耳に残るのは君の言葉
「今、天才子役より早く泣ける自信ある」
別れた後、最初にもらったLINE。
悲しいのに、思わずクスッとしてしまったことを覚えている。
二人が違う道を歩くことになって、もう3年が経つけど。
今でも、君のくれた言葉を簡単に思い出せる。
「君は、私には勿体無いぐらいの彼氏だよ。
君の愚痴、友達に一回も言ったことないもん」
そんな飾り気のない褒め言葉が、すごく嬉しかった。
思い返してみれば、君のくれる言葉に秘められた優しさとセンスが大好きだった。
人を褒める時の優しい言葉も、キレキレの悪口やツッコミも。
初めて思いが通じ合った日に話したことも、別れの言葉も。
全部すぐに取り出せるように、記憶の上の方の階層にしまってある。
見た目がタイプの人や、服のセンスがおしゃれだと思う人はこれまでもいたけど。
言葉のセンスが好きだと思ったのは、もしかしたら君だけだったかもしれない。
別れて2年ぐらいした後、僕には新しい恋人ができた。
新しい街にも慣れたし、仕事もそつなくこなしている。
人生を、そこそこ順調に歩んでいるつもりだ。
だけど、時折。
無性に君の言葉が欲しくなる時がある。
「君の良いところは、私が一番知ってるよ。
だから、そのままでいいんだよ」
飾り気がないのに丁寧で、優しくて。
僕を包み込んで、勇気づけてくれる君の言葉が。
もう二度と会えなくても、多分僕は生涯君のくれた言葉を忘れないだろう。
僕の言葉も、やがて誰かを癒すようなものになれば良いと思う。
君からもらった言葉を、君に返すことはもうできないけど。その分、誰かの心に残る言葉を紡ぎたい。
そんな気持ちを、耳に残る君の言葉がくれたんだよ。