面接の達人になる!人を見抜く力を鍛える究極の人選術
はじめに
ご覧いただきありがとうございます!
株式会社M&Aクラウドで人事をしている仙波です。
今回は『人を選ぶ技術』について書かせていただきます。本記事は私の読書感想文的な、学びをシェアする記事であり、網羅的な本の要約記事ではありませんので、その点あらかじめご了承下さい。
(また、いつも図は自作でしたが、今回はYouTubeにとても綺麗な図はあったため拝借いたしました。最後に引用元のリンクも貼っているので、ご容赦ください…)
※流行りのChatGPTにタイトルを変更してもらいました(2023/04/09)
今後も定期的に本の感想や日々の学びをシェアしていく予定ですので、もしよろしければ「スキ」と「フォロー」をしていただければ嬉しいです!
「人を選ぶ」ということの意義
いきなりですが質問です。
おそらく「人を見る」ことについて
・どんなに頑張っても他人の本当の能力なんてわからない
・なかなか見極めるのは難しい
・自己流になるのはやむを得ない
そんな風に諦めている人が多いのではないでしょうか。
しかし、ここで一歩引いて考えていただきたいです。
人の見極めは、その後の社運や、ひとりひとりの人生を左右するほどの大きな影響を与えかねない、とても大事なアクションではないでしょうか。
ところが多くの人が、それを経験則や勘に頼っています。
それもまた人生。と笑い飛ばすことは簡単ですが、大きな視点で俯瞰して見ると、ミスチョイスの繰り返しは、一人の人生に留まらず、社会経済全体における大きな損失ともいえます。
だからこそ、誰もとっても「人を選ぶ技術」が必要なのです。それは「人を見る目」を身につけることの最大のメリットは、所属組織が組織が良くなることでなく、自分自身が幸せになることに他ならないからです。
「人を見る目」を分解する
「人を見る目」は誰に対して使えるか?
「人を見る目」の適用範囲はプライベートからビジネスまで幅が広いです。そしてその重要度は、人生やビジネス上のステージによって変わってきます。そのダイナミズムを、人間関係のインパクトを表した図によって説明します。(下記図)
なお、この図で特徴的なのは、「影響度と選択度の大小が正比例している」ということです。そう考えると、横軸の「選択しやすい」というのは、「選択が簡単」ということではありません。むしろ選択が難しいからこそ、人はプライベートにおいてもビジネスにおいても、人を選ぶことに苦労しているのです。また、ビジネスにおいてはキャリアステージごとに、人を見る目の重要度がどんどん高まってくることも見て取れます。
「人を見る目」は何に役立つのか?
「人を見る目」によって見極めれるものは大きく二つあります。
①相手の能力について推し量る「人としての優秀さ」
→いわゆる「できる奴・できない奴」
②相手が人にもたらす影響について推し量る「人としての害の有無」
→いわゆる「いい奴・いやな奴」
本書では、2軸で区切ったマトリクスの各象限別に「人を見る目」がどのように役に立つのか、また、気をつけるべき点は何か、が記載されています。
ここでは端的にまとめると、パターン①④を見極めるために「人を見る目」が役に立ちます。
①を見逃すことは会社組織であれば利益の損失に繋がり、結婚相手探しであれば人生の損失に繋がる。
④を見逃し登用してしまうと、静かにトラブルの芽を育ててしまいがちで、問題が表面化した時は手痛い損害を被る場合がある。
(例)ブリリアントジャーク
「優秀認定」と「有害認定」は難しい
優劣の判断における一つの落とし穴は、優秀な人は時に「平凡」の仮面を着けて現れることです。人はついつい風貌や来歴で相手を判断してしまったり、無意識のうちに偏った評価軸で人を見てしまったりするため、本来優秀な人を見逃してしまうことがある。
また、優秀で無害な人を見極めること以上にはるかに難しいのが「優秀で有害」な人です。なぜなら、本当の悪人は悪人の服を着て歩いているわけではないからです。むしろ善人の服を着ている場合の方が多いのです。
ここでは、誰もが無意識的に持ちうる「認知バイアス」のうちよくある二つの例を取り上げます。
①ハロー効果
