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ガッキーを美人に撮っちゃいけない、というとんでもない縛りプレイ。映画「正欲」感想

ある意味、高過ぎるハードルである。

STORY:
横浜に暮らす検事の寺井啓喜は、息子が不登校になり、教育方針を巡って妻と度々衝突している。広島のショッピングモールで販売員として働く桐生夏月は、実家暮らしで代わり映えのしない日々を繰り返している。ある日、中学のときに転校していった佐々木佳道が地元に戻ってきたことを知る。ダンスサークルに所属し、準ミスターに選ばれるほどの容姿を持つ諸橋大也。学園祭でダイバーシティをテーマにしたイベントで、大也が所属するダンスサークルの出演を計画した神戸八重子はそんな大也を気にしていた。

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分かり合うって難しい

僕は、結構この作品が好きでした。
良かったとか良くなかったかじゃなくて、好き。

多様性多様性とバカみたいに叫ばれる時代ですけど、本当に色んなことを認め合うのは、言葉以上に難しいことだと思う訳ですよ。

何故なら、この世界には自分の理解の範疇を越える人がたくさんいて、その共通点でしか繋がれない人もきっといるから。
この作品の主要人物の何人かは、水に対して性的な興奮を覚えていますが、きっと実際にも彼らのような人や、似たような人がいるのでしょう。

彼らは中々他人と分かりあうことができないし、誰かと繋がることもできない。
彼らは自分の性癖が常人の理解の範疇を超えていることを理解しているし、だからこそ共通の感性を持つ人の存在を知ると嬉しいし、繋がりたいと思ってしまうんですよね。

これね、意外と僕は気持ちがわかっちゃって。
僕も、小さい頃からすごくSASUKEが好きだったんですけど、中々話せる人がいなかったんですよ。
で、今何年か越しにSASUKEで繋がった仲間がいるんですけどめちゃくちゃ楽しい。

別にSASUKEじゃなくても、変わった趣味を持った人や理解されづらいものが好きな人もいるはずで。
以外に、結構共感できる人も多い映画なんじゃないかと思いました。


ガッキーをかわいく撮っちゃダメ、という縛りプレイ

この作品のガッキー、彼女史上かつてないぐらいに地味です。
こんなに華やかを抑えることができるんだって言うぐらい、メイクや衣装も工夫しています。

制作側からしたらとんだ縛りプレイですが、ガッキーはこの役を非常にうまくこなしてました。
抑えた演技も良かったです。

この作品は、ガッキーや相手役の磯村勇斗が美しく見え過ぎるとダメなんですよね。
だって、二人がいつも通りキラキラしてなら『世の中と繋がれなくてもそんだけキラキラしてたら別にいいだろ』ってなっちゃいますからね。
もちろん、実際には美男美女だからと言って人と繋がれなくても良いなんてことはないんですけど。どうしても軸がブレちゃうので。

で、普段キラキラを抑えているからこさ人と繋がれた時の歓喜の瞬間がキラキラして見える。
ガッキーと磯村くんが水と戯れるシーンの二人の表情はとても美しく、生き生きして見えました。


キャストも良いけど、好みは割れる作風

稲垣吾郎のキャスティングは会心。
この人は、自分の物差しでしか人を計れないナチュラル自分勝手な男の役がめっちゃ似合う(褒めてる)。

彼がハマってないと”繋がれない”側の人たちの絶望感が立たないし、切なくとも美しいラストシーンが希薄になってしまう。

ラストシーンは原作通りなのかな?読んでないので分かりませんが。すごく良いですね。
『異常』なはずの夏月(ガッキー)と『普通』のはずの啓喜(吾郎ちゃん)、好対照の二人の立場が入れ替わるという非常に印象的なシーン。
異常な夏月が繋がりを手に入れ、啓喜が孤独になるという…中々皮肉が利いています。

ただ、やっぱ好みが割れる作風ではあるなーと思いました。
全編ずーっと静かで重めだし、観る人によっては退屈で、間延びしてるように見えちゃうかも。
実際、10年前の僕が観てたら『なんだこの退屈な映画!』って思ってた可能性はあるし。笑

万人受けって感じではないけど、刺さる人には刺さるんじゃないでしょうか。

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