【第37回東京国際映画祭】フィリップ・ユン監督『お父さん』家族を息子に殺された父の葛藤
<作品情報>
<作品評価>
75点(100点満点)
オススメ度 ★★★☆☆
<短評>
おいしい水
非常に惜しい作品でした。演出がやや冗長で、上映時間よりも長く感じました。時系列を操作する手法も効果的とは思えません。主演のラウ・チンワンは素晴らしいですね。抑制された演技で父親役を上手く演じていました。
加害者の父、そして被害者の夫という難しい立場で苦悩する男を丁寧な心理描写で語っていきます。その手腕は流石フィリップ・ユン。
なのですがその苦悩を引き延ばしただけに見える展開が冗長です。同じところをぐるぐる回ってるような印象を受けました。終わりのない苦悩を描きたいという意図は分かるのですが引き延ばしすぎかなと思います。
時系列操作はまあ分かりますが激しすぎて混乱します。今どの時点の誰の話なんだっけ?というのが分かりづらい箇所が散見されました。
全体としていい映画ではあります。そして男優賞有力作品であることは間違いないでしょう。しかし欠点も多々ある作品に思えます。非常に惜しい。
クマガイ
本当に心を抉られる力作。
母と妹を殺してしまった息子と、遺された父親がどう向き合うかを描いた作品です。
登場人物ごとにパートが分かれており、基本的に父と息子の2人の視点から事件とその後を追うストーリー構成になっています。
時系列の交差が見事で、実際にその場にいたかのような臨場感を追憶することができました。
そして心理描写が非常に丁寧です。
父、そして息子。それぞれの思いがこれでもかというくらい丁寧に描写されており、どちらの視点にも感情移入してしまいました。
私事ですが、自分も全く同じ家族構成で、とりわけ息子視点で物語に没入してしまったと感じます。
自分もこういう道を選んでしまったのかもしれないというifと、今ある幸せを噛み締めたいという想いが強く生まれた作品でした。
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