【検証】AI時代に「現場取材」は必要か?試しにコタツ記事をチャットGPTに作らせてみた話
AIの時代が本格的に始まりました。私たちメディア業界にも、少なからぬインパクトを与えそうです。
メディアの仕事といえば、取材をして記事を書いて発信するのが花形。その本丸とも言える「取材」が、AIに取って代わられる可能性について検証しました。
メディアとAIの現在地は?
けさ、Yahoo!ニュースアクセスランキングを見てみました。午前9時時点でランキング上位にランクインする記事は、ほとんどが「〜(有名人)がSNSを更新した」「テレビ番組で〜のシーンが賛否」というものばかり。
Wikipediaによると、こうした記事のことを「コタツ記事」と呼ぶそうです。
このようなコタツ記事って、もしかしたら何の苦労もなく、優秀なAIの手にかかれば書けてしまうのでは?との仮説から、試しに検証してみることにしました。
試しにAIにやらせてみたコタツ記事執筆
作業時間、ものの1分。しかも帰宅中の電車の中で、スマホ片手にできたのが上の記事です。ガンニバルの説明部分や、女優に対して「支持の厚さを物語っている」という表現には違和感があったりと・・・多少はいじる必要があるものの、何となくそれっぽいものが出来上がりました。
このように、ほんの少し手直しするだけでいいレベルの「コタツ記事」は、AIで簡単に作れそうです。ヤフーのアクセスランキングには、実際にAIが使われた記事も何本かランクインしているかもしれません。
このままいくと、AIが大量の記事を執筆する時代になるのでしょうか?逆に、AIには絶対できない取材ってなんだろう、と考えてみました。
人にしかできない取材とは
私も6年間ほど、記者の端くれをやっていたことがあります。その時の経験を振り返ってみると、まず人へのインタビューは、AIには絶対にできない。もっと言えば、コタツではなく現場取材が望ましいです。zoomなどリモートでも、取材のクオリティはかなり下がると感じます。
その理由の一つは、「情報量」です。たとえば現場へ行って、対面で取材することで、必ず「雑談」が発生します。この雑談で話した内容が、記事の中で大きなウェイトを占めることも少なくありません。
もう一つは、「感情」です。私もたくさんの人にインタビューしました。不思議と私がインタビューする相手は、カメラの前で自然と涙することが多かった。取材中に涙を流した、という事実は、それだけで多くの示唆を与えてくれます。zoomでのインタビューで、相手が涙を流すということは…皆無ではないでしょうか。感情を引き出し、感情を記事にして伝えるのは、人が、現場で、取材をすることで初めて可能になります。
会議室を飛び出して現場を見に行くという仕事は、生成AIにはできない
先日、こんな記事を読みました。
記事にはこう書かれています。
そして、この一文。
ーーーアパレルでも「何を買ったか」より、「試着したのになぜ買わなかったか」を知る方が価値がある。
つまり、データから導き出される情報よりも、"買わなかった理由を聞くこと"に価値があると。・・・まさにこれは、「現場取材」の真髄と、まったく同じだと感じました。
AIとの理想的な付き合い方は
生成AIはインターネット上にある膨大な量の情報をインプット(学習)して、それらから導き出される「確からしい」ものをアウトプットする仕組みです。
一方でプロの記者がやっている「現場取材」は、取材を通して徹底的にファクトを集めて、その中から適切なものを取捨選択して、並べ替えて…最終的に、記事というアウトプットをするプロセスです。
そのように考えると、AIの上位互換を、プロの記者は毎日、やっているのではないかという気がしてきます。
また、そもそも生成AIがインプットする学習内容の多くは、元を辿れば誰が、この世の中に送り出しているでしょうか。
AIは、アクセスできる情報、つまり光に照らされた状態にある情報を、わかりやすく整理し、まとめてくれます。
プロの記者がやる「現場取材」では、これまで世の中になかった情報、つまり光に照らされていない状態にある情報を、掘り起こし、明るみにしてくれます。
つまりAIと現場取材は、光と影の保管関係にある、と言えそうです。
勝手ながら結論としては、「現場取材」はメディアのプロフェッショナルにとって、代えの効かない絶対的なものであり、メディアの生命線であるということです。優秀な記者であれば、闇に埋もれたAIでは絶対に辿り着けない事実を、明るみにしてくれます。
理想を言えば…優秀な記者のこの働きにこそ、最大限の報酬が与えられれば良いのですが。残念ながら今のネット空間では、それを適正に評価してくれる指標がありません。そのため、いつもランキング上位には「コタツ記事」が並ぶ結果となっているわけです。