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面白い、暗い、そしてちょっと長い。「THE BATMANーザ・バットマンー」感想
「ダークナイト」(2009)と比較するレビューをよく観たけど、全然別物な気がした。
STORY:
バットマンが初めて犯罪に立ち向かってから2年。ゴッサムシティで不可解な連続殺人事件が発生。
それぞれの現場には、バットマンに向けた謎のメッセージが残っていた。
事件の解決に動き出したバットマン=ブルース・ウェインは、自身の家族も深く関わるゴッサムシティの腐敗に直面することになる。
名作「ダークナイト」とある意味対極の作品
最初に『「ダークナイト」と別物』と書いたのには意図があって。
「ダークナイト」は街を守る光であろうとしたバットマンが、自分では真の光になれないことを思い知る話。
一方本作は、ドン底にいた復讐鬼であるバットマンが自分も街の光になれるのでは?と希望を見つける話。
ダークでリアリティがある雰囲気は似てるんですが、描かれているテーマがまるっきり違うんですよね。
本作のヴィランであるリドラーも「ダークナイト」のジョーカーばりに性格悪くバットマンを追い込みますが、その性格や行動は全く違う。
ジョーカーはバットマンに対し『お前と俺は表裏一体』と話すけど、本作のリドラーはバットマンを完全に恨みの対象として見てましたからね。
良くも悪くも、本作の方が話の流れはシンプルだと思います。
映画の雰囲気は「ヒーロー×クライムサスペンス」
映画全体の雰囲気は「アイアンマン」に始まるマーベル作品のようにヒーロー然とはしておらず。
どっちかというと「セブン」とか「羊たちの沈黙」とか、完全にクライムサスペンス寄りです。
画づくりは「タクシードライバー」とか「ブレードランナー」(雨降ってるせいかな?)みたいな雰囲気もある。
中盤はバットマンの”復讐者”という立ち位置から「マッドマックス」味も感じました。
ド派手なアクションシーンは少なめですが、常に画面に緊張感が漂っている。
特殊なマシン(本作のバットモービル、好きです)や特殊な動画が出てきたりとヒーロー要素もなくはないんですが、これをヒーローものと言えるかと聞かれると意見が割れそうな気がします。
人物描写・人間関係の描き方が良い
まず、前提として良い映画ではあります。
ティム・バートン版や「ダークナイト」トリロジーより若くて未熟、それでいて荒々しいバットマン像は斬新。
あと、個人的に僕は本作の人間関係の描き方が好きでした。
まず、ヒロインであるキャットウーマンとバットマンの距離感。これは今までのトリロジーで一番好きですね。
二人が惹かれ合う感じとか、言葉で説明していないのに自然で丁寧。
他にもバットマンとゴードン警部補のお互いのことを何も知らないのに妙に信頼し合っている雰囲気や、バットマンとアルフレッドの関係性も絶妙。
というか、どのトリロジーでもアルフレッドって本当有能ですよね。笑
本作のヴィランであるリドラーですが、見た目のザコそうさが素晴らしかったですね。サイコパスっぷり素晴らしく、リアリティが強い敵も良いなぁと思えました。
ただ、ちょっと長くない?
という感じで面白い作品ではあるんですが、正直約3時間はちょっと長いかなー、と。笑
個人的に、サスペンスって長くても2時間ちょっとしか緊張感を維持できないと思うんですよ。
それこそ最初例に出した「セブン」は2時間と少しだし、「羊たちの沈黙」は2時間切ってる。
逆に言うと、あんなにすごい作品でも緊張感が維持できるのは2時間がいっぱいってことだと思うんですよ。
バットマンが色んな人と絡んでいくうちに光を見つけていく、というストーリーの筋書きは良いんですけどね。
ペンギンを演じていたコリン・ファレルの特殊メイクと演技は凄かったんですけど、もしかしたらここが余計だったのかもなぁ。
ペンギンの要素を削ぎ落として2時間20〜30分でまとめてくれた方が個人的には好きだったかも。
まあでも、観て損はしない作品だと思います。
音楽もカッコ良いのでできれば音響設備の良い映画館でご鑑賞ください。