見出し画像

黒澤明監督『生きる』君たちはどう生きるか



<作品情報>

市役所の市民課長・渡辺は30年間無欠勤、事なかれ主義の模範的役人。ある日、渡辺は自分が胃癌で余命幾ばくもないと知る。絶望に陥った渡辺は、歓楽街をさまよい飲み慣れない酒を飲む。自分の人生とは一体何だったのか……。渡辺は人間が本当に生きるということの意味を考え始め、そして、初めて真剣に役所の申請書類に目を通す。そこで彼の目に留まったのが市民から出されていた下水溜まりの埋め立てと小公園建設に関する陳情書だった。この作品は非人間的な官僚主義を痛烈に批判するとともに、人間が生きることについての哲学をも示した名作である。

1952年製作/143分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1952年10月9日

https://eiga.com/movie/4446/

<作品評価>

75点(100点満点)
オススメ度 ★★★★☆

<短評>

おいしい水
まんまと泣かされましたが、やや感傷的すぎるのが気になりました。志村喬の芝居も素晴らしいですが作り込みすぎな気がします。
「役所では何もしないのが出生の道」というのが痛烈です。役所に限らず日本社会ってそういうものな気がします。
一番理解していないのが身内、というのは小津の『東京物語』を彷彿とさせます。やっぱり家族は近いが故に肝心なことは言えないのかもしれないですね。
中盤の展開は驚きました。ややトリッキーな構成で、そこを上手く魅せるのが流石黒澤明でした。
セリフではなく志村喬のアップに黒澤は賭けたのです。それは正解だったと思います。ヤクザ相手になんとも言えない表情を向けるシーンは泣きそうになりました。
ただ、肝心の部分以外でも常に志村喬は泣きそうな、弱い表情なのでイマイチメリハリがないというか。まあ人間はそういうもの、といえばそうなのかもですが…

吉原
自身の癌を知り、ただただ仕事のために生きてきた自分を省みて自分の生きる意味を公園の整備に向けるという物語。
所謂、お役所的な仕事に対する批判が含まれておりどんな仕事にもやはり人間味が必要だと思いました。
もはや死んだも同然の渡邊を演じた志村喬さんの演技は本当にすごいです。「その」や「つまり」の言い回しはもはや日常生活にカメラを向けたかのようで非常にリアルでした。本作が公開されて70年経った2022年にイギリスでリメイク版が制作されています。オリジナル140分に対し102分とかなり短くなり、重要な部分はしっかりと残してあるので、オリジナルに対するリスペクトを感じる作品ですが、やはりオリジナルには敵わないので先に鑑賞するならオリジナルをお勧めしたいです。

<おわりに>

 最近リメイクもされた黒澤明の名作です。ややトリッキーな構成ながら生きることを正面から考えさせられる作品になっています。

<私たちについて>

 映画好き4人による「全部みる」プロジェクトは、映画の可能性を信じ、何かを達成したいという思いで集まったものです。詳しくは↓


いいなと思ったら応援しよう!