大学の教職(国語)の授業をしているお話 その③
教職課程の講義「中等教科教育法国語Ⅲ」の第4回
「どんな問いを作る?」という問いから入ります。
けっこうたくさんの人が中学2年生で読んだ「走れメロス」。
冒頭部の「メロスは激怒した」が印象に残っている人もいるのでは?そういう私も先生に怒られた後に「〇〇は激怒した」とか言っていたようないなかったような…
問いを作ってもらうのは、「問いを作るとはどういうことか」を考えてもらうためです。
「メロスは激怒した」 この部分についての問いを作ってもらいます。
メロスは激怒したのはなぜか?
激怒とはどういう心情を表すのか?
「メロスは激怒した」との語り手の語りは読者にどんな読みを与えるのか?
「メロスは激怒した」とはじめた作者の意図はなにか? etc
いろんな問いが出てくると思います。その1つ1つの問いに、「そう授業で問う目的は何か」を小グループで説明し共有します。
そうすることにより、「目的をもって問いをつくる(発する)態度」と、下の画像のようなアクティブラーニング(主体的・対話的・深い学び)を実現する基本的な方法の1つを体感的に知ることができるからです。
こうして教材研究で、教材を論理的に分析し、目的を明確にして問いを考えて、それを言語化することで授業がしやすくなることに気づいてもらえたらと考えています。
以上のように問いをつくることは読解力と言語化能力を磨きますし、作品の読解とその説明をおこなうための教材研究と説明する力の向上を期待できます。すると授業に自信をもって臨むことができるようになります。
あとは、生徒との対話です。
それを実体験してもらうために、ちょっと新指導要領の「何ができるようになるか」を理解してもらった上で、「走れメロス」のほかの部分についての問いを考えてもらい説明してもらいます。その説明にいじわるな教員が質問することで「対話」を強制的に体験してもらうといった趣向です。
どんな問いが学生のみなさんから出てくるのか楽しみです。
わたしなら、たとえば下記の問いを作るかなぁ
「王は、憫笑した」「今度はメロスが嘲笑した」、この部分から王はメロスをまたメロスは王をどのようにとらえていると考えられるだろうか?
→王とメロスとの「わかりあえなさ」、つまり他者を了解することの困難さと了解されない私の絶望とが描写されている
「走れメロス」にどんな人間の姿が描かれているか、そうしたことに生徒にはアプローチしてもらいたい。わたしが小説を授業で取り上げる際に必ずおこなっているのはこの目的からの問いの設定です。上記の問いはその目的から設定したものです。
ただし、学生さんに誤解を与えてはいけないので、問いには、いろいろな目的の問いがあってよいことも学生さんのつくるいろいろな問いから体験的に理解してもらおうと思います。
言葉の意味を理解するため
文意を理解するため
因果関係を理解するため etc
すべて文章を読解するために必要な問いです。
それが理解できれば、自分の授業を目的を明確にしてデザインできるようになる(そのうち)と思います。