シンプルでよくある例は、「ハロー効果(一部の特徴的な印象に引きずられて、全体を評価してしまう心理現象)」と呼ばれる認知バイアス。
(例)学歴(および職歴)差別による逸材の見逃し
②確証バイアス
同じく頻度高く発生している例は、「確証バイアス(無意識のうちに自分の意見や仮説を支持するような情報を優先的に探す)」と呼ばれる、誰もが大なり小なり持っている認知バイアス。
(例)営業系カルチャーの会社での、謙虚で優秀な逸材の見逃し
人を「階層」で捉える
ここまで読んでいただいた方は、「人を見る力」の重要性を理解いただけたかと思います。では、どうやって「人を見る力」を鍛えれば良いのでしょうか。
答えは、まずある程度の「型」を体に入れておくことです。
スポーツや武術と同様、人を見るための思考の枠組みとなるフレームを持って初めて、なりゆき任せではない、意思を込めた試行錯誤が可能となり、習得が進むのです。
では、ここからは、世界最先端のトップファームで磨かれてきた筆者の秘伝の知恵を解説していきます。
地上階「経験・知識・スキル」
地上1階にはとても見やすく、わかりやすく、変わりやすい「経験・知識・スキル」が格納されています。これらは履歴書から簡単に読み解くことができ、誰が見ても、誰が聞き出しても、比較的見間違わないものであり、ファクトとして伝えやすいです。
しかし、残念ながら、ほとんどの面接は、この階層を触るだけで終わってしまっています。建物の1階だけを見て、全体を見た気になってしまっているのです。
地下1階「コンピテンシー」
もう少しきちんと見極めをしたいと思い、相手の地下へ潜ると、そこには「コンピテンシー」が広がっています。コンピテンシーとは、その人が「どんなシチュエーションで、どういうアクションを取りがちか」という、固有の行動パターンだとご理解ください。
相手のコンピテンシーがわかると何が良いかというと、相手の「将来の行動を予測」するのに使えるということです。ビジネスの現場で人を見極める際には、大体5~7個のコンピテンシーを取り扱う(下記図)
これらのコンピテンシーを見抜くための必須技術があります。それは「エピソード・ベースのインタビュー」です。詳細は割愛しますが、相手の「意見」ではなく「取った行動=ファクト」にフォーカスし、知りたいコンピテンシーに関する話題が出てきた際に行動を掘り下げていくことが重要となります。これによって、相手のことをより立体的に理解することができます。
間違っても、「あなたは戦略的ですか?」「戦略志向を示すエピソードを教えてください」のように質問してはいけません。このように質問すると相手は必ずそれに合わせて、それなりの話をしてきます。初デートでいきなり「あなたは誠実ですか?」と聞くようなものです。
地下2階「ポテンシャル」
ここからはいよいよ、本書の肝となる深層世界に足を踏み入れていきます。
まずはこちらの図をご覧ください。
人は「変わりやすい部分」と「変わりにくい部分」があると、最初のフレームワークで示しましたが、地上階「経験・知識・スキル」と、地下1階「コンピテンシー」はどちらかというと、物心がついてから、学習と体験を通じて形作られるもので、変化していくものです。いわば、コップに注がれる水。
では、コップそのものについてはどうでしょうか。
それが地下2階の「器=ポテンシャル」です。
この器がどれだけの容量を持っているのか。その中に注がれたものが、どれくらいの量か。この二つが分かれば、さらに加えられる量(=伸びしろ)が分かります。
この人の「伸びしろ」について、エゴンゼンダーがハーバード大学などとともに長年科学的にリサーチし、2014年に初めて世界に公表したコンセプトがこれから解説する「ポテンシャル・モデル」です。
下記図は人の器=ポテンシャルの大きさ、伸びしろは「好奇心」「洞察力」「共鳴力」「胆力」の4つの因子で測ることができると表しています。
ここで注意してもらいたいのは、便宜上「〇〇力」と表現しているものの、見るべきは能力ではなく「エネルギー」だということです。
ここでいうエネルギーとは、元気で声が大きい、気合が入っているなどの類の「出力」を指すものではなく、本人からすると無意識で、時に無自覚に、自然と沸き起こる「熱量」のようなものです。
