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マイケル・ラドフォード監督『イル・ポスティーノ』配達人の恋と友情
<作品情報>
南イタリアの小さな島を舞台に、純朴な青年が島を訪れた詩人との交流を通して成長していく姿を描いたヒューマンドラマ。実在したチリの詩人パブロ・ネルーダが祖国を追われた際にカプリ島へ身を寄せた史実をもとにしたアントニオ・スカルメタの小説を映画化。
ナポリ沖合の小島に、祖国を追放された詩人で外交官のパブロ・ネルーダが滞在することに。世界中から届くファンレターを配達するため、島の青年マリオが臨時配達人として雇われる。美しい砂浜でネルーダは自作の詩をマリオに聞かせ、詩の隠喩について語る。マリオはネルーダの温かい人柄に惹かれ、2人は友情を育んでいく。やがてマリオは島の食堂で働くベアトリーチェに恋をする。
マリオ役のマッシモ・トロイージは心臓に病を抱えていた中で撮影に参加し、撮影終了からわずか12時間後に41歳の若さで夭逝。これが遺作となった。トロイージは脚本にも参加しており、死後、本作でアカデミー主演男優賞と脚色賞にノミネートされた。アカデミー賞ではそのほか、作品賞、監督賞、作曲賞にもノミネートされ、作曲賞を受賞している。ネルーダ役に「ニュー・シネマ・パラダイス」のフィリップ・ノワレ。2024年11月、製作30周年とパブロ・ネルーダ生誕120周年を記念して4Kデジタルリマスター版でリバイバル公開。
1994年製作/107分/G/イタリア・フランス合作
原題または英題:Il postino
配給:セテラ・インターナショナル
劇場公開日:2024年11月8日
その他の公開日:1996年5月18日(日本初公開)
<作品評価>
75点(100点満点)
オススメ度 ★★★☆☆
<短評>
おいしい水
配達員を演じたイタリアの喜劇俳優マッシモ・トロイージは重い心臓病を患っており、撮影終了12時間後に41歳の若さで亡くなったといいます。
良くも悪くもミラマックスらしい作品という印象です。どういうことかというとミラマックスが配給を手掛けた作品は今のところ全部「いい映画、でも凄い映画ではない」という感想で共通しています。
無教養な配達員がネルーダとの交流を通して詩作に励み、女性との恋も成就させ、共産党員としても一歩踏み出すという心温まる作品です。最後は少し意外ではありましたが、「郷愁」で終わらせる安全な着地でした。
演技、演出、撮影と一定以上の水準にあるレベルの高い作品ではあります。
ただそれ以上のものが感じられず「いい映画だとは思うよ」という感想しか言えないですね。
吉原
愛と隠喩が交錯する映画。主演の俳優が撮影直後に亡くなったという事実が、まるでその魂が映画に込められているかのように感じられます。日本語字幕ではおそらく完全に拾いきれていない意味合いが含まれているので、原語で観ることができる人々は幸せだろうと思います。激動の時代を迎えたイタリアの人々の心情を、音楽と美しい風景を通じて伝える、そんな映画でした。
若き郵便配達人と偉大な詩人。この二人の言葉を紡ぐ者たちは、さまざまな詩を残しますが、一番的を射ているのは、郵便配達人が恋をした女性の叔母が語った言葉でした。言葉はどんな感情でも表現できます。愛も、怒りも、悲しみも。しかしそのために、「言葉は最も厄介なもの」とも言えるのです。ある意味で、主人公は言葉に殺されたのかもしれません。
劇中、何度も登場する浜辺を歩く詩人。彼が紡いだ美しい言葉とともに、彼の回想が静かに幕を閉じるシーンが非常に印象的でした。
<おわりに>
アカデミー賞でも評価された感動作です。リマスター版が公開され、再び話題となりました。
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