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「るろうに剣心 最終章 The Final」の感想を熱く熱く綴る

結局映画館に4回観に行った「The Final」

まず観て最初に思ったのは、「プロデューサー公開順迷っただろうなー」だった。笑
なんかこのシリーズに思い入れあり過ぎて、目線がスタッフみたいになっちゃうんですよね。

更に磨きがかかった壮絶アクション

間違いなくアクションの完成度はシリーズ1番です。これは断言できます。

まず圧巻なのは、ド頭の雪代縁登場シーン。
ここのアクション、めっちゃくそカッコ良いです。
縁がゴム毬みたいに鉄道の車内外を飛び跳ねながら、けん玉を使ってあっさり警官隊を倒して行くシークエンス。
この導入だけで映画として30点ぐらいはあげられるので、「ああ、もう大失敗はないな」と思えました。

で、次にびっくりしたのは巻町操役の土屋太鳳ですね。
もう主演級の女優に上り詰めているのに、ここまで体張ったアクションやってくれるとは…
八ツ目戦の動きは最早女性の動きじゃねえよ。
最後、2本の刀を使って想い人である蒼紫の回天剣舞六連を模倣してたのもポイント高い。
観ている人の内何人が気付くかはわかんないけど。笑

御庭番衆チームはここ含め、過去作のオマージュ的な動きが目立ちましたね。アクションで翁から蒼紫、蒼紫から操への意思の継承を表現しているのかな。
蒼紫の飛び蹴りなんてもろに「京都大火編」の翁の動きだよね。カメラアングルまで一緒だったし。

で、剣心の佐藤健と縁の新田真剣佑はもう別次元です。
ここまで動ける俳優、世界中探してもそこまでいないでしょう。

マッケンは身体もめちゃくちゃ作ってましたね。
二の腕大変なことになってましたよ。
中国拳法風味を取り入れた倭刀術の動きも絶妙。
ラストの館でのバトルは特に動きが俊敏な上に力強くて、強さにすげえ説得力がありました。

そして、もちろん触れないわけにいかないのが我らが緋村剣心こと佐藤健です。
まず、特筆すべきは今作における剣心の殺陣の多さ。
シリーズ1どころか、邦画No.1まである
よこれ。
これを全部頭に入れて撮影に臨んだのは、ちょっととんでもない。

で、その上で凄いのは全部の殺陣のレベルが尋常じゃなく高いこと。
ただ数をこなしているわけじゃなくて、一個一個ほんとに見応えがある。

どれもすごいけどベスト3を挙げるなら序盤のvs乙和戦、縁の館に乗り込んだ最初の1vs多数の戦闘シーン、そしてvs縁でしょうか。

vs乙和戦は家屋の中での戦いが見所で、カメラワークも非常に面白かった。
壁を使った宙返りなんかは1作目の神谷道場でのバトルを彷彿とさせるけど、家屋という空間の狭さがよりアクションを見応えのあるものにしていました。

縁の館でのvs多数のシーンは、序盤の避けに徹しながら前に進む動きが斬新。今までのシリーズでは見られなかった動きですよね。
1vs多数のバトルは「京都大火編」の新月村かこれが一番だと思います。

そしてベストバウトはやはり縁戦
これは、佐藤健のアクションレベルについてこれる新田真剣佑が相手だったというのも要素として大きいと思う。
これ以上のアクションシーン、邦画では今後10年観れないんじゃないだろうか。

