【第25回東京フィルメックス】コンペティション部門総括&受賞予想
コンペティション部門総括
『サントーシュ』 70点 ★★★☆☆
【総評】
軽んじられる女性、カースト制度、警察の腐敗…インドの様々な社会問題に切り込んだ意欲作です。ではありますが一つ一つが長く不要なシーンもみられやや冗長に思えました。
もちろん扱われている問題は根深く重要です。不可触民である少女の殺害事件をきっかけにしたサスペンス仕立てになっています。そこからインドの様々な社会問題が立ち現れてきます。
『空室の女』 50点 ★★☆☆☆
【総評】
ウォン・カーウァイを彷彿とさせる煌びやかな色彩と、さながら隠し撮りをしているようなカメラのショットの数々は目を見張るものがあります。
一つ一つのカットはクオリティが高いです。きめ細やかな演出が素晴らしく、平行移動のカメラなど印象的なショットが多かったです。
一方で物語として陰鬱すぎて98分なのにとてつもなく長く感じました。
『ハッピー・ホリデーズ』 40点 ★★☆☆☆
【総評】
イスラエルのヤバいところを詰め込んだような物語は興味深いものの、エピソードのぶつ切り感は否めず映画として上手いとは思えなかったです。
いくつかの章に分けて展開されており、物語を多角的に捉えることを目的としているのでしょう。それは分かるものの、この構成が効果的かというと微妙だと思います。かえって説明不足な部分が目立ち、「結局これってどういうこと?」と疑問に思う箇所が散見されました。
『女の子は女の子』 60点 ★★★☆☆
【総評】
良い映画だとは思います。優等生少女の恋、そこに母が介入してくるという意外な展開は面白いですね。お母さんの色気が凄くてクラクラしました。
物語自体は良いのですが、テンポが少し悪いのが終始気になりました。さっさと次に進んでくれればいいものをもったいぶってダラダラ撮っている箇所が散見されたように思います。
『黙視録』 80点 ★★★☆☆
【総評】
これはなかなか好みの作品でした。『幻土』同様に難解な物語が賛否分かれるあたりだと思いますが、映像センスと静謐なストーリーテリングに魅了されました。
思うにこの監督は物語にはあまり興味がないのだろうと思います。本作においては監視カメラ、スマホのカメラなどを用いて「見る/見られる」構造の再構築をしたいのだと思いました。
『家族の略歴』 80点 ★★★★☆
【総評】
これは面白かった!闖入者ものの新たな秀作と言っていいでしょう。決まった構図の画面を意識しすぎな部分はありますが、映像にこだわりを感じるなかなかの良作です。
『白衣蒼狗』 55点 ★★☆☆☆
【総評】
狭い画角、ほとんど動かないカメラ、そして基本的に画面が暗く、強い閉塞感が印象的です。
初めは見づらさを感じましたが、暗闇に目が慣れるように画面内の出来事をを理解できるシーンが多く、自然と引き込まれていきました。
場面ごとに絵画のような美しさがあり、鑑賞後もその一瞬一瞬が心に残ります。
『ソクチョの冬』 80点 ★★★☆☆
【総評】
よかった!フランス人の父を持つ女性が自分のアイデンティティーと向き合っていきます。ソクチョの風景も美しく捉えられていました。
優しく上品な語り口で紡がれていく叙情的な物語に惹かれるものがありました。長編デビュー作とは思えない落ち着いたストーリーテリングが魅力的です。
『四月』 90点 ★★★★☆
【総評】
いやぁ、本当に素晴らしい作品でしたね。
ヴェネツィア国際映画祭でも銀獅子賞を受賞しているなど、鳴り物入りの作品でしたが期待を超えてくる面白さがありました。
規格外という言葉がこれほど似合う作品もないでしょう。観ている間はかなり苦痛なのですが、後からじわじわと凄さが分かってくる映画です。
全体に散りばめられた死の匂い。産婦人科医という生命の誕生を手助けするニナの話であるにも関わらずあちこちに死が迫っています。挟み込まれる謎の人物のシーンが意味深です。
『ベトとナム』40点 ★★☆☆☆
【総評】
流石フィルメックス出品作だけあって映像は美しいです。しかし物語があまりにも観念的で刺激に欠けます。ベトナム戦争のもたらした悲劇、クィアとして生きることの難しさなどテーマは至極真っ当で重要なものの、これではあまりにも観客を無視しています。
受賞予想
最優秀作品賞
『四月』(おいしい水)
『四月』(クマガイ)
審査員特別賞
『黙視録』『女の子は女の子』(おいしい水)
『黙視録』『ソクチョの冬』(クマガイ)
観客賞
『未完成の映画』/『女の子は女の子』(おいしい水)
『未完成の映画』/『四月』(クマガイ)
学生審査員賞
『ソクチョの冬』(おいしい水)
『ソクチョの冬』(クマガイ)
スペシャル・メンション
『家族の略歴』(おいしい水)
『空室の女』(クマガイ)
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