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ピエル・パオロ・パゾリーニ監督『カンタベリー物語』ブラックユーモア満載の奇想天外物語
<作品情報>
イギリスの作家ジェフリー・チョーサーの『カンタベリー物語』の映画化。一九七二年ベルリン映画祭金熊賞を受賞。なお、パゾリーニ監督は次回作として『千夜一夜物語』を計画しており、これが完成すれば、世界艶笑三大文学の映画化を完成したことになる。製作はアルベルト・グリマルディ、監督・脚本は「デカメロン」のピエル・パオロ・パゾリーニ、撮影はトニーノ・デリ・コリ、音楽はエンニオ・モリコーネ、美術はダンテ・フェレッティが各々担当。出演はヒュー・グリフィス、ニネット・ダボリ、フランコ・チッティ、ジョゼフィン・チャップリン、ラウラ・ベッティなど。
1972年製作/イタリア
原題:The Canterbury Tales
配給:ユナイト
劇場公開日:1973年2月17日
<作品評価>
60点(100点満点)
オススメ度 ★★☆☆☆
<短評>
おいしい水
『デカメロン』から続く「生の三部作」の二作目です。原作の24話の中から『貿易商人の話』『托鉢僧の話』『料理人の話』『粉屋の話』『バースの女房の話』『親分の話』『免罪符売りの話』『ケジの話』の8話を映像化しています。
パゾリーニらしいブラックユーモア満載のオムニバスです。一つ一つが繋がっていそうでそうでない。
パゾリーニは好きな作家。なのですが、本作はあまり楽しめなかったのは何故なんでしょう。オムニバスであるが故に詰め込みすぎな感じはしました。「今何の話だったっけ?」と混乱します。
僕の頭が追いつかないだけかもしれないですが、パゾリーニの最高作ではないと思います。ただ、最後の悪魔のメイクや造形は面白く、映し方もパゾリーニらしくてよかったです。
裸、セックス、下ネタに溢れた攻めたブラックコメディ映画であることは間違いないです。それを考えるとベルリン映画祭らしいかもしれません。
吉原
「お下劣」という言葉はこの作品のためにあるんじゃないかと思うほど、下品な作品。しかし、それが人間の本性なんじゃないかと思うと恐ろしくもあります。
数分から数十分の作品が寄せ集められたオムニバス形式の作品で、それぞれが繋がっている訳でもないし、テーマに一貫性があるわけでもない。劇中の言葉を引用すると「語る楽しみのために書かれた物語」とはまさにこの作品のことだなと思います。
どのエピソードも印象的ですが、チャップリンみたいな男が登場する話と窓際に並ぶ二つの尻、そしてラストの地獄の描写が非常に印象的でした。特に後者はその衝撃故に開いた口が塞がりませんでした。
裸やセックスは当たり前のように無修正で登場し、内容も倫理や宗教などお構いなしと言わんばかりの自由奔放な作品にも関わらず、ベルリンで金熊賞を受賞していることは非常に興味深いです。世界三大映画祭の内で、ベルリンだけは作品の傾向が掴みにくいと思っていましたが、本作を鑑賞したことでより訳がわからなくなってしまいました。
<おわりに>
人を食ったような作風のパゾリーニらしい作品です。ブラックな笑いと赤裸々な描写が満載ですね。
<私たちについて>
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