忘れられたヤツら、アッセンブル。「デッドプール&ウルヴァリン」は良くも悪くもお祭りだ!
イかれた奴らが帰ってきたぜ!
日本でも人気のR18ヒーロー・デッドプールシリーズの最新作。
そして、あのヒュー・ジャックマンがウルヴァリン役として7年ぶりにカムバック!
そんな全世界注目の話題作が、なんと日本で全世界最速公開。
これは行くしかねえだろ、ということで行って参りましたよ。
やっぱ、公開初日の映画館は良いっすねえ。
ガチファンしかいないから歓声上がりまくり。
というわけで、早速感想に行きましょう。
内容に全開で触れていくので、ネタバレ怖い人は回れ右ですよ。
超上級アメコミ信者向け映画と覚悟しろ
本作は、「アベンジャーズ/エンドゲーム」以上の超初見殺し映画です。
「エンドゲーム」は2008年公開の「アイアンマン」以降の作品を押さえていれば楽しめますが、本作は「X-MEN」シリーズはもちろんそれ以前に20世紀FOXが制作したスーパーヒーロー映画のことも知っている必要があるという鬼クソ高いハードルのある映画。
ズブズブにアメコミ映画にハマっている人か、30代前半以上で昔から洋画がめちゃくちゃ好きな人しか本作をフルで楽しめないでしょう。
ここまで人を選ぶ映画をここまで金かけて作るのって、多分日本の感覚だとあり得ないと思うんですよ。
良くも悪くも、アメリカって本当器のデカい国だなと思いましたね。
まさかアイツが!?忘れられた奴らが大集合
本作にサブタイトルをつけるなら、まさしく「”裏”アベンジャーズ」。
序盤からええっ!お前が!?が寄せては返す展開です。
まずはいきなり電撃復帰のスティーブ・ロジャース…と思ったらまさかのジョニー・ストーム。
写った瞬間キャップじゃん!ってなっていきなり燃え始めた瞬間にそっちかよ!ってなりました。感情が迷子。
クリス・エヴァンスがマーベルのヒーローを二人分演じているからこそできる叙述トリック(多分違う)でした。
そして、登場時間7、8分で即死。
仕方ないよ、ギャラが高いから(デッドプール談)。
後半には、2003年公開の「デアデビル」でヒロインだったエレクトラ(ジェニファー・ガーナー)や1998年から2004年にかけて制作された「ブレイド」シリーズの主人公・ブレイド(ウェズリー・スナイプス)が登場。
オリジナルキャスト続投で当時中学生だった僕は歓喜でしたが、劇場にいた人の何割がこのネタ分かったんだろうか…
ウェズリー・スナイプス、当時より大分痩せてましたけどやっぱカッコ良かったな。
果ては、ガンビット(チャニング・テイタム)の登場です。
ガンビットはX-MENシリーズで人気の高いキャラ(実は僕も一番好き)でありながら、これまで実写版での登場は一回のみ。
元々2014年頃にチャニング・テイタム主演でガンビット単独映画が作られるという企画があったんですが、結局制作が頓挫。
これも元々アメコミ作品が好きでこれまでの経緯を知っている僕は「うおー!!」ってなりましたけど…日本だと何人分かるんだこのネタ。
しかしながら、ガンビットはビジュもアクションも超カッコ良かった。
トランプを爆発させる脳直、カッコよくなるのかなあって思ってたんですけど。カードの扱いもエフェクトも思い描いていた通り。
ちょっと体デカ過ぎだろとは思いましたけど、役者の年齢・体型的に致し方なし。
2017年の「ローガン」以降、その後の姿が一切描かれなかったウルヴァリンのクローンである少女・ローラ(ダフネ・キーン)も7年振りにカムバック。
成長した彼女の姿に感無量。あのサングラスをかけるシーンはグッときましたよ。
こんな感じで、マーベル負の遺産がアッセンブル。20世紀FOXに華々しく別れを告げる作品に仕上がってました。
そういや、しれっと出てきたヘンリー・カヴィルに笑いました。
ウルヴァリンの格好が案外似合ってたので、先々も安泰かもしれません(?)。
シリーズの特有の毒は健在も、ストーリーはちょっと…
本作から制作がFOXからディズニーに変わりましたが、シリーズの売りである毒気は健在。むしろ、ちょっとやりすぎなぐらい。笑
冒頭からデップーはローガンの死体を掘り返すし、死体の骨を使ってTVAの隊員を皆殺しにする等やりたい放題。
ちなみに、ここのアクションシークエンスめっちゃアガります。
カット割りとか間に入ってくるダンスとか、めっちゃセンスある。
お馴染みの観客に語りかけてくる演出、メタ的なネタも盛り盛り。
特に、前半の笑いどころ猛ラッシュはシリーズでも随一。終始ネタが出っ放しだったので逆に心配になりました。
下ネタも多いし、今回のラスボス・カサンドラがいる『虚無の世界』の雰囲気がまんま「マッドマックス」だったのは笑いました。風化した20世紀FOXのロゴとか、「スター・ウォーズ」の宇宙船の残骸っぽいのもありましたよね?