そして、好奇心、洞察力、共鳴力、胆力の4モデルごとに相手を掘り下げて、全体のエネルギーレベルを統合し評価すると、器の大きさが測れます。それによってその人の「ポテンシャル=伸びしろ」が見えてきます。
では最後に、「人物評価はコンピテンシーで十分では?」という疑問への回答をまとめておきます。
言うまでもないですが、今の時代は非常に移り変わりが早く、不確実性は増すばかりで、過去を評価した指標だけでは不足となってます。今年、あなたの仕事の役割に求められている能力が、2~3年後には不要となり、新しい能力が求められることがないとは断言できません。
だからこそ、いくつになっても、自分自身を変革でき、抜本的な考え方を変えられ、力強く成長することができる「ポテンシャル」を持っている人こそが、誰からも、どこからも、望まれる人材であり、そんな人材を見極める力が求められるのです。
地下3階「ソース・オブ・エナジー」
大企業のトップマネジメントを評価する上では地下2階まで十分だったのですが、筆者が日本の独立系ベンチャーキャピタルへ転職し、多くの起業家の方とお会いするようになってから、地下2階までの理論では説明がうまくいかないケースが体感的に増えてきたそうです。
新しい未来を作る天才たちが共通して発する、何とも言えないあの感覚はなんなのか、そうして言語化し、筆者が提唱し始めたコンセプトが「ソース・オブ・エナジー(エネルギーの源泉)」です。
言い換えるならば、その人の精神性。
このソース・オブ・エナジーとは、ヒリヒリするような頑張りを生む力。それは「使命感」であり、「劣等感」です。(下記図)
稲盛和夫氏は「考え方×熱意×能力で人生と仕事の結果が変わる」と言う言葉を生前に残されましたが、その「考え方」の部分に近いものかもしれないです。
どんなに知識や経験を重ね、コンピテンシーを磨き、生まれ持ったポテンシャルが高くても、事を成す人となるには、行動の源泉である「使命感」や「劣等感」の強さと、矢印を他人や環境ではなく、自分に向けられるか否かにかかっているのです。
地雷を踏まないための知恵
EVILな人を特定することの重要さ
最後に、序盤で話に上がった「優秀で有害な人」のくだりで触れた議論をここで深掘りしていきたいと思います。これは「人を見る目」の大切さについて、痛いほど理解することにつながるテーマだからです。
「EVIL」とは、悪い、よこしまな、邪悪な、などの意味を持つ英単語ですが、おそらく日本人の多くが想像する「悪い人間」とは少し違います。
本章で扱うEVILとは、表向きは善人の顔をしており、罪を犯すわけでもないし、モラルに反してもいないです。しかし、周りに大きな悪影響を及ぼす、害を与える、そういう「無自覚な悪意」がEVILです。
まず、EVILの定義や分類へ進む前に、なぜ人を見る際にEVILの存在を理解しておくべきか、避けるべきかについて説明します。
それは、一言で言うと「能力が高い・低い」を見分けるだけでは不十分だからです。EVILな人は全体に対しての比率は多くないものの、個人や会社、社会に与える影響がものすごく大きいため注意が必要です。
こちらの図で表している右側の「人として悪」のエリアにいる人がEVILです。これを見ると2パターンのEVILがあることがわかります。
③平凡なEVILは、見た目的にも行動的にも、"悪いやつ"感を発露しがちなのでわかりやすいです。見つけたら避けるか、排除するか、そもそも近づかなければいいだけです。(会社なら面接で落とす)
問題なのは④優秀なEVILです。
優秀なだけに、悪意がわかりやすい形で発露することがなく、一見しただけでは善人と思われやすいです。かつ、仕事ができたりコミュニケーション能力も高かったりするので、被害者が訴えてもEVILの上司たちは「そんなはずないだろう」「彼は成果を出しているからな」「まあ色々あるだろうけど頑張ってくれ」など曖昧にされがちです。なぜなら、そのEVILは、多くの利益を生み出す存在だからです。
確かにそのような人が結果を出すことで、短期的には利益が出ます。しかし、中長期的には大変なマイナスになってしまうのです。
