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#385 ユニークな北海道大学の歴史。北大総合博物館 訪問記
いかがお過ごしでしょうか。林でございます。
昨日、札幌から帰ってきました。
今回の出張では、昼も夜も予定が割とびっしり予定が詰まっていたのですが、その分、普段はなかなかお話する機会が持てない色んな方とお話する機会を得ました。
そんな感じでかなり慌ただしく過ごしていたのですが、飛行機が遅れたりして帰りのフライト前に少し時間が出来たので、雪が降る中、北大の中にある「総合博物館」まで足を運んできました。
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北海道は、ロシア脅威への防衛と明治維新で失業した士族の雇用創出という目的で本格的に明治時代になり開拓が始まっているため、まだ250年弱の歴史なんですよね。ゼロから作ったまちだからこそ、他の都道府県とはやはり独特だと感じるところが多く、北海道拓殖銀行の成り立ちから破綻までの流れや、東急の創始者である五島慶太がどのように札幌の私鉄敷設に関わっていたかを知ると、今に繋がる歴史の分岐点が見えたりして、とても面白い場所です。
次来る時には、今の札幌に繋がる歴史を色々と解説してくれている「札幌解体新書」をしっかり読んでこようと思います。
北大の「総合博物館」は、JR札幌駅から北大が近いのでアクセスしやすく、博物館も無料で開放されています。ちょっと時間が出来た時に気軽に立ち寄るにはいい場所です。
簡単ですが、どんな感じだったか備忘も込めてまとめておきます。
開拓使長官 黒田清隆
黒田清隆と言えば、初代伊藤博文の後に、第二次内閣総理大臣を務めた人です。
日本史を学んだ時に名前を暗記したなーくらいでしたが、この方が北海道開拓に大きく貢献されています。
生まれは薩摩藩、西郷隆盛の補佐役として薩長連合をまとめ、その後の函館戦争では28歳の若さで明治新政府軍の指揮をとり、五稜郭で旧幕府軍の敵軍の将、榎本武揚に勝利します。
榎本武揚とのエピソード
この戦いの中で美談として受け継がれているエピソードがあります。
榎本は旧幕府軍が劣勢となると、捕らえていた政府側の捕虜を解放し、黒田はこれに謝するとともに榎本に降伏を勧めます。
しかし榎本は降伏を断り、代わりに「これからの日本に必要な書物が戦火で焼かれてしまうのは忍びない。新政府で役立ててくれ」と、榎本がオランダ留学の際に海の国際法と外交について書かれた書物を全て書き写した「万国海律全書」を送ります。
これに対し黒田は、五稜郭開城前夜に攻撃をやめ、灘の酒5樽とマグロ5本を贈り、戦いのための武器弾薬が不足してるなら送りますとまで申し出たそう。
榎本は、武器弾薬は断り、酒とつまみは大いに喜び仲間と今生の別れの杯を酌み交わし、黒田がこれほどの男であるならばと降伏を決意し、自らは自決を覚悟。黒田は、榎本らを決して殺すなと軍に命じ彼らを捕虜とした後、投獄された榎本らを解放せよと政府に抗議し釈放させ、榎本らを北海道開拓使の要職に迎えました。
榎本武揚は、後に第一次伊藤内閣では逓信大臣、第二次黒田内閣では逓信兼農商務大臣など、第六次松方内閣まで大臣を歴任し、人の人生は分からないものですね。
専門家招聘と人材育成をベースにした開拓
明治新政府にとって蝦夷地開拓は急務でしたが、当時の人口は6万人弱でした。
1870年に北海道開拓次官に任ぜられた黒田清隆は、北地問題を多岐に論じた建議書を提出し、開拓に長じた外国人を雇い入れ、さらに留学生を派遣することの必要性を主張。翌年には、北海道の気候に類似し、さらに独立後100年を経たばかりで開拓精神にあふれたアメリカのニューイングランドを模範とすることに決め、留学生7名を伴って渡米します。その後、時の大統領を介して農務局長官ホーレス・ケプロンら3名を迎え入れることに成功。一体、どんな外交力を発揮したのか・・て感じですね。
ケプロンの提言を受けた黒田清隆の尽力により、1872年に北海道大学の前身である開拓使仮学校が現在の東京タワー近くの増上寺に開校。ここで、北海道開発十年計画を立て、本州同等の住居地を作ることで、国の守りを固めることを目指しました。この仮学校が1875年札幌に移り、1876年にクラーク博士が教頭として迎え入れられ、札幌農学校が誕生します。翌年、マサチューセッツ農家大学の学長職に復帰するために帰国する際、あの有名な"Boys, Be Ambitious"の言葉を残しています。
黒田は、開拓の方針として、教育による人材育成に力を入れ、当時「子どもの教育にあたるのは主に母親であるから、まず女子留学生に先進教育を受けさせないといけない」と女子教育にも尽力。後に津田塾を創立した津田梅子は、北海道開拓使が募集した最初の女子留学生の一人として岩倉使節団に加わり、わずか6歳の時にアメリカへ留学しました。
黒田は、総数80名に及ぶ外国人技術者を雇い入れ、北海道の測量、農業、工業、交通、運輸、土木、教育など、各方面で活躍しました。
現在に受け継がれるユニークな国立大学
札幌農学校は、都市づくりに着手したばかりの札幌にあり重要な一画を占めていました。もともと北海道開拓を目的として作られた学校でしたが、その後の北海道の発展とともに開拓の域を超えて拡大します。一時は戦時体制のもとで自由な学風が圧殺されたりもあったようですが、戦後の大学改革などを経て現在の北海道大学に繋がっています。
北大は、イギリスの高等教育専門誌「Times Higher Education」による「THEインパクトランキング2024」で世界1,963大学中、世界72位にランクインし、5年連続で国内1位を獲得しています。
ここからは、大学内展示の写真とともに、さすが北大、ユニーク!と感じた点をご紹介していきます。
ユニークな学部や研究センター
まず、北大らしいと感じる学部の展示が面白かったです。
例えば水産学部。
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船や網、縄の展示もありましたし、興味深い研究も結構ありました。
「養殖を柱とした地域活性事業」なんて、現代風な研究テーマも見つかったり。
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現代風と言えば、「産学・地域協働推進機構」では、ロケットの展示がされていました。ロケットの筒の中身とか、こういうところでないとなかなか目の前で目にすることはありませんよね。
他にも、獣医学部とかも国立大学では珍しいんじゃないでしょうか。
高校の時に犬を飼っていた友達が、「獣医学部は北大にしかない」と言って北大に行ってたのを約20年ぶりに思い出したりしてました。
ユニークな展示
目の前で物理的に見たことがないユニークな展示物の一つに、マッキントッシュが
ありました。
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左側のタイプライターですら珍しいのに、こんなところでマッキントッシュにお目にかかれるとは。
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1990年発売開始で、本機はメモリ1MB、40MBのHDD、1499ドルのモデルとのこと。そこから30年余りで、メモリ8GB、容量512GBのiPhone 16が同じくらいの価格帯で販売される時代になりましたね。30年でメモリは8,000倍、ディスクは12,800倍です。「変化が激しい時代」とよく言われますが、改めて実感させられます。
他にも、マンモスの展示などもあります。
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だんだんと「今いるのは大学の構内だよな?」という気持ちになってくるくらい、身近なところに面白い博物館があります。皆さんも札幌に来られた際は、気軽に立ち寄られてみてはいかがでしょうか?
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