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東京駅をさまよう手土産ゾンビを救ってくれたもの

2024年は手土産の年だった。
異動前後の部署へのご挨拶の品、お呼ばれした友人宅へのお持たせ、後輩の婚約記念に渡したちょっとしたお菓子……などなど、「人にあげるためにお菓子を買う」ことがやたらと重なったのである。こんなに頻繁にデパ地下でお菓子買ったの、結婚した時以来だなあ。

基本的には、手土産選びはとても好き。その人の雰囲気や好みと自分のなかのおいしいお菓子リストを照らし合わせて最適な選択肢を考える楽しさ、実際にお店を訪れて、かわいらしいラッピングと甘い匂いの渦巻く空間に身を置くしあわせ。自分用に買うには少し気が引けるような価格帯の食べ物でも、人にあげる名目なら堂々と求めることができるのもうれしい。

半面、職場などで大勢の方へ配るお菓子を選ぶときはやや気を遣う。個包装が望ましいし、日持ちも考慮しなければならないし、あまりに貧相なものは渡せないけれど、差し上げる方の数が多いから見栄を張ると高くつくし、その中である程度どなたのお口にも合いそうなものとなると、はて……。

特に今春、異動する直前の、旧職場へのご挨拶のお菓子は、引っ越しが大詰めに入ったギリギリのタイミングではっと「そういえば用意しなきゃ!!」と気づいたため、正直あまりウキウキ感はなかった。感謝の気持ちはあるんです、ほんとです。ただちょっと今は引っ越しと引継ぎに集中したいんです……!

とはいえ私は見栄っ張り。できれば素敵なお菓子を差し上げて、センスのいいひとだと思われたい。
東京へ引っ越しの準備をしに行った帰り、私はそんな煩悩を抱いて、どうせならこの大都会でこじゃれたお菓子を買ってやろうと思い立った。新居から東京駅へ移動する道すがら、駅構内で買えるお菓子を一生懸命検索した……はいいものの、土日の東京駅ってものすごいんですのね。到着したのは夕方で、目を付けたお店はもう完売しているか、長蛇の列ができていた。比較的行列がましな、しゃれた菓子店に近寄ってみるも、そういうところは押しなべてばらまきにしては価格が高い。

新幹線の時間も、刻一刻と迫ってきている。どうしよう……、と焦ってあたりを見渡した瞬間、目に飛び込んできたのは”YOKU MOKU”の文字だった。

ヨックモック!

ふらふらと近寄ってみれば、大きな缶に詰め合わされた焼き菓子たち。今まで立ち寄ってきた、目新しい凝った菓子店のお土産に比べるとかなり良心的な価格で、しかもたくさん入っていて(私の旧職場は人数がかなり多い)、そんなにかさばらない。そして、約束されたおいしさ。

私の脳裏に、今まで職場で配られてきたヨックモックのお菓子たちの残像が去来した。シガールに、ラングドシャに、小さなクッキー。よく見知っていて、お世辞にも珍しいとは思わないけれど、手のひらに乗せてもらうといつだって嬉しかった。
あのときシガールをくれたあの人もこの人も、今の私のように悩んでいたのだろうか。大人数に配ることを考えると単価はなるべく押さえたいし、満員電車で運ぶのでなるべくかさばらないものがよくて、個包装で、日持ちして、あまり好き嫌いのない、間違いなくおいしいお菓子――。

ああ、もう、「ちょっと珍しい、凝ったお餞別を配りたい」という自己顕示欲は捨てよう。

長く愛されるものには理由がある。そのことをしみじみとかみしめながら、ショーケースの前を離れた(いちばん大きな詰め合わせ缶を近々地元で買おう、と心に誓って)。

***

もうすぐ年末年始がやってくる。手土産の季節だ。
混雑したデパ地下を延々さまようゾンビにならずにすむよう、ヨックモックの他にもお気に入りの手土産をいくつかメモしておこうと思う。

皆さんの推し手土産も、よかったら教えてください。

■GOD BLESS BUTTER

東京駅構内にある洋菓子屋さん。東京土産(ばらまき)として。

母が東京に遊びに来た際、職場(大人数)へのお土産を相談されて勧めたお店。パイ生地にチョコクリームが入った、店名と同じ名前のお菓子が、25本入り2,000円ちょっと。ばらまきにぴったりの価格帯がうれしい。

見た目もかわいい

気の利いたお菓子はあまねく高価な東京駅構内で、おいしくて、量がたくさん入っていて、東京っぽくしゃれていて……と有難い存在である。開発した人、絶対ばらまき土産のニーズを狙っている。

■THE DROS

これも東京駅構内。ワインや甘いものが好きな方に。

東京から関西へ帰るときのお土産としてはいちばんお世話になっているかもしれない。味もおいしいし、地中海の風が薫る、ぱきっと鮮やかな色合いのパッケージデザインがおしゃれ。

チーズとナッツが入ったフィナンシェが有名。結構しっかりチーズの味がするので、渡す人がチーズが苦手じゃないかは確認したほうがいいかも。ワインに合わせると幸せです。

■アトリエうかい

東京駅や品川駅、最近は関西でも買える。ちょっと改まった関係の方への贈り物として、めちゃくちゃお世話になっている。

結婚したときは職場の方からいただいたお祝いへのお返しとして、「ふきよせ」を大量に買って配った。気を遣わせない程度のサイズ感とお値段で、かわいくておいしい小さなお菓子がぎっしり詰まっていて、和紙のパッケージが特別感があって。オンラインショップで手に入るのもありがたい。

一緒につい自分用に買ってしまうのが「フールセック・サレ缶」。
塩気の効いたクッキーばかりを詰め合わせたクッキー缶である。どれもハーブやスパイスが効いていて、凝った味がする。白ワインやハイボールのおつまみにするのが好き。

■PATISSERIE TOOTH TOOTH

地元・神戸に昔からある、大好きな洋菓子屋さん。最近はレストランやフードホールなんかも続々展開していてびっくりしている。たぶん出ようと思えばいろんなところに出店できるのに、東京と西宮に1店舗ずつあるほかは、頑として神戸から出ないところがニクい。

もともとあったオレンジ×こげ茶のモダンな包装も素敵だし、相澤 樹さんがディレクションに入られてからはシックな色合いのデコラティブなパッケージがたくさん出ていて、どれもかわいい。
小さな箱に入った紅茶のパッケージが特に好き。ちょっとしたご挨拶用に、焼き菓子(おいしいんだ、これが)とセットで選ぶのが楽しくて、いそいそとお店に向かってしまう。

■チョコレートハウス モンロワール

百貨店でも結構見かける、これも神戸のチョコレート屋さん。
バレンタインの催事で名を馳せるようなショコラトリーと比べるとちょっと地味に思えるかもしれないけれど、なんだかんだここのチョコレートがいちばん好きだなあ……と、食べるたびに思う。

葉っぱの形のリーフメモリーが有名だけれど、私がいちばん好きなのは「ココアミルク」。まるいミルクチョコレートにココアパウダーがかかっただけのひときわ素朴な品なのだけれど、まろやかなチョコレートがめちゃくちゃおいしいのだ。

化粧箱入りは気の置けない人へのお土産に。
渡した瞬間の反応は華やかな品に比べるとやや鈍いことが多いのだけれど、次に会ったときに「あのチョコおいしかった!!」と言われる確率が異様に高い。

自分用にはサービス袋を。このがさっと入った気取らない感じ、愛しい。


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