人を傷つけない仕事場 1 ラベルを貼らない
日本に帰国してから、「メイクさん辞めたの?」とか、「なぜメイクさんとして、もっとファッションの世界でお仕事をしていないの?」と聞いていただくことが多いです。いつもその場では誤魔化していますが、実は、確固たる理由があります。思い返せば、コロナが始まる数年前から、既にメイクさんというお仕事を続けることについて葛藤を抱いていました。勘違いしてほしくないのですが、メイク自体は表現方法として大好きです。メイクさんとしてお仕事することも好きなので、また頑張らせていただきたいなと思っています。
前述した葛藤。その中で私の心の比重を大きく占めているのが、「人を傷つけたくない」という思いです。要は、私は登校拒否しているのです。だけども、登校拒否ということを続けていても、現状も自分も何も変わらないなと思い、登校を初めたいなと(現場に復帰したいなと)決意しました。(もちろん必要としてもらえるかは別です)まず第一歩として、メイクをお仕事としてさせてもらうという事に対しての葛藤と、思い込んでいた事に対してしっかりと向き合おうと思ったのです。
今は少しずつ変わってきていますが、ファッションの世界は基本的に二分法が採用されています。ファッションに限らず、この社会はそういう仕組みであることが多いのですが、それが私には辛い。「こういう外見なら美しい(=良い)」「こういう格好をすればオシャレ(=良い)」「こういうメイクをすればモテる(=良い)」ということを発信することが怖くなってきたんです。「良い」とラベルを張られるもの(これも一概に良いのか?となると疑問です)があるということは、反対に「悪い」とラベルを張られるものもあるということになる。
そうすると、「こういう外見ならブサイクである(=悪い)」「こういう格好をすればダサい(=悪い)」「こういうメイクをするとモテない(=悪い)」ということが発生してしまう。それが、私には納得がいかないのです。
私は、一重まぶた(=悪い)で、派手な格好をしていて(=悪い)、モテるということを気にしないメイクをして(=悪い)生きています。今では、そんなラベルを無視して自信満々に街を闊歩できる私ですが、この二分法により、ブサイクで、ダサくて、モテないというラベルを貼られている自分として生きるのが辛かった時期がありました。良いと言われるラベルを貼るために、無理をした時期もありました。だからこそ、今、ラベルを貼る側となる現場に関わらせていただく際には、その時の私自身に、そして辛い思いをしている皆さまに対して、胸を張れるような作品を作りたいし、発信をしていきたいのです。
電車に乗ると、二重まぶた手術の広告が多すぎて泣きたくなってしまう。「一重=悪い」という方程式を私は払拭したい。二重が良いよね!という発信に加担したくないのです。一重でも二重でも、どちらでも素敵なのです。好きな格好をして、好きなメイクをして、好きに生きていく。それが、「特別」ではない世界にしたい。ラベルなんて貼らなくていい世界にしたいのです。いい子ちゃんぶった大それた考えかもしれないのですが、それが私の本心なのです。こんな世界を作るための紙面や、ブランドや、作品を作りたい方はぜひ、ご連絡ください。