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【小説】千の夜と一つの朝

遠距離恋愛中の恋人と喧嘩をした。
せっかく久しぶりに会えたのに、楽しい時間を過ごすどころか、お互いに不満のぶつけ合いをしてしまい、口論が終わらないうちに帰ることになった。

泣くにも泣けずに、歩道橋の手すりにずっと頬杖をついていたら、終電の発車時刻が迫ってきた。

街灯りの滲む川面(かわも)を遠く見ながら、風が吹き抜ける人気(ひとけ)のない改札をくぐり、この風が彼を呼び戻してくれれば……と、泣きそうになった。

一人で乗り込んだ電車では、ずっと窓の外を見ていた。
見るとはなしに。
待ち合わせをした店のネオンや、いつか手を繋ぎながら歩いた公園が目に入って、あっという間に流れていった。

楽しく過ごせず終わった今日の思いを、バッグに閉じ込めたつもりで抱き締め、あなたの身体を抱き締めている気分になり、今すぐにでも、会いたくなった。

でも、戻ってきてくれるのを期待することもできず、一人暮らしの部屋に戻って、枕に顔をうずめながら、悔しさを噛みしめる。
涙は出なくても、心は号泣している。

このまま自然消滅してしまうの?
次に会えるのは、一体いつ?

泣けないつらさが眠れない夜を長くさせる。

どこかの天文台が、今日の深夜に流れると予告していた彗星が窓越しに見えて、斜めに流れ落ちた。

彗星が見えた意味は?

こんな夜を何回過ごせば、一緒に迎えられる朝が来るの?

***

この小説は、ELLIS(エリ)さんの「千の夜と一つの朝」をノベライズしたものです。

情景描写の面でも、心情描写の面でも、非常に心にスッと入ってくる楽曲です。

遠距離恋愛をしていた頃や、元夫と呼んでいる元恋人と、ずっと喧嘩をしながらデートもどきな過ごし方をした日を思い出しながら、書きました。

最後に、無料歌詞検索サイト「Uta-Net」の該当ページのリンクを張っておきます。

ファン以外のご関係者様から、非表示の依頼がありましたら、非表示に致します。


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夕月 檸檬 (ゆづき れもん)
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