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マイク・リー監督『ヴェラ・ドレイク』ある主婦の秘密と嘘



<作品情報>

「秘密と嘘」のマイク・リー監督がまたもオスカー監督賞&脚本賞にノミネート。タイトルロールを演じたイメルダ・スタウントンが同主演女優賞にノミネート、シカゴ批評家賞等数々の映画賞を受賞した。1950年のロンドン。家族を愛する献身的な主婦ヴェラは非合法と知りながら、望まない妊娠をした女性たちの堕胎の手伝いをしていたが、通報されて裁判にかけられることになってしまう。

2004年製作/125分/PG12/イギリス・フランス・ニュージーランド合作
原題:Vera Drake
配給:東京テアトル
劇場公開日:2005年7月9日

https://eiga.com/movie/1731/

<作品評価>

75点(100点満点)
オススメ度 ★★★★☆

<短評>

おいしい水
マイク・リーはどうしても合わないんですよね。『ハリー・ポッター』アンブリッジ先生役で知られるイメルダ・スタウントンの演技は素晴らしかったですが、いささかさらっと流しすぎてこちらにあまり伝わってきませんでした。
もちろん堕胎幇助というテーマは重要なものですし、現在でも問題になることでもあります。金獅子賞にこれを選ぶという意図は理解できるのですが、マイク・リー監督の演出がどうもハマっていない気がします。
台本を用いず即興で映画を作っていくというのがマイク・リーのいつもの手法ですが、流石に本作はある程度台本はあったはずです。それにしてもさらっとしすぎています。イメルダ・スタウントンの熱演は賞賛すべきだが、彼女がなんとなく浮いてしまっているように感じたのです。
非常によく出来た作品なのは間違いないですが、マイク・リーの演出、演者の演技というのが乖離しているように思えます。テンションが全く違うというか。
重要なテーマを慎重に扱っているし、非常に誠実な映画だとは思います。しかしこちらに迫ってくるものがあまり感じられませんでした。これはこれで評価する人はたくさんいると思いますが、やはり個人的にマイク・リーは合わないです。

吉原
人工妊娠中絶が禁止されていた時代に、20年以上にわたり女性たちを助けた主婦の物語です。Filmarksでの投稿数が1000件未満であることから、あまりメジャーな作品ではないのかもしれませんが、非常に素晴らしい作品でした。
家族に対して献身的で、誰からも好かれる女性であるヴェラを演じるイメルダ・スタウントンの演技が非常に素晴らしく、犯罪者の役でありながらも、彼女に同情してしまう自分がいました。
同様のテーマを扱った作品「あのこと」については、「軽率に中絶を行なうことへの批判」として受け取りましたが、本作のメッセージは、むしろ中絶の選択肢がない世の中への批判であると感じました。主人公が中絶を「女性を助けること」として捉え、その信念を決して曲げなかったことがその理由かもしれません。
スタウントンの演技が本当に素晴らしかったのですが、ヴェラの娘の婚約者を演じたエディ・マーサンもまた、素晴らしい役回りを演じていたことを付け加えたいと思います。

<おわりに>

 独特の演出手法で有名なマイク・リー監督、女性の堕胎という問題を描いた重要作です。イメルダ・スタウントンの演技も素晴らしいですね。

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