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【第37回東京国際映画祭】セルジオ・グラシアーノ監督『英国人の手紙』継承されていくアイデンティティ



<作品情報>

詩人で小説家のルイ・ドゥアルテ・デ・カルヴァーリョは、父がアフリカ南部のナミブ砂漠に残した「英国人の手紙」と呼ばれる文書が1923年に起きた事件の謎を解明する鍵になることを知り、その文書を探す。その探索の過程を通し、ポルトガルの植民地だったアンゴラを舞台に、19世紀末から20世紀初頭にかけて展開する壮大な物語が描かれる。ポルトガル生まれながら幼少期にアンゴラに移住し、アンゴラを代表する文学者となったルイ・ドゥアルテ・デ・カルヴァーリョの著作を原作としてアンゴラ映画を監督した実績のあるセルジオ・グラシアーノが映画化した作品。オリヴェイラ作品のプロデューサーとして知られるパウロ・ブランコがプロデュースを担当した。

https://2024.tiff-jp.net/ja/lineup/film/37002CMP06

<作品評価>

90点(100点満点)
オススメ度 ★★★★★

<短評>

クマガイ
今回の東京国際映画祭屈指の力作です。
父親がアフリカのアンゴラに遺した手紙を探し、その受け手のルーツを探すという物語。
アンゴラの政治情勢、そして広大なナミブ砂漠を背景に、関係者たちの"適応"の様子が描かれていきます。

この映画の真のテーマは"継承"です。
結論から言ってしまうと、手紙の内容は心底どうでもいいのです。
アンゴラに残った者、そして立ち去った者。
そして"祖国"とは。アイデンティティーとは一体どこにあるのか。
その継承のバトンを、物語の登場人物、そして映画の受け手である観客たちに向けて紡がれていく。
その過程こそがこの映画の真髄です。

この映画では何度も「もう作品が終わってしまうのかな」と思う瞬間が何度もありました。
何度もその波が繰り返され、幾度となく期待を超えた継承が繰り返されていく様には圧倒させられました。
非常に実りのある136分がここに詰まっていました。

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