画面の随所随所に小ネタが仕込まれていて楽しかったです。
ただねー。正直ストーリーはイマイチでした。
まず、制作会社が移行する前の過去キャラの救済っていうのがほぼ「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」(2021)と一緒なんですよね。その時点でアイデアが弱い。
で、全編ボケっ放し&小ネタ祭りのせいで物語から起伏が失われています。
めっちゃ良く言うと全編見どころなんですが、悪く言うとメリハリがほとんどない。
「デッドプール」シリーズの良さだったおふざけの中にあったちょっと泣ける感じとか、本作ではほぼ皆無で寂しかった。
中盤なんか、ほとんどデッドプールとウルヴァリンが罵り合ってるか斬り合ってるだけですからね。
あれだけ愛し合ってたウェイドとヴァネッサ(モリーナ・ヴァッカリン)がしれっと別れていることにも違和感。
本シリーズは間違いなくウェイドとヴァネッサの愛の物語だし、幾度となく自分を守ってくれたウェイドにヴァネッサが別れを告げたことに何となく大人の事情を感じちゃいました。
ウルヴァリンとデッドプールの相性は△
約7年ぶりにウルヴァリン=ローガンを演じたヒュー・ジャックマンですが、ブランクは全く感じさせませんでした。
見た目的な老いが少ないことはもちろん、身体の仕上がり具合が過去随一。55歳でなんで今が一番仕上がっているのかは意味不明ですが。
ただ、デッドプールとの相性はどうなんだろうか。
お互いヒーリングファクター待ちで傷がすぐ治っちゃうので、傷を負い合いながらも戦い続けるアクションシーンは楽しかったですけども。
キャラクターとしてお互い個が強過ぎて、バディというよりは異種格闘技みたいな感じがしました。
今後もコンビとしてやっていくより、今回限りの方がレア感があって良いんじゃないかなーと思いました。
ラストの団らんシーンやエンドロールの過去映像詰め合わせはちょっとウルっと来たので、ヒュー・ジャックマンが演じるウルヴァリンは大好きなんですけどね。
お祭り映画であって、傑作映画ではない
あと、そもそも論なんですけど20年分以上にも渡る過去作品をおさらいしてないとフルで楽しめない作品ってどうなのよ?っていう。笑
それって、映画作品として質が高いと言えるんだろうか。
本当、良くも悪くもお祭り映画。
映画にストーリー性や芸術性を求める人にとってはかなり酷評されると思います。
個人的にも、お祭りとしては楽しかったけど観返そうとは思わない出来だと思いました。
余計な事考えずに楽しめる人向けの作風なんですけど、『余計な事考えずに楽しむ』ためにはたっぷりの予習と予備知識が必要というジレンマ。
刺さる方が極端に少ない究極に局所的なお祭り映画、という過去にない立ち位置の作品に仕上がっています。
シリーズファンであれば必見の作品ですが、間違っても過去にアメコミ作品を数本観たことがありますとか、アイアンマンとバッドマンの違いもイマイチ分かりませんとか、そういう人は絶対に見に行かない方が良いです。笑
少なくても、ネットで検索して事前知識は入れていきましょう。
準備無しでいくと、確実に置いてけぼりを食らいます。
あと、最後に書き忘れてたことをひとつ。
この映画の忽那汐里、めっちゃ可愛くて好きです。登場時間5分ぐらいだけど。