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#234 できないことをお願いしながらチームで仕事を進めるポイント

いかがお過ごしでしょうか。林でございます。

先日、「自分ができないことは他人には求めない」というテーマで記事を公表した際に、「とは言え、個人でできないことを他人にお願いして、チームで進めるのが仕事だから匙加減が難しいですね」という趣旨のコメントをいただきました。

こちらの指摘はごもっともで、個人や組織単位でそれぞれ得意分野と苦手分野がああって、それぞれの得意分野が一番活かせる形で、苦手分野は得意な人がカバーすることで何かを実現するのが仕事です。

私自身も、自分、あるいは自組織、自社が得意な領域もあれば、当然ながら自分では何ともできないことは、他人や他社にお願いしながら仕事を進めることが沢山あります。

そこで、まずは前回の記事に対して少し補足をした上で、自分ができないことをどのように他人にお願いしながら仕事を進めているのか、というテーマで議論してみたいと思います。

「自分ができないことは他人には求めない」の補足

まず、前回の記事でご紹介した例は「自分は職場で挨拶しないのに、若手は元気に挨拶すべし!」は違うよね、という話でした。

ここで重要なのは、挨拶というのは「それを求める側も、(能力的には)できること」という前提です。
「おはようございます!」と元気に挨拶することを自分はしないのに、「若手や新人はすべきだ」というのはおかしいと考えています。
むしろ、組織の風通しをよくして、円滑なコミュニケーションが図られる組織にすることはマネジメントの仕事なので、マネージャーこそ率先して誰よりも元気な挨拶をして、メンバーも自然と挨拶できるようなチームにしていくべし、です。

また、他人に何かを求めるのであれば、「これは自分で背中を見せることができる」と自信を持てることだけにしましょう、という話もしていますが、他人に何かを「求める」のと、他人に何かを「お願いする」というのは、同じようでいてニュアンスが異なると考えています。

「求める」というと、相手への期待事項があって「そのレベルくらいやってほしい、できて当然」というようなニュアンスを含みますが、「お願いする」というのは、同じく相手への期待事項があるんだけど「自分にはそのためのスキルや知識が不足している、もしくはそれに割くための時間がないから、やってほしい」というニュアンスになるかと考えています。

前回話したのは、前者の「求める」ケースで、相手に対して「それくらいのことはできるようになってほしい」というスタンスで接するのであれば、自分でもそれを示した上で求めましょう、という趣旨になります。

私自身も、過去に厳しい上司から指導された経験がありますが、例えば「海外現地での会議の議事録はナマモノだから、会議があった次の日の午前中までには日本側の関係者にも共有しなさい」と言われたことがあります。
多分、それを言われただけでは「そんなこと言っても他の仕事もあるし難しい」と心のどこかで反発や言い訳が生じていたと思いますが、その上司自身も、現地で一人臨んだ会議の議事録は、その言葉通りタイムリーに日本側にも共有されているのを見て、「ああ、これはやるしかないな」と感じたのです。

このように、他人に「これくらいやってほしい」と、一定のレベルを「求める」のであれば、自らも実践して見せることをしないと「じゃあ、あなたがやってください」と不信感に繋がってしまいますよね、という話でした。

自分一人でできないことをチームで実現していくには

その上で、私自身がチームを率いて、自分ができないことを他人に「お願い」しながら仕事を進める上で、何を心がけているか、について言及します。
私は、ITシステムのアプリケーションエンジニアで、お客さんの業務プロセスを改善するためにどういうサービスをデザインすれば良いか、ということを仕様書にまとめ、複数社に発注して全体をマネジメントしながら実現に向けて進めていく、という仕事をしています。

東南アジアやヨーロッパのエンジニアを含め、100人以上のチームのリーダーを率いた経験も複数回あり、色んな失敗を通じて多くのことを学ばせてもらいました。
そこで重要だと考えているのは、3点です。

1. 役割分担をはじめに明確にしておく

まずは、複数の人や会社に期待する役割を事前に明確にしておくことが重要です。
冒頭話した通り、それぞれの得意分野を活かして、苦手分野は補いながら事業を形にするのが仕事です。とはいえ、誰が何をどこまでやるのか、と言う話は、実タスクまで詳細化されて行った時に、認識齟齬が出やすいです。