他にも前作までで披露した家屋駆け上がりとか壁走りとかは全部進化してて、マジですげえとなりました。脱帽です。


アラは目立たないが、やはりツッコミどころのある脚本

実写版るろ剣シリーズの唯一にして最大の穴は脚本面ですが、今作は案外良いです。

本シリーズには1作目から共通して言えることですが、原作のセリフを実写に突っ込むのが非常にうまい。

縁が腹心である呉黒星(ウーヘイシン)にブチギレるシーンや警察署長のメガネ揃いの家族なんて原作通り過ぎてびっくりした。笑

ストーリーラインとしても、ある部分を除いて(後述)うまく原作の要素を浚えています。
個人的には原作にあった薫の死体人形カットも賛成。実写では表現が難しいし2時間の映画にあの展開をぶっこむと剣心の心情変化が多過ぎて話が駆け足になってしまう。ただ、これも一つ大きな問題を生んでいますが(こちらも後述)

あと、前作より格段に良くなったなと思ったのが物語の締め方ですね。
まず、戦いの後縁が巴の日記を読むシーンが追加されているのは非常に良いと思いました。確か、原作では日記を渡して終わりでしたよね。
縁という人物が"答え"を見つける場面がしっかりあるのは、映画として非常に丁寧だなと。
ラストシーン、剣心と薫が巴の墓参りをするという締め方も良かったですね。

しかし、致命的なツッコミどころもいくつか。

まずはシリーズ全てで敵に攫われるヒロイン・神谷薫さんです。ピーチ姫かよ。
彼女に関しては本作では比較的原作通りの扱いを受けているので、まずかったのは2・3作目の京都編の設定改変ですね。
以前、佐藤健のインタビュー記事で『薫を3回も攫わせる訳にはいかないから脚本に苦労した』的な記事を見た気がするんだけど、蓋を開けたらやっぱり攫われていた。アクション映画にヒロインを絡ませる常套手段ではありますが、3回はちょっと…

それから、いくらなんでも左之助の扱い悪過ぎでしょう。
僕は原作で左之助がめちゃくちゃ好きというわけでもないんですが、さすがにちょっとかわいそうだよ。
今回はまともなタイマンバトル一つもないし、縁にボコボコにされるだけの役割。

そして、僕が本作一番のツッコミどころだと思ったのが攫われた薫を剣心がすぐ助けにいかないところなんですよ。
パート1ではめちゃくちゃキレて凄まじい速さで刃衛の元にたどり着いていたのに、今回は悠長に朝方まで待っている。

ひょっとしたら復讐のため薫をすぐに殺すことはないだろうと読んでいたのかもしれないけど、それにしたって剣心のキャラならすぐ助けに行くでしょう。ここは違和感しかなかったですね。

あとはドラマ部分の演出面。
雨に降られる、神谷道場の格言を見る、物思いにふける…ちょっとシリーズの他作品と被るもの多すぎない?おまけにワンカットが長い。
アクションには文句のつけようがないですが、ドラマ面の演出はもうちょいテンポ良くいけたんでは?と思ってしまった。


アクションに特化した結果、エモーショナルさにやや欠ける部分も

前述の通り、アクションは邦画No.1を名乗ってもなんの問題もないレベルだと思います。
ただし、アクションシーンがあまりに多いためやや食傷気味になっている感じもしましたね。すご過ぎて何が凄いのかわからなくなる状態というか…

特に、褒めまくってる縁とのラストバトルですが割と唐突に終わっていく印象があります。
というか、途中から明らかに剣心が強くなるんですよね。
パート1の刃衛戦や前作の志々雄戦では感じなかったことなんですが。
アクションの中での起承転結の付け方は1作目の刃衛戦が一番良かった気がするな。

あと、そこまでエモーショナルを謳うなら味方キャラ全員集合の絵は一発欲しかったですね。
終盤の盛り上げにはやっぱり蒼紫と左之助が必要だし、全員で縁の館に乗り込むシーンとかあったらクッソ盛り上がるのに。

やっぱ、蒼紫の人がやらかしたからか。
でも、退場シーンとか事前に撮ったやつっぽいし途中結構活躍はしてたしなあ。単に全員売れっ子過ぎてスケジュール合わなかったのかな?


