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恋の記憶よ、消えないで

昔から、女の子と別れても二人で撮った写真を消さないタイプである。

名誉のために言っておくけど、別に未練タラタラってわけだからじゃない。
その人のことを好きだった時の自分の気持ちを、忘れたくないのだ。

相手そのものに未練があるわけじゃないから、見返す写真は相手の顔が写っていないものが多い。

二人で見た風景とか。
家の近所のお店とか。
お揃いで買った靴とか。
そういう写真を見ると、その頃の気持ちが揺り起こされる。

その人にだけ好かれて、その人がこちらを向いてくれていればそれで良い。
そんな自分勝手でめちゃくちゃで、いびつなのに何物にも代え難い気持ち。

流行りの服を着たり、喜んでもらえるデートの場所を考えたり、次会ったときに話すことを考えたり。
自己満足かもしれないけど、確かに自分が恋をしていた頃の記憶。
それが、とても大切だと感じる。

僕は、恋がどんなものか思い出せなくなるのが怖いのかもしれない。
この先もっと歳を取ったら、もうあんな身勝手で感情的だけど真っ直ぐな想いを持つことができなくなるかも、って時々考える。
青春が終わってしまうような、自分が大人になってしまうような気がして。少し怖くて、何だか切ないのだ。

僕は変なのだろうか。
まあ、そう思われても構わない。

この瑞々しくて、汚らしいのに綺麗で何物にも代え難い感情を、何歳になっても忘れたくない。
その気持ちにウソはない。

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