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変態盲目ジジイの物語、完結。「ドント・ブリーズ2」感想

ちょっと待ってくれ。
めちゃくちゃ面白かったんだけど。笑

STORY:
人気のない郊外の古びた屋敷に住む、ある盲目の老人。
彼はその屋敷で一人の少女を大切に育て、二人だけで静かに暮らしていた。
彼は8年前に強盗に押し入られた被害者として生きていたが、実はその強盗団を惨殺、他にも猟奇的な過去を持っていた。
ある日、謎の武装集団が老人の屋敷に静かに忍び込む。その目的は少女。
老人は全てを知り尽くした屋敷内で武装集団の抹殺を試みるも、訓練されていた集団は老人を襲い、火を放つ。
命からがら炎の中から逃げ出したが、そこに少女の姿はない。老人は己の手で大切に育てた少女を取り戻すため、武装集団の後を追う。

息をもつかせぬ99分

僕は、映画に大切なのは観客の集中を持続させることだと思っています。
「いつ終わるんだろう」とか「このシーン長いな」と観客に思わせた時点で、観客はその映画の世界から解き放たれてしまっているわけです。

その点、この「ドント・ブリーズ2」は見事。
上映中は時計を見るどころか、息をもつけないような緊張感でした。

ストーリー・登場人物に無駄な部分が一切なく、とにかく展開が早い。
途中ご都合主義な展開もあるにはあるんですが、スピード感と緊迫感が勝っているので全く気になりません。


一人を除いて”登場人物全員悪人”

この作品、まともな人間がほとんど出てきません。
まあこれに関しては本作しかり、5年前の前作しかりですが。
まともなのって、本作の重要人物である少女・フェニックスだけなんじゃないだろうか。

老人がボコボコにされて家まで燃やされるのは心が痛いんですが、そもそも老人も猟奇的殺人を繰り返している上に監禁した女性に自分の精液を注入して妊娠させようとした変態(詳しくは前作を観てね)ですからね。

ある意味、観客側のモラルを試されているような気分にもなる。監督と脚本家は趣味が悪い。笑

さあ、ここからはネタバレと共により深く映画を深掘りしていきます。


変態ジジイ、中盤まで在宅

中盤までは前作を思わせる構成。
家に忍び込んできた奴らを老人が迎え撃つ。

ただ、前作と違う点が2つ。
一つ目は少女・フェニックスの存在。
そして、もう一つが今回老人が相対する相手は訓練されているということ。
この二つの要素がしっかり機能しているので、前作の繰り返しという印象が全くない。

本作では老人にも守りたいものがあり、どうしても逃げの戦いを強いられる。老人が戦闘で追い込まれる画は前作のファンからすると新鮮。

また、フェニックスが武装集団から逃げ回る際のワンカット風の撮影は技術的にもかなり面白い。
緊張が途切れないので、文字通り画面から目が離せなくなりました。


変態ジジイ、外へ出る。

本作で、変態ジジイはついに家を飛び出していきます。
この展開がまた面白い。

まず、敵のアジトを突き止める方法が愛犬家たる所以
なんか「ジョン・ウィック」を思い出してしまいました。あの作品のキアヌ・リーブスも愛犬家でしたよね。
やっぱ犬を大事にしない人は報いを受ける

水たまりに死んだフリをして横たわり、近づいてくる敵の足音と水の波紋で動きを察知、敵を撃ち殺すというシーンはもはや「夕陽のガンマン」とか「座頭市」みたいでした。

あまりにもダークヒーローし過ぎて「やだ…ジジイカッコ良い…」ってなっちゃいました。変態なのに。


変態ジジイ、そして父になる

主人公である変態盲目ジジイは相変わらず変態盲目ジジイなわけですが、本作では彼に大きな変化が訪れます。

彼に変化を与えたのは、他でもないフェニックスの存在
1作目から娘の存在に固執していた老人ですが、実際に娘のような存在ができると彼の心にも安寧がもたらされたようで。
行動も発想も、一作目と比べると人間的になりました。

一方で、フェニックスの実の父母で今回のヴィランである夫婦は本当にクソ野郎。
母親は火事で抱えた心臓の不具合を治療するため、自らの娘の心臓を奪おうとする。父親もそれをサポート。
フェニックスのことなんて1mmも考えず、自分たちの私利私欲のためだけに動く。

老人もこの夫婦も、どちらも人間として最低ではあります。
ただ、本作だけ観ると義理の娘を守るために戦う老人と自分たちのために実の娘を犠牲にしようとする夫婦の戦い。
どっちに肩入れしちゃうかは明白ですよね。どうも夫婦は元々犯罪者だったっぽいし。

老人が必死に戦い、フェニックスを救った後「俺は怪物だ、離れろ」というシーンは、ちょっとウルっとしちゃいました。

え?俺変態に泣かされそうになってるの?とも思っちゃいましたけど。笑


変態ジジイ映画、王道ものになる

前作は「強盗が入った家の盲目老人がめちゃくちゃ強い」という変化球的な映画だったわけですが、製作陣はあの路線で1作目を上回るのは無理と判断したんでしょうね。
2作目は徹底したダークヒーロー路線で、老人が自分自身の過去と向き合うというのがテーマとなっています。

設定的には1作目で悪役だったシュワちゃんがヒーローになる「ターミネーター」シリーズを想起させますが、よく考えると他のヒット映画の要素も盛りだくさん。

中盤〜後半の展開なんてもろ「スター・ウォーズ」
盲目の老人の「私はお前の父親ではない」というカミングアウト、フェニックスが瀕死の老人に「私が救う」と声をかけた時の「もう救ってくれた」という返しはルークとヴェイダーの会話を思い出させる。
ラストシーン、フェニックスが名前を問われた際に本名ではなく老人にもらった名前を名乗るあたりは「スカイウォーカーの夜明け」のラストシーンっぽいし。

個人的にはこの大胆な路線変更が非常にうまくいってると思ったんですが、思いの外yahooレビューやRotten Tomatoesの評価が低くてびっくり。
まあ、yahooレビューは母数が少ないしRotten Tomatoesもオーディエンスの評価は高いからあまり信用度はないかな。

個人的には、2021年公開作の中でも1、2を争う傑作。
できればたくさんの人に観て欲しい。

あ、でも人を選ぶので万人にはオススメしません。
グロいシーンも結構あるし。苦手な人はご注意を。

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