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【森は語る#4】 森林の地下ネットワーク—菌根菌がつなぐ見えない世界
はじめに:森の下に広がる知られざる世界
表紙の木の根っこの写真は、約10年前に屋久島へ旅行したときのものです。倒木に絡みつく比較的、新しそうな木。生命力と、美しさに驚きました。
さて、私たちの目には見えない地中では、驚くべきことが起こっているようです。樹木たちは、「菌根菌(きんこんきん、Mycorrhizal Fungi)」という微生物を介して、地下で密接につながり、互いに助け合って生きているらしいのです。
(地球上の菌って、数えたらどのくらいの数になるんだろう。人間の考えた単位で表現可能なのか。地下には宇宙的な無限な世界が広がっているのか‥)
スザンヌ・シマード博士は、この地下のネットワークを「ウッド・ワイド・ウェブ(Wood Wide Web)」と呼びました。これは、まるでインターネットのように、木々が情報や栄養をやり取りするシステムです。
どうやら、地下にはわたし達が慈悲や愛と呼んでいるような、思いやりの心が広がっているようです。
前回の記事はこちらから。どうぞご覧ください。
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1. 菌根菌とは?
菌根菌とは、樹木の根と共生する菌類のことで、森林の土壌に広く分布しています。菌根菌は木々と共生し、以下のような役割を果たします。
栄養の交換:木々は光合成で作った炭素(糖)を菌根菌に提供し、代わりに菌根菌は土壌から吸収した水分やミネラル(リンや窒素など)を木に供給する。
病害に対する防御:菌根菌ネットワークを通じて、害虫や病原菌の攻撃を察知した木が周囲の木に警告を送ることで、他の木も防御態勢を整える。
森林の回復力を高める:乾燥や病気に弱い木々が、健康な木々から栄養を受け取ることで、森林全体の耐久力が向上する。
このように、菌根菌は森の木々を支える「地下の生命線」となっているのです。
2. 菌根菌の種類と特徴
菌根菌にはいくつかの種類があり、それぞれ異なる樹木と共生しながら、森林の生態系を維持しています。
アーバスキュラー菌根菌(AM菌根菌):ほぼすべての陸上植物と共生し、根の内部に入り込み、栄養交換を行う。
外菌根菌(EM菌根菌):主にマツやブナなどの樹木と共生し、根の外側を菌糸が覆うことで栄養を供給。
エリコイド菌根菌:ツツジ科やブルーベリーなどの低木と共生し、貧栄養な環境に適応。
ラン菌根菌:ラン科の植物と共生し、種子の発芽に必要な栄養を供給。
これらの菌根菌は、土壌環境や樹木の種類に応じて役割を果たしながら、森林の健康を支えています。
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3. 菌根菌ネットワークの働き
菌根菌ネットワークは、森林における「見えない生命のインフラ」として機能し、木々の生存に重要な役割を果たします。
栄養の供給と共有:日陰で十分に光合成できない若木は、菌根菌ネットワークを介して大きな木から栄養を受け取る。
情報の伝達:害虫や病気が発生すると、その情報が菌根菌ネットワークを通じて他の木々に伝わり、防御態勢を整える。
生態系の維持:異なる樹種間でも栄養がやり取りされることで、森全体の生物多様性が守られる。
このシステムによって、森林は安定し、持続可能な環境を維持できるのです。
4. 森林伐採がもたらす地下ネットワークへの影響
森林伐採が進むと、この地下ネットワークが破壊され、森林の生態系に深刻な影響を及ぼします。
栄養供給の停止:菌根菌ネットワークが断ち切られることで、若木への栄養供給が途絶え、成長が妨げられる。
炭素の貯蔵機能の低下:森林は大気中の二酸化炭素を吸収する役割を持つが、ネットワークが崩れることで炭素固定能力が低下。
生態系の脆弱化:ネットワークが破壊されると、森林は病気や気候変動に対して脆弱になり、回復しづらくなる。
森林を守るためには、菌根菌ネットワークを維持しながら、持続可能な方法で森林を管理することが求められます。
5. 人間社会への示唆
菌根菌ネットワークの働きは、私たち人間社会にも多くの示唆を与えます。
支え合うことの重要性:木々が互いに助け合うように、人間社会でも協力と共生が欠かせない。
情報共有の意義:ネットワークを通じた情報の伝達が、危機への対応力を高める。
目に見えないつながりを大切にする:菌根菌のように、私たちも知らず知らずのうちに互いに支え合っていることを意識することが大切。
まとめ:菌根菌ネットワークが示す共生の哲学
森の地下には、菌根菌ネットワークという見えないつながりが広がり、木々が互いに支え合いながら生きている。驚きでしたね!
私たちの社会にも、この自然の知恵を活かせるかもしれません。
個人的には【日陰で十分に光合成できない若木は、菌根菌ネットワークを介して大きな木から栄養を受け取る】ということが、慈悲の心のように感じ心が温まりました。
わたし達が、慈悲や愛情と呼んでいるものが、地下にも無限に広がっているのだと。困った時に助けてくれるセーフティーネットの仕組みって大切ですね。
次回は、シマード博士にも影響を与えたカナダの先住民であるサリッシュ族の哲学について、さらに深く掘り下げていきます。
こちらから、どうぞご覧ください。