マガジンのカバー画像

毎日400字小説

365
2023年10月24日~2024年10月23日 毎日1篇アップしました!
運営しているクリエイター

2023年12月の記事一覧

毎日400字小説「順番」

    畏まって背を伸ばし、二度お辞儀をしたのち、パンパンと柏手を打ってそっと目をつぶる。…

友直
1年前
1

毎日400字小説「兄弟」

 三人兄弟の真ん中は一番親の愛が薄いっていうけれど俺はまさにそれで、成績優秀だった姉は家…

友直
1年前

毎日400字小説「自転車」

 太陽の下に三秒いるだけで、じりじりと肌が焦がされている気がした。俯き気味に溜息を一つつ…

友直
1年前
2

毎日400字小説「過ち」

 考えて出した結論だった。本当は入学した私立中学で初めて会ったときから惹かれ合っていたの…

友直
1年前
1

毎日400字小説「言い訳」

「十歳の時かな。四つ下の妹が死んだんだ」  そんな話をいきなりし出した健を、あたしは信じ…

友直
1年前

毎日400字小説「冬」

 暖かい店の中から外を見ていた。大寒波がやって来たと、連日北海道の町がニュースに取り上げ…

友直
1年前
1

毎日400字小説「落ち目」

「はいオッケーです」監督の声と同時に空気の緊張が解け、場が動き出す。おつかれさまですと声を張り上げるスタッフ、監督のもとに走り込むアシスタント、不安げな顔でカメラに目をやる主演女優(十五歳、彼女はこの作品がデビュー作だ)。  おれのもとに駆け込んできたのは勝男。四十七歳の付き人は、白いバスローブを広げ、手負いの兵士のようにおれの体をくるむ。いや、むしろ人目に晒すことのできない陰部か何かか。バスローブの下から覗くのはすね毛の生えた足。おれはAV男優か。力なくつっこむも、にやりと

毎日400字小説「親友」

    たとえば新しく引っ越した部屋の乾燥が気になっているときに、「はい、誕生日プレゼント…

友直
1年前
2

毎日400字小説「運命」

 そのころ昭三は、朝晩、近所に住む祖父のところに食事を届ける役目を負っていた。体が大きく…

友直
1年前

毎日400字小説「クリスマス」

 玄関を飛び出し、エレベーターに乗り、エントランスを抜けて尚子は振り返った。追ってこない…

友直
1年前

毎日400字小説「母」

 物心ついたときから施設にいたので家族との生活がどういうものかわからなかった。母親という…

友直
1年前
2

毎日400字小説「猟奇事件」

 シマの首が切られ、公園のベンチに置かれていたのは三日前のことだった。黄色いテープが張ら…

友直
1年前

毎日400字小説「欲望」

 規則正しく吹く強い風のように鳴っていた呼吸音が、引き込まれるように止まった。心電図モニ…

友直
1年前

毎日400字小説「リレー」

 左手で受け取ったバトンを右手に持ち替え、握りしめる。腕を振る。力強く地面を蹴って、前へ進む。風が流れる。景色が後ろに消える。前方には、二組女子の背中が見えている。  スタートで失敗して最下位になったものの、前走者の酒井が二人抜き、二位にまで上がっていた。あと一人。クラスメイト達の期待が、真夏の太陽みたいに全身に突き刺さっているのを、明子は感じる。一歩。一歩。明子は歯を食いしばり、前の背中を追う。足の裏が地面を踏みしめるごとに、背中が大きくなる。  カーブに差し掛かり、前の足