【最速レビュー】マティ・ディオップ監督『ダホメ』美術品が喋りだす異色のドキュメンタリー
<作品情報>
<作品評価>
80点(100点満点)
オススメ度 ★★★★☆
<短評>
クマガイ
ドキュメンタリーとして良く出来た作品です。
かつてフランスに侵略され、そして略奪されたダホメ王国の美術品の返還。
それに伴い、揺れ動く国民のアイデンティティを変化を、美術品の視点から描いた一風変わったドキュメンタリー映画です。
見終わったあと、真っ先に思った感想としては「ダホメ」って本当は一体なんだったんだろうという疑問ですね。
ダホメ王国の美術品は全てが異形というか獣の形をした人形などで実体が掴めず、今を生きるダホメ人(ベナン人)も西洋風のファッションで当たり前のようにスマートフォンをいじっている。
美術品であるナンバー26が語る「アイデンティティを失う前のダホメ」が全く見えないのは特徴的でした。
現代人たちが語る有形、そして無形のアイデンティティの議論がありましたが、これらも踏まえると「そもそもどのように在ったのか」と考えさせられるものがあります。
そして中盤でセネガル人の女性がダホメの歴史を語るシーンも印象深いです。
実は現代を生きるベナン人よりも、セネガル人女性の方が明らかに的を得た、より「ダホメ」の本質に近付いているように感じました。
(監督のマティ・ディオプがセネガル系フランス人なのも考えさせられる要素のひとつです)。
歴史は未完成。今後も続き、変化していく。
過去の産物は、無限の象徴。
69分という短い尺ながらも、とてつもない情報量が詰まっている、非常に考察のしがいがある作品だと思います。
<おわりに>
短い尺ながら様々なことが織り込まれたドキュメンタリーです。公開されるでしょうか?この機会に観ることができてよかったです。
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