ジョージタウン大学准教授のクリスティーン・ポラス氏によると、EVILな社員は、スーパースター社員2人分以上が生み出す利益を簡単に吹っ飛ばしてしまうそうです。
EVILの分類
優秀なEVILは2つのタイプに分けることができます。
上記のようなわかりやすいタイプでない場合にも、優秀なEVILには、サイコパス気質の高さや、傲慢さなどの特徴があるので、注意。
また、上記以外にも、普段はそんな素振りを見せないのに、突然EVILに豹変してしまう「突発性EVIL」というタイプも存在します。その突発性EVILを引き起こすトリガー(原因)は「プレッシャー」です。
仕事でトラブったり、期限が近づいていたり、上から物凄く圧力をかけられているなど、精神的に追い詰められている時に、突発性EVILは発現しやすくなります。
こういう時にEVILになりやすい人を事前に特定できていれば、そうならないように仕事を集中させ過ぎないようにするとか、声をかけてリラックスさせるなどできるが、残念ながら普段からそのEVILの傾向が出るわけではないので、見抜くのは難しい。
そこでヒントになるのが「陰と陽」の考え方です。
人間には誰にでも陰と陽があります。そして平時が陽で有事が陰だとすると、その人の陽が分かれば陰の姿も想像することができるということになります。その陰陽の構造をもとに立てた仮説パターンが下記の図です。
左側が「平時の仕事の姿勢や価値観の傾向」、右側が「有事に起こしうる問題行動」を表しています。元ネタは「The leadership circle」というアメリカの世界的コーチング会社がまとめたモデルで、非常に難解なものです。それを筆者がシンプルな構図へと要約したものが上記の図です。
左側の傾向は誰もがそれぞれの要素を持っており、人によって割合が異なります。それはその人の価値観が形成するプライオリティの問題です。そして、それが示すことは、人は誰しも必ずこの3つのうち、どれかのEVILに陥る可能性があるということです。
そのため、見極めるべきは「しきい値」の高低(どの程度のしきい値で突発性EVILを発現させるか)です。ただ、もちろん突発性EVILは読みきれないことは多々あります。だからといって自信を無くす必要はありません。
そもそも「人を見る目」は、不都合因子を排除したり、立ち向かったりするためのものでありません。事前にそうした可能性を察知して、「地雷」が埋まっているかもしれないと想定しておくためのものです。
そうすれば、かなりの確率で地雷を避けることができますし、万が一踏んでしまっても、慌てることも、相手に対して怒ることもなく、冷静に対応することができるでしょう。
まとめ
今回は『人を選ぶ技術』について書かせていただきましたがいかがでしたでしょうか?
今回は、面接での質問例や実践メソッドなど、本書に書かれている具体的なハウツーより、「人を見る目」の重要性やフレームワークを理解していただけるようまとめさせていただきましたが、私自身とても学びが多い本でした。
私は前職は人材エージェント、現職は人事という立場で仕事をさせていただいておりますが、全然人のことを見ることができていないなと反省しました。一方で、自分のやっている仕事の奥深さをより実感することができ、何度も学び直しながら「人を見る目」を鍛えていきたいと強く思いました。
最後に著者の言葉で印象に残ったフレーズを紹介させていただきます。
「人を選ぶとは、人を信じること」
「人を選ぶ」なんて一見おこがましく冷たい行為に見えますが、本質的には、人、組織、社会の全てをハッピーにするために必要な行為だと思います。このnoteが、少しでも多くの人にその価値が伝わる一助になれば幸いです。
ちなみに、私が最近ハマっているPIVOTというメディアでも本書が取り上げられており、著者がより深い内容を語られているので、ご興味ある方は是非ご覧ください!
今後も定期的に本の感想や日々の学びをシェアしていく予定ですので、もしよろしければ「スキ」と「フォロー」をしていただければ嬉しいです!!
よろしくお願いします!
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?