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北野武監督『HANA-BI』孤独な刑事の生きる道



<作品情報>

北野武監督が孤独な刑事の生きざまを描き、1997年・第54回ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した人間ドラマ。凶悪犯の自宅を張り込み中の刑事・西は、親友で同僚の堀部に張り込みを代わってもらい、不治の病で入院中の妻・美幸を見舞いに向かう。しかしその間に堀部は犯人に撃たれ、命は取り留めたものの下半身不随となる。その後、西は犯人を追い詰めるが、自身の失態から後輩が命を落としてしまう。罪悪感にさいなまれ辞職した西は、車椅子での生活を送る堀部に画材道具を贈るため、そして余命わずかな美幸との生活資金を工面するため、ヤクザから金を借りるが……。北野監督がビートたけし名義で主演も務め、岸本加世子、大杉漣、寺島進が共演。

1997年製作/103分/日本
配給:オフィス北野、日本ヘラルド映画
劇場公開日:1998年1月24日

https://eiga.com/movie/38841/

<作品評価>

80点(100点満点)
オススメ度 ★★★☆☆

<短評>

おいしい水
掛け値なしの傑作です。北野武は天才ですね。キレのある編集、言葉に頼らない画面作り、突然な暴力…どれをとっても隙のない完璧な作品です。
妻が言葉を発するのは最後だけ、たけし扮する刑事もほとんど言葉を発さないのです。それでいて二人の深い愛を示すのが秀逸です。
叙情的でありながらやはりどこか乾いていて、どうにもならない人生と少しの愛が描写されます。こちらの死生観が揺さぶられるような作品です。
久石譲の音楽も叙情的でありながらどこか滑稽さもあるような旋律が素晴らしいです。

吉原
私は、たけし映画があまり好きではないと思ってきましたが、この作品は非常に素晴らしかったです。たけし映画の特徴である「キタノブルー」をふんだんに使用しており、海や雪の景色など、とにかく映像が美しいです。何度も言いますが、これが芸人の撮った映画だとは到底思えません。また、大杉漣さんが演じる堀部が描く絵も、とても素晴らしいものでした。
一見、警察とヤクザの対立を描いているので「その男、凶暴につき」を連想させる構図ではありますが、こちらの方が遥かに芸術性が高く、まるでフランスやイタリアの映画のように感じました。たけしさん演じる西と、その妻の描写が非常に微笑ましい恋愛描写だからか、よりその雰囲気を強く感じたのかもしれません。ヴェネチアで賞を取ったのも、この映画を観て納得がいきました。
ラストシーンも、今まで観たたけし映画の中で最も素晴らしいと感じました。「ソナチネ」を超えていると思います。

<おわりに>

 北野武監督の代表作です。非常に美しく孤独な魂を描いています。

<私たちについて>

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