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クロード・シャブロル監督『いとこ同志』ガリ勉vs放蕩人


<作品情報>

田舎から受験のために上京した純情な青年と、都会育ちの青年を主人公に、恋愛をめぐって傷つきやすい青年期の心理を描いたドラマ。脚本・監督ともにフランス映画界の新進クロード・シャブロル。撮影は「恋人たち」のアンリ・ドカエ、音楽はポール・ミスラキが担当。出演は「殺意の瞬間(1956)」のジェラール・ブラン、新人ジャン・クロード・ブリアリ、映画初出演のジュリエット・メニエル、クロード・セルヴァル、ミシェル・メリッツ等。製作クロード・シャブロル。

1959年製作/フランス
原題:Les Cousins
配給:東和
劇場公開日:1959年10月10日

https://eiga.com/movie/42454/

<作品評価>

75点(100点満点)
オススメ度 ★★☆☆☆

<短評>

上村
なかなか強烈な作品でした。タイトル通りいとこ同士の話です。田舎から出てきたシャルル、パリに住む遊び人ポールはどちらも法学の学士を目指していますが…
こういうことってあるよなぁ。自分に重ね合わせてみてしまいました。僕はどちらかというとマメに勉強するというより、一気に知識を取り込んで吐き出すタイプ。なのでポールの方に近いでしょうか。
女性を介した取り合いよりも個人的には本屋の店主との会話が興味深かったです。「まだ若いんだから」と言われても本人にとっては屈辱でしかない。若いときはその若さの特権に気づけないものですよね。

北林
僕にとってトラウマ映画でした。双子としての経験が、そのテーマと深く結びついていたからです。
この映画は、都会の冷たさと人間関係の疎外感も核に描かれています。
シャルルとポール、そしてその周りの友人たちの人間関係は、外から見れば明るく楽しそうに見えるものの、心の距離が感じられます。
特に、友人のフィリップが気になる女性、フランソワーズが他の男性と親しげにするのを見て嫉妬心に気が狂い投身自殺を計るエピソードが出てきます。これはフィリップにとっては大変大きな問題です。しかし、この映画ではシャルルと友人との会話で2,3言セリフで出てくるのみです。そんなことより、シャルルは待ち合わせにやってこないフロランスのことで頭がいっぱいです。この場面は、周囲の人々の反応の薄さや冷たさが、色濃く描かれていると思いました。
さらに踏み込むと、この映画、最後の展開が怒涛すぎて、フィリップの自殺の印象を吹き飛ばしてしまっています。つまり、シャルルとポールふたりの結末も、映画として描いていなかったら、一時的な話題になる程度ですぐ忘れ去られる出来事でしかない、とでも言っているかのようなです。それも何とも怖い…。
自然世界からかけ離れていく、我々の「普通の、自然の感覚」が切り離され、「都会的、人間中心的な感覚」へと進化(あるいは退化?)している事実を容赦なく突きつけてきます。自分自身の感覚の歪みを再認識させられる、そう感じる映画として『いとこ同志』は深いインパクトを残したように感じます。

吉原
自分の経験もあってか非常に共感できる作品でした。真面目ゆえに効率が悪く不器用な主人公と、何事も卒なつこなし立ち回りが上手い従兄弟。僕は前者寄りの人間なので、主人公の気持ちが痛いほど伝わってくるようでした。努力家が報われないってエンタメとしてはらしくないですが、現実的ではありますよね…
主人公のような立ち回りを現在進行形でしている僕からすると、現実を叩きつけられているような気がして嫌な気持ちしかしませんが、作中の描写や登場人物同士の掛け合いは非常に面白いです。恋愛に不慣れな大学生の青春映画として観ても面白いのではないでしょうか。

<おわりに>

 一見地味な作品ですが、アツいレビューが集まりました!みなさんはどっち派でしょうか?

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