見出し画像

【世界三大映画祭】2024年グランプリ総括


『ANORA アノーラ』
- カンヌ国際映画祭 パルム・ドール

NYでストリップダンサーとして働くアノーラ(マイキー・マディソン)。ある日、ロシアの新興財閥の息子イヴァン(マーク・エイデルシュテイン)と出会い、“契約彼女”から始まった二人は瞬く間に結婚、幸せの絶頂へ。ところが、息子の結婚に反対するイヴァンの両親がNYへ乗り込んできて、大騒動へと発展し──。

監督は、『タンジェリン』(15年)、『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(17年)、『レッド・ロケット』(21年)と、アメリカの性産業従事者やマイノリティをユーモアを交えて描き、世界中で称賛を浴びてきたショーン・ベイカー。

https://fansvoice.jp/2024/10/22/anora-release/

【作品評価】
90点(100点満点)
オススメ度 ★★★★★

【総評】

本作には、期待を超えてくる面白さがありました。
ショット・脚本・演技すべてを取っても、非常にハイレベルな作品だと感じます。
その中でも特筆すべきは脚本の巧さだと思います。
とにかく勢いが尋常じゃない。
随所に仕込まれるギャグ要素には終始捧腹絶倒でした。
とりわけ中盤はもはやシチュエーションコメディですね。
英語映画でここまで笑かされる作品はこれが最初で最後な気がします。

『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』
- ヴェネツィア国際映画祭 金獅子賞

スペインの名匠ペドロ・アルモドバルによる初の長編英語劇で、2024年・第81回ベネチア国際映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞したヒューマンドラマ。ティルダ・スウィントンとジュリアン・ムーアという当代きっての演技派の2人が共演し、病に侵され安楽死を望む女性と、彼女に寄り添う親友のかけがえのない数日間を描く。

重い病に侵されたマーサは、かつての親友イングリッドと再会し、会っていなかった時間を埋めるように、病室で語らう日々を過ごしていた。治療を拒み、自らの意志で安楽死を望むマーサは、人の気配を感じながら最期を迎えたいと願い、“その日”が来る時にはイングリッドに隣の部屋にいてほしいと頼む。悩んだ末にマーサの最期に寄り添うことを決めたイングリッドは、マーサが借りた森の中の小さな家で暮らし始める。マーサはイングリッドに「ドアを開けて寝るけれど、もしドアが閉まっていたら私はもうこの世にはいない」と告げ、マーサが最期を迎えるまでの短い数日間が始まる。

2024年製作/107分/スペイン
原題または英題:La habitacion de al lado
配給:ワーナー・ブラザース映画
劇場公開日:2025年1月31日

https://eiga.com/movie/102147/

【作品評価】
70点(100点満点)
オススメ度 ★★★☆☆

【総評】

非常によかったです。
アルモドバルはどうもしっくりこない作家なのですが、これまでで一番よかったかもしれません。個人的にはアルモドバルのベストです。
初の英語映画ということで期待半分不安半分でしたが、自分が日本人ということもありそこは違和感なく受け入れられました。
ティルダ・スウィントンとジュリアン・ムーアの演技が実に見事です。どちらも演技巧者ということは周知の事実ですが、その期待に十分応える名演を見せていました。
安楽死を望むスウィントン演じるマーサ、戸惑いながらも手助けしようとするイングリッド、両者の心の機微を豊かな色彩とともに描ききっていました。

『ダホメ』
- ベルリン国際映画祭 金熊賞

1900年にフランスに征服されるまで、現在の西アフリカ・ベナン共和国の地に存在したダホメ王国。カンヌ映画祭グランプリを受賞した『アトランティックス』(19)で鮮烈なデビューを飾ったマティ・ディオップの長編第2作『ダホメ』は、2021年11月にかつてフランスがダホメ王国から略奪した美術品の一部がベナンに返還されたプロセスを追うとともに、この返還をどう受けとめるかについて議論するベナンのアボメイ・カラヴィ大学の学生たちをとらえたドキュメンタリー。祖国に戻ることになった彫像のモノローグで映画を進めるなど、フィクション的な演出も盛り込まれている。ベルリン映画祭コンペティションで上映され、最高賞の金熊賞を受賞した。

https://2024.tiff-jp.net/ja/lineup/film/37005WFC02

【作品評価】
80点(100点満点)
オススメ度 ★★★★☆

【総評】

ドキュメンタリーとして良く出来た作品です。
かつてフランスに侵略され、そして略奪されたダホメ王国の美術品の返還。
それに伴い、揺れ動く国民のアイデンティティを変化を、美術品の視点から描いた一風変わったドキュメンタリー映画です。
現代人たちが語る有形、そして無形のアイデンティティの議論がありましたが、これらも踏まえると「そもそもどのように在ったのか」と考えさせられるものがあります。
歴史は未完成。今後も続き、変化していく。
過去の産物は、無限の象徴。
69分という短い尺ながらも、とてつもない情報量が詰まっている、非常に考察のしがいがある作品だと思います。

<私たちについて>


映画好き4人による「全部みる」プロジェクトは、映画の可能性を信じ、何かを達成したいという思いで集まったものです。詳しくは↓


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集