だから、予め責任分解点を明確にしておき、「ここまではこちらの仕事」「ここからはあなたの仕事」という線引きに対して双方合意するプロセスが必要です。
これは、受発注関係における発注側と受注側の立場でも同様で、「お金を払って仕事を発注したのだから、お願いした仕事に何らかエラーがあれば、全て受注側の責任」という話ではないということです。

発注した側は、何らか達成したい目的があってその仕事を発注しているわけですから、仕事を発注したからと言って当然そこでその仕事が終わりになるわけではなく、受注側の仕事がスムーズに進むように支援する役割があります。

例えば、受注側が必要な情報については、スピーディに提示すること。発注する仕事のスコープや最終アウトプットのイメージは、明確に「決める」という役割です。
発注する側(上司部下の関係であれば、仕事をお願いする側)と受注する側(上司部下の関係であれば、仕事を振られる側)それぞれが、役割と責任があり、それぞれの役割を明確化するところが出発点です。

2. 役割は全うする

次に、決められた役割は全うすることが大切です。
当たり前のようですが、現実にはなかなか出来ていないことの方が多いように感じます。
例えば、受発注の関係であれば、発注側は「要件を決める」「何がしたいのか明確に伝えて、結果に責任を持つ」役割があります。
しかし現実には、発注側が何かを決めて仕事をお願いし、後に何らかのエラーが明らかになった場合に、その責任を受注側に押し付けることが仕事だと思っている人がいます。
あるいは、後に受注側に押し付けられるように、予めリスクヘッジをしておくことが仕事だと思い込んでいる人がいる。
受発注の立場が逆になっても同じですね。つまり、受注側の仕事が上手く進まなかった時に、どうにか発注側の責任にするための抗弁をまくし立てる能力に長けている人もいます。

ビジネス上、責任分解点を明らかにするのは重要ですが「上手くいかなかった時の保身のためのリスクヘッジ」によるスタンスというのは明らかですから、いい仕事をするためにより重要な信頼関係を破壊している、ということに気付いていないのでは?と感じるシーンをこれまで何度か見てきました。

後にその決断が誤っていた、となる可能性があっても、オーナーシップを持って「自分が決める」という覚悟があると分かれば、必ず後から助けてくれる人はいます。全くいないのであれば、そんなビジネス環境からは脱却した方がいいでしょう。

3. 共通のゴールを明確にする

2で述べた保身とリスクヘッジの例で抜けている観点は、「上位目的」です。
つまり、基本的に仕事というのは、社会に対する何らかの価値貢献であり、それを自分一人で出来ないから他人にお願いしながら進めるもの、という考えに立つと、この「社会に対する価値貢献」が「上位目的」になります。

全体の決まった予算の中で、決められたスケジュールで何らかのサービスをデリバリするためには、「自分と他人が共通のゴールという同じ方向を向いていて、それに向けてどう自分ができることを考えるか」というスタンスが必要です。
しかし、「この仕事が上手く進まないのは、この人(会社)のせいだ」とお互いに責任を押し付けあっている構図では、共通のゴールを見ているとは言えず、むしろ矢印がお互いの方を向いてしまっていますね。

これでは全体のプロジェクトが上手く前に進まないのは必然でしょう。

交渉術の分野では、よく出てくる概念の「上位目的」ですが、共通して目指したいゴールを明確に示した上で、他人の力を借りたいところは「お願い」する
仕事の進め方に対して何かの意見を言うことを「コメントする」「指摘する」という言葉が漠然と使われがちですが、きちんと言葉を使い分けて「お願いする」という言葉を明示的に使うのが大事だと考えています。

「コメントする」や「指摘する」には、「お願いする」のニュアンスが含まれず、冒頭の話で言うところの「求める」のニュアンスにも捉えられる概念を含みます。しかし、「求める」になった途端に「そんなに言うならあなたがやってください」話になってしまいます。

お互いの共通ゴールを言語化して明確にした上で、お互いの役割分担を規定して、決まった役割を全うする。自分にできないことは「お願い」する
これが、私が実践から学んだ、チームで仕事をしていく上でのポイントです。

それでは、今日もよい1日をお過ごしください。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

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林 裕也@30代民間企業の育児マネージャー
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