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#405 PIAAC調査結果に見る実践的な学びの重要性

いかがお過ごしでしょうか。林でございます。

先週、文科省 国立教育政策研究所が、国際成人力調査(PIAAC)の調査結果を公表しました。
これは、OECDが中心となって実施する国際比較調査の一つで、16〜65歳の「成人力」と「社会的・経済的成果」との関係を分析するための調査です。

第一回調査は2011年に実施されたということで、今回公表された第二回調査は、その約10年後となる2022年に試験が行われたものです。

成人力とは、「課題を見つけて考える力」や「知識・情報を活用して課題を解決する力」など、実社会で生きていくのに必要な総合的な力と定義されています。
具体的には、「読解力」、「数的思考力」、「状況の変化に応じた問題解決能力」を指しており、成人のこれらの項目について多くの国が参加して国際比較を行う機会はPIAACのみです。
本調査は、日本の教育訓練システムのどのような点を改善すべきか議論するための情報を得ることが目的ということで、私も本調査結果から考えたことをまとめてみたいと思います。


優秀な現役世代

2022年のPISA(OECD生徒の学習到達度調査)の調査結果と、日本生産性本部が発表しているOECD加盟国内の生産性ランキングの結果から、「高校までは、平均的に非常に高い能力を持っているけれど、大学レベルになると国際的にその勢いがなくなり、そのまま社会に出ても労働生産性は平均以下に落ち込んでしまっている」というように理解していました。

しかしながら、日本の生産性が低くなる要因の一つとして、高齢者層の割合が国際比較でも高いという人口動態の影響も多分にあるようで、私たち現役世代の国際比較における能力という意味では、もっと自信持って「ガンガン行こうぜ」モードで突き進めばいいのだと捉え直しました。

というのも、31カ国・地域から約16万人が参加(日本では5,165人が参加)した今回のPIAACの調査結果によると、「読解力」、「数的思考力」、「問題解決能力」のいずれにおいても、日本は1位のフィンランドに次ぐ第2位で、1億人を超える国の規模で第2位になっているということは、実質的にトップであると考えられるからです。

引用:OECD 国際成人力調査 第2回調査のポイント
https://www.nier.go.jp/04_kenkyu_annai/pdf/02_PIAAC_CY2_point2.pdf

色々と課題もありますが、それだけ多くの人の平均能力を高いレベルに引き上げている日本の学校教育システムは、世界的にも高水準であると解釈できます。

だから、全体アベレージとしての能力で言えば、国際比較でも遜色ない前提で、もっと自信持っていこうと思える調査結果になっています。これまで仕事でお付き合いをしてきた日本のお客さんも、ビジネスパートナーさんも、ともに現役世代なので、もっと自信持っていけばやれることも広がりそうです!

基礎能力は遜色ないが、経済の伸び悩みの理由は何か?

一方で、基礎能力は世界トップレベルという調査結果になっているにも関わらず、国の経済成長にそれほどの勢いがないのは何故でしょうか?
上述した人口動態も理由の一つではあるでしょうし、GDP成長率が5〜6%の高いレベルで伸びている新興国との比較においては、より中長期で見た時の、国の成長ステージによるものというものもあるでしょう。

ただ、そのような要因を除いてより具体に落として考えると、基礎能力をそれぞれの個人の稼ぎに変換するための実践の機会の不足が最も大きいと考えています。
ある意味「宝の持ち腐れ」的な面もあって、会社員・公務員が9割を超える時代において、組織の中で活かしきれていない高い能力が一定存在しているはず、という指摘です。

本当は、自営でやれば高い基礎能力を活かしてより高いパフォーマンスを出せる可能性を秘めた人も、「とりあえず就職で有利だとみんなが言うから、大学までは行くか」と考えて大学まで行く。周囲が被雇用者として企業や役所勤めを選択するから自分も選択して、何となく全体感が分からない中で割り当てられた仕事をこなし、集団における「2:6:2の法則」の中で頭打ちとなってしまっている潜在能力がまだまだ眠っているのではないか?という仮説です。

その流れをいかに打ち切るかを考えると、やはり「みんなが何となく大学を目指し、企業や役所勤めを選ぶ」キャリアの呪縛にいかに縛られないようにするか、というのが攻め所だと感じています。
それには、小さくても何かを自分で1から企画して最後までやり切る経験が積める実践的なプロジェクトワークがやはり効果的だと考えます。自分で何か必要と思うことを1から企画して実装まで持っていくということに対する心理的なハードルが多少下がるだけで、会社員や公務員の道を選んだとしても、パラレルで自営型の活動に取り組む動きが加速できるのでは?と考えるからです。
もちろん、全員がそうはならないと思いますが、そういうキャリア・人生観がより一般的になると、普通の会社勤めだけでなく、自分で稼ぎを生み出して収入を上げていく選択肢も増えて、経済活動も活性化するのではないかなと。

必ずしも直接的な稼ぎを生み出す取り組みでなくても、最初から最後まで事業を組み立てる経験があるかないかで、本業の捉え方も全く変わってきますよね。

実践的な学習を促すプロジェクトワーク

「読解力」、「数的理解力」、「問題解決能力」で世界トップクラスなので、あとは実践的な学びの回数をいかに増やすか、なのかなと。
ここは場数が勝負の世界だと思っていて、小学校〜高校までの過程でのプロジェクトワークの機会が増えると良いと考えています。

自身の体験で言えば、大学生になって、もっと言うとゼミに入れる大学2年生後半になってはじめて、仲間うちで議論したり、他大学との合同研究でプレゼンする場を持って、課題学習の面白さを知りましたが、もっと早い段階で、机上だけでなく実践を通じて体験的に学ぶ勉強が始まってもいいと思ってます。
というか、この期間で他者とディベートするとか、フィールドワークで外に出るプロジェクト型の学びがあることで、「学ぶ=楽しいもの」と感じられるかどうかが勝負です。

私も、もちろん受験勉強などではそれなりに勉強しましたが、当時は質よりも量に目がいってました。テストに出る範囲を○○時間勉強したから大丈夫、みたいな感じです。
しかし、大人になってから、特に自分で文章を書き始めるようになってからは、「自分の仕事」とは直接的には関係なさそうに見える世の中のあれこれに興味を持つようになって、それまでならスルーしていた偶発的なトピックに対しても積極的に興味を持ってみるようになりました。

↓の記事のような温泉街のまちづくりや、地域でお金を落とす場所を作る仕組みは、本業のIT関係の仕事だけではなかなか触れられない世界ですが、ここで学んだ考え方が本業でもクロスできることはたくさんあります。

同じように、実践的なプロジェクトワークからの学びが教科学習のモチベーションになることもあるだろうし、職業選択・人生選択の幅を広げることは間違いないです。

このようなプロジェクトワークを進める上で必要な能力、それを活用したプロジェクトワークの形について、引き続き考えてみたいと思います。

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林 裕也@IT企業管理職 ×「グローバル・情報・探究」
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