クリント・イーストウッド監督『許されざる者』リアルな現代西部劇
<作品情報>
<作品評価>
80点(100点満点)
オススメ度 ★★★★☆
<短評>
おいしい水
今や押しも押されぬ巨匠となったクリント・イーストウッド監督作品です。西部劇としては『シマロン』『ダンス・ウィズ・ウルブス』とこの作品の三作品しか作品賞を獲ったことがありません。
今まで自身が演じてきたような西部劇のいわゆる型を否定するかのような演出が印象的でした。雨に濡れれば銃は暴発しますし、人を殺して平気なはずはないのです。西部劇のリアルを追及しながらも見事な脚本によってあくまで淡々と進めていく手腕は流石イーストウッドです。
誰も悪くないし誰もが悪い。誰もが「許されざる者」であるのです。正義と信じれば人間はどんな酷いこともできるという恐ろしさも描く傑作でした。
吉原
荒くれ者に顔を切り裂かれた娼婦の無念を晴らすために、伝説のアウトローが復讐にやってくるという物語。2013年に日本でリメイク版も制作されている作品です。
物語自体は、賞金稼ぎや悪に染まった保安官や町の住人、女が受けた屈辱への敵討など西部劇にありがちな要素で構成されていることもあり、あまり新鮮さは感じませんでしたが、映像がとにかく美しいところに魅力を感じました。
夕焼けをバックに2頭の馬が並走して歩くシーンや遠くから馬に乗ってくる人物のシーンなど引で撮られたシーンも素晴らしいですが、目の前にいる人物を映し出すシーンも考えられて撮られています。顔を傷つけられた娼婦とイーストウッド演じるマニーが初対面するシーンは、映像的な見せ場では決してないはずなのに不思議と魅力を感じてしまいました
また、主人公が過去に女子供でも問答無用に殺していたアウトローという設定が良かったです。妻との出会いで改心したことに加えて、年を取ったことにより落ち着きを得たマニーの哀愁漂う雰囲気が最高に渋くてクールでしら。この当時、イーストウッドは63歳。脂も乗り切って元来の渋さがより顕著になっていた時期。ラストの酒場でのダークヒーロー感はこの当時のイーストウッドにしか出せないものだったでしょう。
文字でしか登場しないマニーの妻にだけが分かっていた彼の魅力を、観客は映画を観ることによって気づくことができる演出になっているところもまた好きでした。本当に何から何までカッコ良すぎます!
<おわりに>
監督としてのイーストウッドの手腕、そして俳優としてのかっこよさにも酔いしれる流石の一作です。
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