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儚くも美しい、二人の運命。「今夜、世界からこの恋が消えても」感想

日本中の道枝駿佑担よ、これだけは言っとく。
観てみな。飛ぶぞ。

STORY:
高校生・神谷透は、いじめのターゲットにされた友人を救うために同学年で言葉も交わしたことのない日野真織に嘘の告白をする。
しかし、真織は「放課後までお互い話しかけない」「連絡のやり取りは簡潔にする」「本気で好きにならない」という3つのルールを守ることを条件にOKをする。
しかし、真織は交通事故をきっかけに夜眠るとその日にあった記憶をすべて忘れてしまうという前向性健忘病を患っていた。
新しい記憶が蓄積できず、寝ると毎日記憶がリセットされる真織は手帳や日記にその日の出来事を書き留め、翌朝に復習することで記憶をつなぎとめていた。
毎朝、記憶を失っていることに気付き、絶望感を覚える真織。
徹は、そんな彼女の日記を楽しい思い出で埋めようとひたむきに真織と向き合っていく。

夏休みデートムービーとしては最高級の出来

なにわ男子の道枝駿佑と東宝シンデレラの福本莉子という、フレッシュな二人が顔を揃えた本作。

監督を務めたのは「陽だまりの彼女」「アオハライド」でもメガホンを取ったラブストーリーの名手・三木孝浩。
本当、この人はキレイな画作りがうまい。本作でもその才能が炸裂していました。
特に主演二人が絡むシーンは、どこを切り取っても写真にできそうなぐらい美しかった。

あと、音楽も良かったですね。エンドクレジットで音楽を担当したのが亀田誠治なのがわかって納得しましたけど。劇伴はもうこの人に任せとけば安泰だ。
主題歌のヨルシカ「左右盲」も作品の世界観にマッチしてました。ヘタになにわ男子の曲とか持ってこなくてよかった。

健忘症をテーマにしたストーリーっていうのも食傷気味かと思いましたけど、よくまとまっていて。終盤ちょっと唐突な展開はあるものの、しっかり泣ける仕上がり。
特に、中盤で透が真織が記憶障害を抱えてしまうことを知ってしまうシーンは一気に引き込まれました。まさしく神対応。
このシーンで透の人間性が伝わるし、真織が日記の内容だけでも透を好きになることに説得力が生まれました。透いい奴すぎるもんね。

夏休みデートムービーと考えると、どの部分にも過不足なく。こういうジャンルの映画では最高レベルの仕上がりなんじゃないかな。

特に、道枝駿佑ファンは絶対観た方が良いです。
「金田一少年の事件簿」をはじめとして、デビュー後あまり作品に恵まれなかった彼にとっては久々の佳作。
今回はスタッフ、脚本、その他出演者にも恵まれている上に胸キュンシーン盛り沢山。ファンは絶対観ておいて損はないはず。


主演2人を支える他キャストも魅力的

主演の二人をはじめ、キャスト陣はみんな良かったです。

みっちーは本当、どこから見ても美しいわ。
モテない感じの設定はさすがに無理があると思ったけど、真織との交流を通して徐々に人間味が出てくる様子はさすがの演技力。
線の細い体つきもこの役によく合っていました。
あとは、各シーンから溢れ出る彼氏感はさすがジャニーズだなと。
僕の一押しは、透が真織に向かって「明日の日野も、僕が楽しませてあげるよ」(うろ覚え)っていうシーンと物語後半の花火のシーン。あの二つは悶えましたね(32歳・男性の供述)。

福本莉子ちゃんは王道ヒロインって感じ。
ツーっと涙を流すのが実にうまくて。生まれながらの女優さんだなと思いました。
この子、角度によって色んな人に似て見えますよね。浜辺美波だったり有村架純だったり山下美月だったり…でも、みんなかわいい人だからこの子もすげえかわいんでしょうね(当たり前)。

個人的にMVPあげたいのはヒロインの親友を演じた古川琴音と、透の姉を演じた松本穂香かな。
古川琴音ちゃんはある意味主役みたいな役回りでしたね。
狂言回しというか、全編通して真実を把握しているのって実は彼女演じる泉だけだし。
彼女が愛らしく演じていたから、うまく泉に感情移入できました。
僕がこの作品で泣いたのは彼女が泣いてるシーンだけでしたからね。

松本穂香は要所で出てきてグッと作品を引き締める。もう役割が大女優の感じで。笑
今年の春観た「桜のような僕の恋人」での役回りとかを思い出すと、やっぱ振り幅の広い女優さんなんだなと思いました。

透の父親を演じた萩原聖人も人間味あって良かったです。
出番が少なめなので見た目に説得力が必要なんですが、くたびれつつも心の奥には家族への愛を持ったオヤジ感が良く出ていました。

あと、個人的には野間口徹さんが最高で。
本当、あの人のポーカーフェイス感というか小市民感は魅力的です。
真織に「もしかして、このやりとり毎朝してる?」的な質問をされた時のあの絶妙な顔。絶対他の俳優さんにはできない。笑


強いて言うなら、後半の展開はちょっと雑

映画好きの観点から言うと、後半の展開はちょっと雑でしたね。
ここから大幅にネタバレしていきますが。

物語の後半、唐突に透が死んでしまうんですけど。
そこが、どうしても物語の都合上うまく殺された感が否めないんですよね。
この辺り、ちょっと「君の膵臓をたべたい」の後半の展開にも似ていて既視感を感じてしまいました。
これに関しては、おそらく原作の問題だと思うんですけどね。

あと、ラストの落とし方ももうちょっとうまくできたんじゃないかな、と思ってしまいました。
物語のラスト、記憶障害が徐々に改善しつつある真織は透のある言葉をきっかけとして美大に進むという夢を持ちます。
ここの描き方は、もうちょっとベタベタにわかりやすくやってほしかったかなあ。本気を出せば、もっと泣かせにいけたところな気がします。

ラストシーン、結局真織は記憶としては透のことを忘れているわけで。
でも、真織の中で透は夢をくれた人、絶望に満ちた毎日の中に希望をくれた人として永遠に残り続ける。
その部分をこれでもかとわかりやすく描いた方が透のヒロイックさがより際立つはずなんですけど、映像では推し方がちょっと弱いかな?と思ってしまいました。

僕はどちらかというと、透の姉や泉ちゃんの方に感情移入して泣いちゃって。透の残していったもの、というよりも家族や友達の喪失感の方にやられちゃったんですよね。
ラストはもっと切なくも希望の持てる泣き方をしたかったなぁ、というのが正直なところ。

まあ、僕がこの手のジャンルの作品をほとんど観ないので感受性不足なのかもしれないですけどね。
周りの観客は結構みんな泣いてましたし、普段洋画ばかり観ている僕から見てもかなりよくできた作品だと思いました。

この夏、ラブストーリーが観たい人はぜひ。

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