【連続小説22】愛せども
リサとシュンとの三人での生活が始まってから、僕は精神的にかなり追い詰められた状態になり、飲酒の量が増えてきた。
昼間はテレアポのアルバイトに行き、上司に怒鳴られながらどうにかこなすと、プライバシーがない家に帰る前に居酒屋に寄るようになった。
旨いつまみを肴に飲むビールは最高そのものだったが、なぜこんなことをしているのか、自分の稼ぎでこんな贅沢をしていいのかを考えるうちに、不安な気持ちになった。
居酒屋を切り上げても家に変える気にはならず、コンビニで缶チューハイを買い、遠回りをしながら家に帰った。途中でコンビニで弁当を買い、駐車場のタイヤ止めの上に座り、食った。僕は誰のために、何をやっているのだろう。悲しい気持ちになった。その頃、仕事中でも気を抜けば涙が流れてくるほどだった。
数週間で金の限界を感じ、消費者金融の扉をくぐっていた。人気のお笑いタレントが笑顔で写っているポスターに囲まれた部屋を通り、個室に入る。操作の待ち時間には、青空の中を緑木がなびく美しい映像が流れた。どろどろの現実から目を背け、仮初めの楽しさや美しさを網膜の前に持ってきている感覚。驚くほど簡単に、一万円を手に入れることができた。
一万円札が紙切れのように感じることができた。これがあれば、ひとまずの快楽はだいたい得られる。そしてその間、地獄の現実から抜け出すことができる。死ぬよりはマシだ。金は、もし今の状況から抜け出すことができたら、何年か掛けてゆっくり返していけばいい。生きることが最優先でいいんだ。
この状況から逃げられる方法はないだろうか。以前テレビ番組で、出家した人を追うドキュメンタリーを見たことを思い出した。これだったらどうだろか。出家した後にリサとシュンが追ってきても、お寺なら守ってくれるかもしれない。もう自分の力で逃げられる自信はなかった。誰かに助けてもらわないと、誰かにすがらないと変えられない。これと同じ感覚を経験したことがあると思い出した。リサと付き合う前。僕は精神的に疲弊しており、何かにすがりたい思いだった。そのときと同じだ。
こうやって同じことを何回も繰り返していくのだろうか。原因が自分自身にあることも分かった。自分が変わらないと、誰かに何とかしてもらおうと思っていると、同じことが起きる。もうこんな想いは二度としたくない。
コンビニの駐車場に座り、雲の奥にある月を眺める。さっきまで温かったはずの弁当は冷たく固くなっており、さっきまで冷たかったはずの缶チューハイはぬるく炭酸が抜けていた。