毎日400字小説「落ち目」
「はいオッケーです」監督の声と同時に空気の緊張が解け、場が動き出す。おつかれさまですと声を張り上げるスタッフ、監督のもとに走り込むアシスタント、不安げな顔でカメラに目をやる主演女優(十五歳、彼女はこの作品がデビュー作だ)。
おれのもとに駆け込んできたのは勝男。四十七歳の付き人は、白いバスローブを広げ、手負いの兵士のようにおれの体をくるむ。いや、むしろ人目に晒すことのできない陰部か何かか。バスローブの下から覗くのはすね毛の生えた足。おれはAV男優か。力なくつっこむも、にやりと