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”音”を聴くだけで興奮が蘇っちゃうぜ、何度でもよ。「THE FIRST SLAM DUNK」感想

やーっと、観に行けた。

ちなみに、僕は遥か昔に原作履修済み。
スラダンって30代男子の必修科目ですからね。

アニメ映画?スポーツ映画?いやいや、これは音を聴く映画よ

何より先に語りたいのは、この作品の持つ「音」の素晴らしさです。

バッシュがコートを踏み締める音(スキール音っていうらしいですよ)やボールが跳ねる音が、巧みに演出に取り入れられていて。
沈黙の中で聞こえるゴールネットが揺れる音が、文字通りこちらの感動を何度でも甦らせるわけですよ。

SEはもちろん、BGMの入るタイミングも絶妙。THE BIRTHDAYの「LOVE ROCKETS」と共に始まるオープニングはテンション爆上がり。
湘北のスタメンが手書きで描かれていく様は、遥か昔に終了したストーリーがまた動き出すような感動を演出しています。

10-FEETが手がけたED主題歌「第ゼロ感」が流れる瞬間もカッコ良すぎ。
「第ゼロ感」は劇中何度か使われているんですが、インストだったりちょっとアレンジ変えていたり、イントロ始まりとサビ始まりがあったりとバリエーションも様々で。
観客を飽きさせないように工夫されていたのはお見事でした。

その他のBGMも全部カッコ良くて、観ている間なんじゃこれってなりました。
もう音楽&効果音映画ですよこれ。


リョータにスポット当てることを決めた井上先生は「天才ですから」

ストーリーは原作終盤の山王戦ですが、本作はほとんどが湘北2年・宮城リョータの視点で描かれています。

これ、リョータ視点にしようと言ったのは原作者の井上雄彦先生みたいなんですけど。この発想、控えめに言って天才でした。

リョータって、メインキャラクターの中で唯一過去が描かれなかったんですよね。
花道は主人公で過去の描写も何となくある、流川も中学からスタープレイヤーであることは示唆されている。
三井は中学時代の栄光から挫折、復活までしっかり描かれており、ゴリも3年になる前の姿が比較的しっかり描写されています。
リョータだけ、原作内で過去の描写がほとんどない。

本作はリョータの過去を深掘りし補完することは勿論、彼を軸にすることで他の人物にもうまくスポットを当てる構成になっています。

湘北のレギュラーの中で唯一2年性である彼を主軸にすることで先輩・後輩の関係性も描きやすい。
多分、他のレギュラーとの会話シーンが少ない流川目線とかだと映画が成立しないでしょう。笑

既存の人気キャラを深掘りすることで、ファンサービスと「SLAM DUNK」自体初見でも楽しめる構成の両立。これは本当天才的です。


試合シーンの臨場感・緊迫感は異常

予告公開時に賛否が別れて3Dアニメーションですけど、実際観てみると全く気になりませんでしたね。

それよりも、試合シーンにおける選手たちの流麗な動きの方がよほど驚きました。
マジもんの試合見てるんじゃないか、と思ってしまう程のリアリティを感じましたよ。

試合の後半とかマジで汗かいた。
原作読んで結末知ってるのに、山王に負けるんじゃないかと思いましたからね。笑

花道の突破な行動やギャグシーンも原作の味を損なわない程度に割愛されており、試合の緊張感を壊さないものになっています。

原作でも大人気の試合ラスト30秒の描写は秀逸。
あの原作をアニメ化するとこうなるんだ、という感動と妙な納得感に包まれること請け合いです。


強いて言うなら、1年生コンビの描き方が弱い

限られた尺間の中で、リョータの物語を中心に湘北メンバーから山王のエース・沢北のバッグボーンも描き出している本作。

2時間強と言う限られた時間の中でこの物量を描くために、原作エピソードの取捨選択には相当苦労したはず。実際、原作読者から見てもできる最大限の工夫が施されていると感じました。

ただ、どうしても花道と流川の描き方は弱いと感じてしまいました。
原作履修組は脳内で保管できるんですけど、スラダン初見勢は5人の中で花道と流川の影が薄く感じてしまう構成でした。
そのせいで、二人が活躍するラストのカタルシスは少し弱くなってしまう。
これは、リョータを中心に物語を組み立てている以上仕方ないんですけどね。

最後はちょっと不満も書きましたが、基本的には山王戦を描きつつ一本の映画を作るならこれ以上ない出来に仕上がっています。
個人的にも大大大満足で、2回目観に行きたいなぁと思っております。

興行収入100億円突破も納得の出来。
これを機に、幅広い世代にスラダン人気が広がると良いなぁ。

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