#367 スケールアップよりスケールアウト。30代以降で変えてきた仕事のスタンス
いかがお過ごしでしょうか。林でございます。
先日の木下斉さんのVoicy放送で、年代で変えるべきレバレッジをかける仕事術として、若手時代と同じような力のかけ方を中年以降でも続けるのは、持たないし、組織の中で迷惑な存在にしかならない、という趣旨の話をされていました。
20代くらいであれば、自分の能力を上げて業界の中で実績を作ることに集中することが大切な時期ですが、ずっと同じやり方をしたまま30代以降を過ごして行くのでは、自分が成せることの範囲にどうしても限界が来るように感じます。
私自身も、特に30代になって、大企業管理職の立場になってからは、結構意識的に自分の仕事のスタンスを変えてきた実感があり、今日はこの点を深掘りしてみたいと思います。
レバレッジを効かせた最近の仕事の事例
得意技を集めてチームで取り組むことで、1+1=2ではなく、1+1=10以上のこと実現できた直近の事例として、先週に取り組んだ「企業向け生成AI活用ワークショップ」の企画実行があります。
上記記事の引用になりますが、改めて、組織の力を上手く活用すると、自分一人では全く実現できないことが可能になりました。
私は、「普段の業務とは違う取り組みの必要性をストーリーと企画書にまとめて、協力者を巻き込んでいくこと」や「企画を形にするところまでの環境作りと全体の推進」、「個人の熱意を示すプレゼンとイベントのファシリテーション」が割と得意なので、このあたりを役割として担当しました。
一方で、コンテンツ作成にあたっては、社内他部署の力を借り、社外の技術営業の有識者の力を借り、会場準備やロジ周りの調整も社外の方の力を存分に借りました。ワークショップのアンケートは後輩に作ってもらったし、参加者の募集やイベント後の懇親会開催なども大いに他人の協力を得ました。
これを全部自分の力でやっていたら、一つ一つの取り組みが中途半端になるのは目に見えています。当日は、30名弱の方に参加いただきましたが、手前味噌ながら「ぜひまたやりたい」とおっしゃってくれる方が沢山いたのは、ひとえに「個人としてやりたい、必要だと感じることを伝えて、仲間と共にレバレッジを上手く効かせることができたから」だと感じました。
そして何より、当日参加いただいた方にも、かなり真剣に取り組んでいただけたこと。全ての人がリーダーシップを発揮すべき!という考え方が重要だと日頃から考えていますが、まさに参加者側としてのリーダーシップ=オーディエンスシップを発揮いただいて、その場を良い時間にしよう!と思ってくれていたのも大きいと思います。
ワークショップそのものが盛況に終わることも、もちろん初回の取り組みとしては大変重要な事実ではあるのですが(初回がしょぼかったら、二度と機会を作ることはできないため)、大事なのはこれからです。
初回のワークショップでしっかり議論を深める時間を作ったのも、今後より具体的な取り組みとして実行に移して行くための、実践のレバレッジをかけるための仲間作りのプロセスの一つとして捉えています。
当日、色んな立場の方の話を聞かせてもらって「なるほど、そうなってるのか」と私が最も勉強させてもらいましたし、このような場を持つことの重要性に共感いただく仲間を作ることが、ある意味、30代以降の仕事の仕方として意識していることです。
スケールアップよりスケールアウト
スケールアップとスケールアウトは、ITシステムの全体の処理能力をどのように上げるか、というアプローチの違いを指す言葉です。
スケールアップが「サーバのCPUやメモリなどのスペックを上げて処理能力を高めること」を指すのに対し、スケールアウトは「サーバそのものの台数を増やして、分散処理によりシステム全体の処理能力や可用性を高めるアプローチです。
私一人の人間がいかにハイスペックに能力増強しようと、お分かりの通り限界点は結構すぐそこにあるんですよね。
小さな子どももいて1日の全ての時間を仕事に捧げるなんて到底無理ですし、20代の頃に多少時間的な無理をして力技・人海戦術で何とか出来た仕事の仕方を、今後も未来永劫続けるのも現実的ではありません。
だから、仕事を通じて自分が「せめて自分が関わった世界に関しては、少しだけこういう感じになったらいいな」と考えることを発信し、思考に共感してもらった人と分散型・全体感でより大きなことに取り組んでいくアプローチを取ることで、全体の方向性・流れを形成していくことが必要です。
「スケールアウト」であれば、自分一人が動かなくても仲間が動いてくれますから、案件1つに対する自分の関与度を下げることができ、そこで空けた時間で別の取り組みを立ち上げることができます。
もちろん、「スケールアウト」は意識的に取り組まないとできません。
以前も記事にしましたが、「スケールアウト」で必要不可欠なのは「ビジョン」と「言葉」です。
誰かに共感してもらえる考え方・ストーリーを常に考えていないといけないし、それがより「伝わる」言葉を探し求めないといけません。noteでの発信も一つの手段ですが、常に物事を考えて「自分はこう考える」を普段から言い続けていく必要があります。
私がこうやって思考や意見を発信しているのも、30代になり、仕事のスタンスを変えた一つの結果でもあります。
マネージャーの仕事は、若い人に実績を作ること
私自身も20代はかなり仕事に力点を置いたので、業界の中では「このプロジェクトを完遂した人」と言うことで実績を作り、NHKで取り上げられて、不意打ちのぼーっとしていた顔が放送されたりもしたのですが笑、振り返れば、私に実績を作ってくれたマネージャーがすぐ近くにいたんですよね。
自分がマネジメントの立場になり、当時のマネージャーのことを凄まじいなと思うのは、若い人と一緒にプロジェクトに取り組んで結果を出して「これは私がやったんだ」という仕事を作ってくれてたことに気付いたことです。
20代の頃、「これは自分がやった!」と思える仕事も、実は裏でマネージャーのお膳立てがあり、私はそれを実績と自信に変えて、そこで学んだことを別のプロジェクトで体現したり、考え方を後輩に伝える側に回りました。
でも、自分がいざマネージャーの立場になってみると、「これは私がやった!」という実績をメンバーに持たせてあげることってとても難しいです。
ただ、このアプローチこそが究極のスケールアウト仕事だと考えていて、「自分でやった方が早いから自分でやる」という選択ばかりしていては、到底スケールアウトはできません。
必要以上に口を出し過ぎても「私は上に言われた通りやっただけ」となるし、多少失敗してお客さんからお叱りを受けることもあっても、致命的にはならないだろうということについては、覚悟を持って任せていかないとダメなんですよね。
少なくとも、「これがやりたい!」と言っている若い人の邪魔だけはしない。こんな声すら潰してしまうのは、老害以外の何者でもありません。
奥が深いスケールアウト仕事術。
これからも、マネジメントの仕事を通じて、「こうなればいいな」と考えることに共感してもらえる多くの仲間と共に、分散型でより取り組みを広げていきたいと思います。