熱くなれないのは何故か?「シン・仮面ライダー」感想
個人的な感想言います。
クソつまんなかったです。
色々書きたいことがあるので、今回はネタバレ全開でいきます。
作品への批判も多いので、気になる方はブラウザバックを。
熱くなれるシーンが一つもない
全体的に問題点は死ぬほどあったんですけど、まとめるとこの要素が大きいですね。
この作品、終盤で主人公とヒロインが死ぬんですが。それでも、こっちの感情が一切動きません。
というか、アクションシーンからセリフ回しまでほとんど心を動かされない。
これが何故か、一つ一つを紐解いていきましょう。
①脚本が酷い
まずは根本的なところからですが。
とにかく、話の展開が急。
観客の感情を揺さぶるにはまず観客の感情をついてこさせないといけないわけですが、この作品は全くそれを許してくれない。
まあ、敢えて観客を突き放すような脚本は庵野節ではあるわけで。
『シン・ゴジラ』では、それが非常に効果的に作用していました。
ただ、それは『シン・ゴジラ』が敢えて登場人物をヒロイックに見せない映画、ゴジラという”個”と”日本”という集団の戦いを描いたものだからであって。
『シン・仮面ライダー』では主人公の本郷猛(池松壮亮)やヒロインの緑川ルリ子(浜辺美波)、一文字隼人(柄本佑)の個人の関係性が非常に重要で。
なんなら本郷やルリ子の死、本郷と一文字の友情が物語のキモなわけです。
ところが、時間配分や物語の強弱の付け方が下手過ぎてどれにも全く感情が乗っていかない。笑
ルリ子の一瞬の死には思わず笑っちゃいそうになりましたし、本郷の最期さえもイマイチピンと来ず。
終盤、本郷と一文字が協力してダブルライダーになるシーンは普通に考えて絶対胸アツなものになるはずなのに、二人の関係性の変化が全く描けていないのでエモーショナルさ皆無。
そもそも、一文字の登場が遅すぎますよこれ。
もっと序盤で出しておけば描き方が違ったかもしれませんが。
あと、庵野監督の記号的な人物描写ってあえてやってるんですかね。
分かりやすい口癖作ったり、服装がずっと同じものだったり。
『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』から本作と、シリーズを追うごとにどんどんこの傾向が酷くなっているような…
登場人物に人間味を感じない(あえて消してるのかもですけど)から、感情移入できないんですよね。
②アクションが見づらい
はい、これも問題です。
とにかく、全編に渡ってアクションが見づらい。
カメラブレてるしカット割り多いし暗いし…
CGもショボいですけど、これはそれ以前の問題。
手振れとカット割りの多さは初代リスペクトなのはよくわかるんですけど、あれって当時はスピード感を出す技術がなかったからやってるわけですよね。
大画面で真似されると見づらいしストレス溜まりました。
比較するのは酷ですけど、MCUの作品ってカット割りも激しいし暗闇のシーンも多いのに何故かアクションが滅茶苦茶見やすいんですよね。
一方で本作は、何をやってるのかわからないシーンが非常に多くて。
特に後半のショッカーライダーと戦ってるシーンは、動きが全然わかりませんでした。そもそも、誰が誰なのかも見づらいし。
ラスボス的な森山未來とのアクションも同じようなカットの繰り返しで、エモさもクソもない。
で、後半突然弱くなるし。都合良すぎない?
序盤の明るい時間のシーンはまだ見やすかったんですけどね。
アクション的にはド頭の戦闘員との戦いがピーク。
それ以降の戦闘シーンはすべて興醒めでした。
③オマージュに逃げ過ぎ
この作品、どうもオマージュに重きを置き過ぎな気がするんですよね。
まあ、『シン・ウルトラマン』の時も似たようなこと思ったんですけど。
そもそも、オマージュってあくまで小ネタであって。
話の本筋や映像に面白みがなければ全然今のないものです。
料理そのものが全然美味しくないのに隠し味の調味料だけめちゃくちゃ良いの使ってるみたいな、そういう感覚。
本作でも竹野内豊&斎藤工コンビを引っ張り出したり、演出や設定をTVシリーズに被せてみたり、結末や展開を漫画版の『仮面ライダー』に寄せてみたりしてるんですけど。
それって、これまでの『仮面ライダー』や『シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース』に愛着がない限り分からない部分で。
本作の個人的な評価ポイントは最後に明かされる竹野内豊と斎藤工の役名と、新1号のマスクの登場のさせ方なんですけど、これも旧作のオマージュでしかなくて。
言わば、分かる人にしか分からない部分なんですよ。
映画って、やっぱり一本の作品として面白く仕上がっていないと価値が下がる。
シンプルに面白い映画を作って、そこにオマージュを付与してもらえればもっと素直に楽しめたのにな。
豪華キャストの使い方も、はっきり言って8割は無意味でした。
隠しキャストやサプライズ出演で作品にバリューを加えようとするのも、いい加減やめた方がいいんじゃないかな。
長澤まさみと松坂桃李に至っては仕事断っても良いレベルだったのでは。
正直、ここ数年で観た映画の中で一番に近いぐらいガッカリしました。
それは僕が仮面ライダー好きで、映画好きだからに他ならないのですが。
もっと純粋な仮面ライダー映画が観たかったなぁ。
原作のなぞり方や、大元の設定は全然悪くないんですよ。要は、描き方の問題ですね。
庵野監督イズムも、僕は元来そこまで嫌いじゃないんですけどね。エヴァも好きだし。
この作品を仮面ライダーや庵野監督への予備知識が愛情がない人も楽しめるのか、それが気になるところです。
僕は絶対無理だと思いましたが。