)
オススメ度 ★★☆☆☆
<短評>
おいしい水
1939年~1952年までの激動のギリシャを神話にあてはめて描いた異色な叙事詩です。1952年から始まり1939年に戻り、最後に再び1939年に戻るという変わった時系列になっています。
アンゲロプロスならではの引きの長回しを用いた静かながら胸を打つドラマでした。計算されつくされたカメラワークが素晴らしいですね。
基本説明はないのでギリシャの近代史についてある程度知っておくか、解説を読みながらでないと理解できないと思います。またアトレウスのギリシャ神話も前提知識として必要かなと。色んな意味でハードルが高い一作です。
アンゲロプロスの美学に貫かれた最高傑作であることは間違いなく、他のアンゲロプロス作品にはない挑戦的な演出も多いです。例えば二か所、登場人物が観客に語り掛けてくるシーンがあります。またアンゲロプロス作品では異例なほど死体が多く出てきます。
完全には理解できなかったですが、ギリシャ神話と近代史を重ね合わせるという手法がうまくいっていますし、静かで残酷な演出は流石アンゲロプロスです。今のところアンゲロプロス作品では一番好きです。
吉原
2枚組で4時間弱の長編映画を2日間かけてなんとか鑑賞しました。テオ・アンゲロプロスの作品を鑑賞するのはこれで6本目になります。この作品はアンゲロプロス作品の中でもレンタルできる中で最古のものなので、画質は非常に悪く、VHSが少し綺麗になった程度のレベルです。そのため、細かい部分まで観ることは難しかったですが、アンゲロプロスが得意とする引きの定点カメラを使った長回しのスタイルが既に確立されていたことに驚きました。
物語は1939年から1952年のギリシャを舞台に、旅芸人たちが各地を巡る内容です。ギリシャの知識がある程度ないと、理解が難しい場面が多くあります。これはアンゲロプロス映画に共通する特徴であり、彼の映画を十分に理解するためには事前の予習が必須だと思います。
また、この映画が神話に準えて作られていると言われると、映るものすべてに表面的な意味以上のものが込められているのではないかと考えてしまいますが、実際のところは不明です。ただ、ギリシャの激動の時代を背景に、各地を移動しながら生活する旅芸人の視点から描くという点には深い意味があると感じましたが、とにかく謎の多い映画でした。
ミュージカル映画ではありませんが、登場人物たちが歌うシーンが多く、全体を通して非常に印象的でした。特に、「ヤクセンボーレ」という言葉とリズムが強く記憶に残っています。また、レストランのような場所で、王政復古派と対立派閥がそれぞれの思想を歌で表現するシーンも非常に印象深かったです。
この作品を他人に勧めたいとは思いませんが、シネフィルであれば一度は観る価値がある作品だと思います。もう少し綺麗な画質で堪能したいので、いつかリマスター版が公開されたら再度観てみたいです。
<おわりに>
ギリシャのテオ・アンゲロプロス監督作品です。ギリシャの歴史を振り返るような壮大な叙事詩として一定の価値ありです。
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