追憶編・人誅編を実写化する上での一番の課題

前述の"エモーショナルさに欠ける"理由の中でも大きいのは、この作品の中で雪代巴という人間がしっかり描けていないことだと思います。

これ、多分本作を実写化する上で製作陣が一番悩んだことだと思いますが。

「The Final」は、巴の存在を巡った剣心と縁の戦いです。
しかし、巴の人物像がこの作品の中でしっかり描き出されていないから、どうも重みに欠ける。

おそらく、公開順を「The Beginning」→「The Final」にするか2部作の中の一部分を回想シーンにすればここは乗り切れた問題なんですよ。
少なくても、製作陣の中にこの選択肢はあったはず。

しかし、興行面を考えると1本1本を独立した作品にした方が良いこと、暗いトーンで今までのシリーズとテイストが異なる「The Beginning」は前編に持ってきづらいこと、素晴らしい「追憶編」というエピソードを単体で描きたかったことがあって現状の方式を採用したのでしょう。

この判断を否定する気は無いですが、「The Final」のクオリティを上げるならやはり追憶編は2部作の中の回想シーンにするべきだった。

それでも製作陣は追憶編を一本の作品にする決断をしたわけだから、「The Beginning」には相当自信があるんでしょう。
というか、「The Final」を犠牲にしているわけだから絶対「The Beginning」を傑作にしろよという気持ちがあります。

大友監督がインタビューで『「The Final」はエンタメに振り切ることで成功が見えた」と言っていましたが、逆に言うと「The Final」はそうせざるを得なかった、という風に思えました。


完璧な剣心と未熟な縁

前述の通り、この作品では原作で描かれる薫の死(実は死んでないけど)がカットされているため、剣心が落ち込んでから復活するという下りが丸々なくなっています。

先ほども書いたようにこの展開自体には賛成なんですが、これによって剣心が成長する要素が完全になくなっているのは痛手だと思いました。

本作の剣心は完璧過ぎるんですよね。京都編を経て、逆刃刀で目の前の人を少しでも守ることが贖罪になるという確固たる答えがもう出てしまっている。
作中で落ち込むことはあっても、揺らぐシーンはほとんどないわけです。

一方で、シスコン気味の縁ですが彼はこの作品を通して悩み苦しみ、最後には小さな答えを見出します。

結果として、縁の方が主人公に見えてしまうような現象が発生しています。
これは佐藤健の演技がとか新田真剣佑の演技がどうとかではなく、脚本上必然的にそうなってしまうのです。
まあ復讐される側が主人公の作品ってあんまりないし、この尺感では描き方が難しいですよね。


おまけのサプライズについて

あと、ご覧になった方ならわかると思いますが本作には一つサプライズがあります
あのノリを受け入れられるかどうかが「The Final」を全力で楽しめるかどうかの一つの分水嶺な気がします。

僕は興奮半分、サムさ半分って感じでした。
登場自体には「うおー!」ってなったんですが、その後のセリフが説明的過ぎるし恥ずかしくて…

刀狩りの張をうまく使えば、もっと違和感なく登場させれた気もするんですけどね。
斎藤と絡むシーンの時に「○○は日本中ほっつき回っとるらしいし…」みたいなセリフを入れておくだけでも、○○さんの説明的なセリフを省略できたのに。そこはもったいないなと思いました。
まあ、お祭り感あってトータル良かったですけどね。


さあ、良い部分も悪い部分もあった「The Final」。
なんか悪口が多かった気もします
が、結構好きな映画です。
好きな映画だからこそ語っちゃうんですよね。
今回は何回観に行こうかな(私はパート1を3回、京都大火・伝説の最期をそれぞれ6回ずつ映画館で観た変態です)。

6月の「The Beginning」が公開延期にならないことを祈って、この記事を終わりたいと思います。

読み返して斎藤一に言及する文章が一個もないことに気付いたけど、まあいいや。笑
追記したくなったらまた書き足します。


「The Beginning」の感想はこちら。


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