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短編文学的エッセイ 【名産品の葛藤、イカめしの夜】

僕は久しぶりに夜ご飯にイカめしをいただいた。駅弁として売られているこの料理を、近くのコンビニが期間限定で取り扱っているのを見つけたのだ。
たまにその店舗では「駅弁祭」と称して、在庫処分を目的にさまざまな駅弁を売り出す。立ち寄った際、何か気になるものがあれば家に持ち帰る習慣がある。
今日選ばれたのがこのイカめしだ。

パッケージを開けると、製造会社も販売会社も北海道のものである。なるほど、名産品というわけだ。
しかし、原材料の欄を見ると、中国産のイカが使われているようだ。北海道の名産として売っているのであれば、やはり北海道のイカを使ってほしいと思う。
金額もそれなりにするし、「駅弁」というロマンを売るのであれば、そこはこだわってほしい。
とはいえ、現実問題として大量生産やコスト面から仕方のないことなのかもしれない。
また、できるだけ着色料や添加物の少ないものを選んだつもりだが、完全には避けられないのも現実だ。

イカめしの蓋を開け、一口かぶりついた。
食感はぶにっとしていて、口の中に広がる風味は甘めの醤油と絡んだイカの旨味、もち米の甘さだ。食べる前の疑念が少しずつ溶けていくようだった。
僕はそれをインスタントのアサリの味噌汁と一緒にいただく。不思議なことに、一口食べ始めると、これがなかなか美味しい。

「イカめし」という名前の響きも好きだ。
「めし」という言葉には温かさと懐かしさが感じられる。質素でありながら、心に染み入るような気がする。

イカの柔らかな弾力と、噛むたびに口内でじんわりと染み出す米の甘さを楽しみ、食べ終えた。食卓の片付けを済ませ、食後にはノンカフェインのコーヒーでも一杯飲んで落ち着こう。普段はカフェイン入りのコーヒーを好むが、18時以降はカフェインを摂らないことがこだわりだ。

こういう静かな夜には、薄明かりの中でノンカフェインのコーヒーがよく似合う。
夜の静けさに包まれながら、イカめしを食べた時間が心に残る。

※この作品はフィクションです。
※特定の個人・団体とは関係ありません。

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